テレビ質問状:ノンフィクションW「リーガ・エスパニョーラへ道場破り」日本人が名門クラブを経営

サバデルのホームスタジアム「ノバ・クレウ・アルタ」で語る高橋尚輔さん
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サバデルのホームスタジアム「ノバ・クレウ・アルタ」で語る高橋尚輔さん

 WOWOWは、毎週金曜午後10時に「ノンフィクションW」枠を設け、オリジナルのドキュメンタリー番組を放送中だ。この枠では、見る人を新しい世界へと誘うフルハイビジョンの“ノンフィクションエンターテインメント”番組をWOWOWプライムで毎週、テーマを変えて放送している。7月12日に放送される「リーガ・エスパニョーラへ道場破り ニッポン人 名門クラブ経営の舞台裏」を担当したWOWOWのスポーツ部の小林慶吾部長に番組の魅力を聞いた。

ウナギノボリ

 −−今回のテーマを取り上げたきっかけと理由は?

 いわずと知れたWOWOWの看板スポーツ番組「リーガ・エスパニョーラ」。最近では、70億円以上もの金額が動いたとされるブラジル代表ネイマールの移籍などで大きな話題になりました。

 そのリーグの中でたった一つ、日本人がオーナーを務めるチームがあります。それが、現在2部リーグに属する「サバデル」。実に100年以上の歴史を誇るこの由緒正しき市民球団の経営陣に、その日本人オーナーからの指名を受けて抜てきされ投入されたのが、今回、密着取材をした37歳の高橋尚輔(たかはし・なおすけ)さん。現在WOWOWで独占放送している世界最高峰のサッカーリーグに、なんと日本人の経営者が乗り込むという話を聞き、そして実際に尚輔さんと会い、その人柄に触れて「これはちょっと面白くなりそうだ」と感じたのが番組企画立案のきっかけです。

 −−制作中、一番に心掛けたことは?

 番組のプロデューサーという立場で一番留意したのは、制作中よりも取材を開始する前段階のことです。

 球団経営……。それが球団であるないにかかわらず、およそ「経営」というものには、ある種、企業秘密・機密事項が常について回るものですが、今回は「番組中に使う使わない、使える使えないにかかわらず、取材期間中の尚輔さんの動きや発言についてはすべてを撮影させてほしい」ということで、ご本人からも球団からも了承をいただき、取材に臨みました。実際この番組には、例えば選手の移籍に関する部分の映像素材も使用していますし、普段はなかなか撮影できないようなチーム運営の舞台裏を撮影した素材も含まれています。

 「ここからは経営的な機密事項だから」と撮影現場でカメラがシャットアウトされるような状況では、取材対象である尚輔さんの人柄や、彼がどんな思いで球団経営に臨んでいるのかを番組で表現するのは難しいと考え、事前の打ち合わせや交渉でその部分をクリアにすることは、ある意味、今回番組で取材を開始するにあたってのマスト(必須)なポイントでした。

 そういった前段の合意や約束事をしっかりと行って、実際に取材・撮影にあたるディレクターさんに現場でご自身の人間力や取材力を精いっぱい発揮していただけるような状況作りには留意をしました。それはドキュメンタリー番組のプロデュースワークおいては極めて基礎的なポイントの一つなのですが、今回は、その取材対象、ほんのちょっとしたことでも世界的に配信されるニュースになってしまうような繊細かつ微妙な団体や立場の方でしたので。

 −−番組を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったエピソードは?

 事前に約束した上記の内容通り、尚輔さんご本人やチーム側の「取材を受ける姿勢やスタンス」が、極めて「開いた」ものであったことは大変にうれしく感じました。もちろん今回、取材演出をお願いしたディレクターさんが人間的にも手腕的にもフィットしたということも大きかったのですが、期間中、チーム側が「開いた姿勢」であり続けてくれたことには、感謝したいと思います。

 余談ですが、ちょっと驚いたことは、この番組を企画・制作している期間中に、自分自身に人事異動があり所属が制作部からスポーツ部に異動になったこと。最近いくつかスポーツ関連のドキュメンタリー番組の企画担当が続いていたのですが、「スポーツコンテンツの企画にご縁があるにしても、まさか自身の所属部署まで変わるとは」と、正直驚きました。

 −−番組の見どころを教えてください。

 尚輔さんの朴訥(ぼくとつ)とした人柄と素直な行動力、そしてサッカーを、また日本を愛するまっすぐな姿勢と夢。異国の地、それも憧れである世界最高峰のサッカーリーグと評されるスペインでの彼の奮闘は、サッカーを好きであるないにかかわらず、きっと心を打つ部分があるのではないかと思います。

 −−視聴者へ一言お願いします。

 上記に全部記しました。付記するとすれば……恐らくこれは私の立場や権限で申し上げることではないのですが、世界に打って出たいと考えている日本人サッカー選手の方は、プロアマ問わず、ぜひ、サバデルの門をたたいてみては、と思います。

 番組内で尚輔さんが話していることはまぎれもなく彼の本心ですし、それが「彼が今、サバデルの経営者である意味」なのだと思います。

 現在、世界最高峰と評されるスペインのサッカーリーグ「リーガ・エスパニョーラ」は「日本人サッカー選手にとって遠い憧れの地」ではなく、尚輔さんがいることによって、ぐっと近くになった「日本人サッカー選手が世界で活躍できる可能性を色濃く秘めたステージ」なのではないかと思います。

 WOWOW スポーツ部 部長 小林慶吾

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