ラノベ質問状:「ヴィクトリアン・ローズ・テーラー」 話題の英国調ロマン完結へ

9月30日に発売された最新巻「ヴィクトリアン・ローズ・テーラー 恋のドレスと花ひらく淑女」の表紙
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9月30日に発売された最新巻「ヴィクトリアン・ローズ・テーラー 恋のドレスと花ひらく淑女」の表紙

 話題のライトノベルの魅力を担当編集者が語る「ラノベ質問状」。今回は、19世紀の英国を舞台に、恋をかなえるというドレスを仕立てる主人公と若き貴族の身分違いの恋やドラマを丁寧に描いた「ヴィクトリアン・ローズ・テーラー」シリーズ(青木祐子著、あき画)です。集英社の雑誌&文庫コバルト編集長・清宮徹さんに作品の魅力を聞きました。

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 −−この作品の魅力は?

 ビクトリア朝華やかなイギリス全盛時代を背景に、若き公爵家の御曹司・シャーロックと労働者階級の仕立屋・クリスの身分差を越えた運命的な恋を描いたヒストリカル・ロマンです。近代化と共に身分制度社会が崩壊していく中で、圧倒的な障害を乗り越えて不器用ながらも着実に愛を育てていく2人の姿に、感動必至です。着ると恋がかなうといわれる「恋のドレス」を仕立てることができるクリスですが、対照的に心の闇を映し出す「闇のドレス」を仕立てる母親リンダとその一味との対決も見どころです! また、イラストのあきさんが描く、華やかできらびやかで、クラシックなドレスたちも、必見です!

 −−作品が生まれたきっかけは?

 02年にコバルト・ノベル大賞を受賞してデビューした青木祐子さんですが、当初は王道的なファンタジー作品を書いていました。その方向性にやや行き詰まりを感じた時に当時の担当者と打ち合わせをし、「イギリスの華やかな時代を書きたい」「働く女の子を書いてみたい」などの方向性を確認した中で、ストーリーが生まれました。ヒストリカル・ロマンということで、それまでの作品以上に取材・資料検証などに時間をかけ、書き上げた作品です。

 −−作家とイラストレーターはどんな方ですか?

 作家の青木さんは、社会人として働いていた経験が長く、少女小説に限らず幅広い分野に興味を持っている方です。イラストのあきさんは、当時はまだ今ほどメジャーで活躍されていませんでしたが、独特の空気感のような雰囲気を非常にうまく描けること、貴族的な美しさを持った男子を描ける方なのでお願いしました。予想通り、「ヴィクトリアン・ローズ・テーラー」と作品世界がピッタリで、相乗効果で予想を超えるヒット作になりました。

 −−編集者として興奮すること、大変なことはありますか?

 「ヴィクトリアン・ローズ・テーラー」は、ときめく恋愛ロマンであると同時に、ドレスは人の心を映す鏡であるというテーマがあって、人間の二面性、すなわち人の心の中に明と暗の両面があって、ドレスによってそれが表に引き出されるというドラマにもなっています。こちらは、嫉妬や野望がからんだシリアスなサスペンス調の展開になっていて、担当として読んで最も興奮するところです。逆に、このテーマは人間の心奥に潜むナイーブな問題なので、難解になったり、陰鬱な展開になったりします。あくまでエンターテインメントなので、読者に楽しんでもらいながら読んでもらうストーリーに仕上げるのが苦心するところです。

 −−今後の展開など、読者へ一言お願いします。

 いよいよ本編はあと1冊で完結です! 5年間にわたった連載もついに結末を迎えます。ただ今、シャーロックとクリス、パメラとイアン&アントニー、あるいはさまざまな他の登場人物に、恋の結末や人生の節目が訪れる展開になっています。主要登場人物にはひとりひとり全て、背景も含めて綿密なドラマがあります。そのたくさんのドラマの、それぞれのフィナーレを、堪能してください! もちろんラスト1冊まで、予想外の劇的な展開があるはずです。担当としては、愛すべき登場人物たち全てにハッピーな行く末が用意されているのを、祈るのみです! みなさん、まだ読んでない方は、今からでも遅くありません! 「ヴィクトリアン・ローズ・テーラー」を1巻目から読んで、手に汗を握ってください。ちなみに、クリスとシャーロックのカップルのエピソードに絞った今までの2人のロマンスが手っ取り早くわかるシリーズ中の10冊をえり抜いて、Webコバルトで特集しています。よかったらそちらもぜひご覧ください。

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