04年に単発番組として放送され、06年にはレギュラー化されたNHKのコント番組「サラリーマンNEO」。芸達者の俳優たちが独特のキャラクターになりきり、ゆるめのコントを次々と繰り出していくその番組は、狙い通り仕事で疲れたサラリーマンの心を射止めた。07年と08年には国際エミー賞コメディー部門でまさかのノミネート。今年5~9月の放送は「シーズン6」に達した。その“伝説”の番組が映画化され、全国で公開中だ。いまや番組の顔ともいえる生瀬勝久さんを筆頭に、沢村一樹さんらレギュラー陣が総出演。そこにからむのが小池徹平さんだ。09年の映画「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」や、NHKドラマ「鉄の骨」など、サラリーマン役には慣れつつある小池さんだが、すでに世界観が出来上がっている「サラリーマンNEO」では新参者。撮影現場には「ファンとして入った」と話す小池さんに、今作に対する意気込みや裏話を聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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小池さんが「サラリーマンNEO」のファンになったのは最近だという。存在は知っていたが番組を見ていなかったため、台本を手にしたときは、ファンにはおなじみの「欧愛留夜叉」や「おっちょこちょい作戦」が「全然分からなかった」。だが、「やらせていただく以上は全部知っておきたい」と「シーズン5」までリリースされているDVDを2週間かけて制覇するという「NEO漬けの日々」を送った。そして改めて台本を読み直し、「なんだ、この面白さは!」と衝撃を受けたという。
映画はテレビ番組のようなオムニバスではなく、きちんとしたストーリーがある。その中で小池さんが演じる新城誠は、NEOビールという業界5位のビール会社の営業1課に配属になった新入社員。その上司である中西課長を生瀬さん、先輩社員の川上を沢村さんが演じている。小池さんは、いわば、「物語とコントを結ぶ、ブレちゃいけない話の軸になる主人公」という存在。気持ちの上では、「周囲の人々に振り回されはしますけど、自分はそれに乗っかり過ぎないように、話の流れを考えながらお芝居をしていくよう」心掛けたという。
オリジナルメンバーに交じって、新たなキャラクターを演じることについては「僕は受け身の側なので、リラックスしてお芝居はできました」と、とりたてて苦労はしなかったようだが、思わぬところに“落とし穴”はあった。それは、演技をしながら笑いをこらえなければならないことだ。噴き出しそうになったことは何度かあったそうだが、最も「ヤバかった」のは会議室の場面。新城たちは、業界1位の大黒ビールを打ち負かそうとチームを組み、新商品の開発に乗り出すのだが、そのときの会議で、沢村さん演じる川上が“あるもの”を持参し、カメラに映っていないにもかかわらず、それをずっと触っていたという。「僕がせりふをしゃべっているときも横目で見えるからすごく嫌なんですよ。(沢村さん演じる)川上くん、芝居なんですけどふざけているんです」と苦笑し、当時の苦労を振り返った。
新城というキャラクターについて「口だけは一人前のことをいっていますが、中身が伴っていない」「若気の至りで突っ走っている」と分析し、そのつもりで役作りした。小池さん自身は「いい仕事をするために、自分の経験をコツコツと蓄えていくほう」だから、新城とは隔たりを感じつつ、「でも、気持ちは分かる」と理解を示す。
本人いわく、「僕は体育系の人間」で、昭和をにおわせる言葉が好きだという。「努力とか、根性とか、負けず嫌いとか。だから、頑張らなくなったら終わりだと思っています」。その頑張りが今作にも生きた。初めてのコントにも果敢にチャレンジした。「コントっぽい大きな振りをつけたりとか、後半にアドリブを入れてみたりとか。普段できないことなので、その意味では、演技に対する集中の仕方がこれまでとはちょっと違いました。コントの部分では、アンテナを逆に張っていたかもしれないですね」と自分の演技を分析している。そんな、アンテナの張り方がいつもとは逆の小池さんの演技は「サラリーマンNEO 劇場版(笑)」で確認してほしい。
<プロフィル>
1986年生まれ、大阪府出身。01年「JUNONスーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを獲得。05年、ウェンツ瑛士さんとインディーズ活動をへて音楽ユニット「WaT」としてメジャーデビュー。音楽活動以外に、02年に「天体観測」で俳優デビューし、「WATER BOYS2」(04年)、「ごくせん」(05年)、「医龍」(06年)などの話題作に出演。映画では「ラブ★コン」(06年)、「ホームレス中学生」(08年)、「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」(09年)などの主演作がある。
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