上坂すみれ:「うる星やつら」新作テレビアニメ ラム役の転機 “あたる”神谷浩史に「勇気づけられた」

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 高橋留美子さんの人気マンガ「うる星やつら」の完全新作テレビアニメの第2期が、1月11日からフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」ほかで放送される。新作は、同作を刊行する小学館の創業100周年を記念して、約36年ぶりにテレビアニメ化され、第1期が2022年10月~2023年3月に放送された。説明不要の人気キャラクターのラムを演じるのが人気声優の上坂すみれさんだ。上坂さんは第1期の放送前、大役にプレッシャーを感じつつも「思い切り楽しもう!」と収録に臨んでいることを明かしていた。第1期の放送を経て、上坂さんは何を思うのか。第2期の放送を前に、上坂さんに「うる星やつら」、ラムへの思いを聞いた。

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 ◇私なのかな?という不安も

 「うる星やつら」は、「めぞん一刻」や「らんま1/2」「犬夜叉」などでも知られる高橋さんの代表作の一つ。高橋さんは、1978年に「勝手なやつら」でデビューし、「うる星やつら」は1978~87年に「週刊少年サンデー」(小学館)で連載された。趣味はガールハントの高校生・諸星あたると、地球に来た鬼族の娘・ラムの日常が描かれた。新作テレビアニメは、原作のエピソードを選び抜き、全4クールでテレビアニメ化し、神谷浩史さんが主人公・諸星あたるを演じるほか、しのぶ役の内田真礼さん、面堂終太郎役の宮野真守さんら豪華声優が出演している。

 “昭和版”のテレビアニメが放送されたのは1981~86年で、上坂さんが生まれる前だ。上坂さんは、高校生の時にCSで再放送されているのを見て、「うる星やつら」ワールドにハマった。

 「うる星やつら」は、時代を超えた普遍的な魅力のある作品だ。「第2期に登場する(潮渡)渚さんは元祖男の娘ですし、普遍的な魅力、この作品の発明がたくさんあります。ハチャメチャなエピソードも胸キュンなエピソードもあって、とにかく作品のパワーを改めて感じています」と話す。

 作品への愛があるからこそ、葛藤もあった。上坂さんが、第1期で特に印象的だったのが第5話「愛と闘魂のグローブ/君待てども…」の「君待てども…」だという。同エピソードの収録をきっかけに「思い切り楽しもう!」と心から思えるようになった。

 「先輩が多く、皆さんの熱量が高い現場で、収録するまで、私なのかな?という気持ちがありました。緊張していると声に伝わってしまうので、楽しもう!と思い込もうとしていました。恐る恐るやっていたところもあったのですが、神谷さんが座長として周りを引っ張ってくださっていて、神谷さんのおかげでラムができてきたんです。第5話で、ラムをどう演じるかが、分かってきたところもありました。みんなが大好きなエピソードで、演じていて印象的でしたし、第5話ができたってことは、きっと大丈夫なんじゃないかな……とある種の転機になったと思います」

 第1話が放送されると、当時のファンだけではない幅広い年齢層の心もつかんだ。第1話放送後の反響も上坂さんを勇気づけた。

 「ラムちゃんは最初、押しかけヒロイン、謎の宇宙人として登場しますし、第1話では少し怖めに見えるかもしれません。ラムちゃんは最初からダーリンが大好きだと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、最初は違ったことも丁寧に描いています。受け入れてもらえるのかな?とも思っていたのですが、画(え)や音の力も大きく、初めて見る方にも『うる星やつら』の魅力が伝わり、新しいラムちゃんを受け入れていただけたことが、すごくうれしかったです。放送前は不安もありましたが、演じていいんだ!という気持ちになりました。第1話の放送、第5話の収録が、自分の中にラムちゃんがきてくれた瞬間だったと思います」

 ◇古川登志夫、平野文の偉大さ

 あたる役の神谷さんの存在も大きかった。神谷さんは“座長”として上坂さんらキャストを引っ張っているという。

 「神谷さんは、るーみっくわーるどへの愛がすごいんです。先輩が一番貪欲で、楽しく、もっとあたるになりたい!という思いを全身で表現されていて、私も勇気づけられました。神谷さんはあえて、そんなふうに振る舞ってくださっているのかもしれませんが、嘘偽りない愛を感じるので、神谷さんがいれば絶対大丈夫!となるんです。それまで、ストイックなイメージがあったのですが、『うる星やつら』で印象が変わりました。いつか、こんな先輩になれたらいいなと思っていますし、座長として本当に頼もしく、とても尊敬しています」

 “昭和版”のあたる役の古川登志夫さんがあたるの父、ラム役の平野文さんがラムの母を演じていることも話題になっている。平野さんは、上坂さんに「安心ですし、楽しみです」と太鼓判を押した。

 「平野さんがラムの母を演じられていて、こんな素晴らしいバトンのつなぎ方があるんだな……とすごくうれしいです。何十年も演じたキャラクターを誰かが受け継ぐことは、なかなかないことですし、背中を押していただけたことがうれしく、平野さん、古川さんの偉大さを改めて感じました。平野さんのラムちゃんで、私も育ってきたので、オーディションの時は『これまでのラムちゃんはあまり意識しないでやってください』と言っていただきましたが、染みついているものなので意識しないわけにはいかないんです。皆さんのDNAに刻まれているラムちゃんは共通のものがありますし、そこを表現しようとしています」

 “昭和版”でメガネなどを演じた千葉繁さんが藤波竜之介の父を演じている。千葉さんとの共演にも刺激を受けている。

 「あたる、面堂が一番のトップスピードのはずなんですけど、竜之介の親子回になると、おとなしく見える(笑い)。千葉さんは骨に響く声なんです。テレビで見ていてもすごい声ですが、生はもっとすごくて。千葉さんはマイク前に立たない時は、ジェントルな方で、台本を持った瞬間に覚醒するんです。千葉さんも貪欲で、テストでも最大のボリュームですし、アドリブもすごくて、一回として同じお芝居をしていません。千葉さんイズムみたいなものを目の当たりにして、感動しました」

 コロナ禍は分散収録になることもあったが、第2期の収録では緩和されたこともあり、多くのキャストと掛け合いができているという。

 「『うる星やつら』は、会話が面白い作品なので、掛け合いができることがうれしいです。第2期は、あたるもラムも魅力を増していますし、時々登場する了子さん、おユキさん、弁天さん、ランちゃんたちも魅力的で、次は誰が出るのかな?とワクワクしています。竜之介親子も本当に生き生きしています。毎話、さらに楽しくなっています!」

 プッシャーはあるはず。ただ、上坂さんの言葉から、心から収録を楽しんでいることが伝わってくる。第2期も新たな「うる星やつら」の魅力を堪能してほしい。

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