映画「ポケットモンスター」シリーズの湯山邦彦さんと、テレビアニメ「パックワールド」の榊原幹典さんが共同で監督を務めた劇場版3DCGアニメ「ルドルフとイッパイアッテナ」が、6日に公開される。女優の井上真央さんと俳優の鈴木亮平さんがルドルフとイッパイアッテナの声を担当し、2人とは気付かないほどの熱演を“聞かせて”いる。91年にNHKで放送された母と子のテレビ絵本「ルドルフとイッパイアッテナ」でナレーションと猫の声すべてを一人で演じたタレントの毒蝮三太夫さんが、今作で“ゲスト出演”しているのも“聞き逃せ”ない。
ウナギノボリ
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原作は、1987年の刊行以来、シリーズ累計100万部を超える斉藤洋さんの児童小説。原作の杉浦範茂さんによるルドルフの絵は、失礼ながら目つきが鋭く、可愛いとは言い難い。それが今作では、つぶらな瞳のキュートな猫に変身し、愛嬌(あいきょう)と威厳を併せ持つノラ猫のボス、イッパイアッテナとの友情を育みながら大冒険を繰り広げる。
岐阜で暮らす猫のルドルフ(声・井上さん)は、飼い主のリエちゃんが大好き。今日もおばあちゃんの家に行くリエちゃんに同行しようと家を出るが、ちょっとした間違いから長距離トラックに乗ってしまう。気付くとそこは東京。見たことのない景色にぼう然とするルドルフ。そんな彼を助けたのが、人間の文字が理解できるしま模様のボス猫、イッパイアッテナ(声・鈴木さん)だった。イッパイアッテナと寝食を共にするうちにノラ猫として成長していくルドルフ。しかし、彼の心にはいつもリエちゃんの元に帰りたいという思いがあった……というストーリー。
製作陣がこだわったというだけあり、ルドルフをはじめとする猫たちの、ふわふわ、ぽやぽやした毛並みや動きの滑らかさに、改めて、コンピューターグラフィックス(CG)の威力を感じた。猫目線を意識した低い位置からの映像が、普段の生活では味わえないスリル感を追体験させ、さらに、日本の美しい四季折々の風景が、ルドルフのノラ猫生活が長期に及んでいることを物語り、リエちゃんの元に早く返してあげたいという思いが募った。そういった映像面からもたらされる感慨の一方で、イッパイアッテナがルドルフを、「やみくもに帰ろうとするのは教養のないやつがすることだ」とたしなめたり、「絶望は愚か者の答えだ」と叱ったりするなど、児童小説が原作とはいえ、大人でもはっとさせられる言葉に出合うことができる。
ノラ猫というと、とかく貧相で可哀そうなイメージがあるが、ルドルフたちを見て、彼らも彼らなりに悠々と生きているんだなあと、ちょっと心が軽くなった。6日からTOHOシネマズ日本橋(東京都中央区)ほか全国で公開。(りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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