花燃ゆ:杉家の旧宅を“再現” 文のイメージ「太陽の光」取り入れる工夫も

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 女優の井上真央さんが幕末の長州藩士で思想家の吉田松陰の妹・杉文(ふみ)役で主演するNHK大河ドラマ「花燃ゆ」(NHK総合で日曜午後8時)の文の自宅セットが公開された。父母、兄弟、叔父叔母、祖母が集まる家族団らんの舞台であり、文を育んだ原点でもある杉家のセットについて、美術チーフの岡島太郎ディレクターは「太陽がサンサンと降り注ぐ明るい家がコンセプト。光があふれて、これから外に巣立っていく若者たちの力の源を表現したいと思った」という。そのこだわりを聞いた。

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 ドラマは、激動の幕末を力強く生き抜いた文の姿を、明治維新で活躍した志士たちの青春群像とともに描く。文と松陰を取り巻く家族たちとのホームドラマ的な要素も見どころの一つだ。

 ◇現存する旧宅を基に半年かけて制作

 杉家のセットの制作期間は約半年。山口県萩市に現存する杉家の旧宅を参考にしつつも、「そのまま再現するというのではなく、なかで暮らす人物たちがどのように生活しているかということをメインに考えて作りました」と岡島ディレクターは解説する。

 実際、現存する杉家の敷地にはドラマに登場する離れや畑はない。「ドラマでは離れに松陰が住んでいる設定ですが、昔の古地図を見たら離れのような空間が残っていたことに着想を得ました。畑は、杉家がそんなにお金のある家ではなかったので、土があれば自然と畑にしただろう」とイメージをふくらませ、「家への出入り口も多く設けました。いろいろな人たちが集まった開放的な雰囲気を出した」と演出も加えた。

 また、実際よりも出入り口や窓を大きくとり、室内にも隣の部屋が透けて見える欄間を取り入れるなど、開放的で家の中に光がたくさん入る工夫を施している。光あふれるセットには「誰がそこにいても一つのステージに見せたい」という思いと、「杉文のイメージも太陽の光。あまねく周りの人たちに光を注ぐ存在であってほしい」という意図も込められているという。さらに、文が居住する子供部屋として設けられた天井裏のスペースも「文があまねく人たちを見ている中心」として重要な場所に位置づけられており、四方が見渡せる作りになっている。

 ◇手形の掛け軸で一体感表現 幕末の“新旧”を表す木々も

 一見何気なく配されている小道具にも、こだわりの演出がちりばめられている。勉強家の杉家を象徴するように、畑には譜面台のような「本読み台」が設置され、障子には文字を書き込んだ古紙が使用されている。「杉家の人は本を読んだり、文字を書いたり欠かさずしていたと思う。『本は人なり』というせりふも出てくるが、勉強と畑仕事も一緒だったはず。当時は高価だった紙があれば勉強にまわしていたと思う」と岡島ディレクターは語る。

 杉家の絆の強さも随所に表現されており、家族の語らいの場として出入り口近くに囲炉裏(いろり)を設置。「現存する杉家には残っていないのですが、天井にすすけた形跡があったので、囲炉裏があったのではないかと推測して作りました」という。また、部屋の奥の掛け軸には兄弟の手形が黒と朱の墨で押されており、ここでも一家の一体感を感じることができる。

 庭に植えられた木々には、今回のドラマの大きなテーマを体現したという。枯れ木と緑が生い茂る木が同居しており、「古いもの」と「新しい息吹」に、江戸から明治に移り変わる幕末の世を映し出した。「新しいものは古いものの上に成り立つ」という考えも反映しているという。文の成長物語と共に、それを彩るセットにも注目だ。

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