仲村トオル:冤罪事件に揺れるジャーナリスト演じる ドラマW「推定有罪」

社会派ドラマ「推定有罪」にかけた思いを明かす仲村トオルさん
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社会派ドラマ「推定有罪」にかけた思いを明かす仲村トオルさん

 冤罪事件を巡って、その当事者や遺族、警察など事件に関わったさまざまな立場の人々の目線で描く社会派ドラマ「推定有罪」が25日からWOWOWの「連続ドラマW」枠で放送される。無実の人を犯人に仕立ててしまったジャーナリストを演じた主演の仲村トオルさんは、「今思うとそんなに悪い感触ではなかったですけど、手応えみたいな、これが正解なんじゃないかというものをつかんだ感がないまま、ずっとやっていた感じ」と撮影を振り返る。これまでさまざまな役を演じてきたが、今回の“感覚”は「そんなにしょっちゅうないし、どちらかというと珍しいこと」と明かした仲村さんに、ドラマにかけた思いや共演者とのエピソードを聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 「推定有罪」は、12年前に起きた幼児殺害事件で、無実の人を犯人に仕立て上げてしまったジャーナリスト・加山清治(仲村さん)が主人公。戦場を取材していた加山の元に12年前に起きた幼児殺害事件の犯人として服役していた篠塚(國村隼さん)が、実は冤罪だったという一報が入る。当時、加山は篠塚が犯人だという記事を書き続けていたが、12年の時をへて誤っていたことが立証されてしまった。篠塚の弁護人・石原(黒木瞳さん)は会見を開き、警察のずさんな捜査を非難。篠塚は失われた12年の苦しみを訴える……というストーリー。

 仲村さんは、自身が演じた加山という人物について、「自分が書いたモノに対して過大評価しているんじゃないか、この男は……ということを、現場でも監督に繰り返し言った」と振り返る。「自分は間違いないと思い込んで書いた結果、警察が動いた、世の中が動いた。それをすごく自分にとっては勲章のように思って過ごしている」と分析し、「気持ち悪いな、こいつと思ったりしていた」と語る。

 一方で、「僕にしてみると、それがこの人(加山)の12年前のよくないところであり、演じるときにはちょっと面白いなと思うところであったりする」と役者としての本音もチラリ。これまで、数々の現場でさまざまな役を演じてきたが、「撮影が進んでいく間にずっと残った感覚でしたけど、自分の確信みたいなものというか、ねらいを定めてというのがなかなか見えにくい話ではあった」とテーマの難しさを実感したようだ。

 今回と同じ「連続ドラマW」枠で放送された「空飛ぶタイヤ」(09年)にも出演した仲村さんは、「(『空飛ぶタイヤ』と)監督も同じだったので、現場では(鈴木浩介)監督とこんなに話はしなかったっていうぐらい1カット1カット話をしながらやっていた」と明かす。「20代のときは、監督に対して『俺は操り人形じゃねえよ』みたいなことを思っていたころはあった。でも今は『この操り人形はよく動くなあ』って思われたい」と自身の中での変化も告白。

 クランクインの日、國村さんとはたばこを吸いながら2人で立ち話。そこで、“松田優作さんから聞いた話”を聞いたという。「『真ん中にいる人はなにもやらない方がいいよ』って優作さん言うてたなあって。今回のドラマで俺は真ん中の方にいる人物の1人だとは思うんですけど、何もしないって難しいなあって思いながら聞いていたり」と役者としての自身の立ち位置について思いをはせる。

 仲村さんといえば、大学在学中の85年に映画「ビー・バップ・ハイスクール」で不良高校生・中間徹でデビュー。その後もテレビドラマ「あぶない刑事」シリーズの刑事・町田透をはじめ、数々の役を演じてきた。最近では「チーム・バチスタ」シリーズの厚生労働省官僚・白鳥圭輔など、仲村さんが演じることでより魅力的となったキャラクターたちが数多く存在する。

 そんな仲村さんは「最近よく思うこと」と前置きした上で、「監督、プロデューサーが脚本家にレシピを書かせて、『今回こういう料理を作るからタイを釣ってこい』と言われたら、(仲村さんは)タイを釣りに行く漁師というか素材提供者でありたい」と話す。「『お前が釣ってくるタイはいつもいいタイだなあ』とか、たまには鹿を持って行くとか。いつもオーダーされた素材をなるべくいい状態でもっていく人でありたい」と力を込めた。

 連続ドラマW「推定有罪」は、WOWOWプライムで25日から毎週日曜午後10時に放送。全5話。第1話は無料放送。

 <プロフィル>

 1965年、東京都生まれ。85年、映画「ビー・バップ・ハイスクール」でデビュー。日本アカデミー賞をはじめとする数々の新人賞を受賞した。国内外を問わず、数多くの映画、ドラマに出演。韓国映画「ロスト・メモリーズ」(02年)では韓国の第39回大鐘賞映画祭最優秀男優助演賞を外国人として初めて受賞。舞台「偶然の音楽」(05、08年)、「奇ッ怪~小泉八雲から聞いた話」(09年)、ドラマ「空飛ぶタイヤ」(09年、WOWOW、09年度民放連ドラマ部門最優秀作品賞、ATP賞グランプリほか)、映画「接吻」(08年、第23回高崎映画祭主演男優賞)、「K-20 怪人二十面相・伝」(08年)、「劒岳 点の記」(09年)、「僕の初恋をキミに捧ぐ」(09年)ほかに出演。昨年7月にはドラマ「チーム・バチスタ3~アリアドネの弾丸」(フジテレビ系)に出演した。

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