黒川文雄のサブカル黙示録:12年は新しいサイクルの始まり

 明けましておめでとうございます。12年もよろしくお願いします。

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 11年は世界中でさまざまな出来事が起こりました。自然災害、ギリシャの財政破綻、エジプトやリビアの政権崩壊……。ここ10年間でこれだけの出来事が起こった年もなかったと思います。おそらく、歴史の中で、振り返るべき年度として人々の記憶に残ることでしょう。日本人にとっては「3・11」の震災は「あの日、あの時、君はどこで何をしていたか」という象徴的なものとなりました。犠牲者の皆様のご冥福と、一日も早い復興を祈念してやみません。

 年頭コラムになりますので、前回のコラムでも予告した通り12年の展望を記してみたいと思いますが、私は11年を起点にして、12年からは大きく変わると予測しています。さて話は変わりますが「人類滅亡説」の中でもタイムリーなものに古代マヤ文明で「2012年12月21日に『新しい太陽の時代』が始まる」という記述があり、「現在の文明社会が滅びる」といううわさがあります。これを「滅亡」ではなく、「新しいサイクル(循環年度)の始まり」と考えると話が合いますね。

 そんな話はさておき、エンタメに関しても「新しいサイクル」が始まりそうです。サイクルは「循環」と言っても、これまでとは違う「新しい循環」というべきでしょう。家庭用ゲーム機では、ソニーの携帯ゲーム機「PSVita」が発売になりました。現時点での訴求力は未知数ですが、従来型のパッケージ販売を取り込みながらインターネットを介したコンテンツの配信がさらに進み、ネットを使ったゲームやアプリの遊びもさらに深化し、ソフトバリューを含めて変革の年になることでしょう。また任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」でも、追加コンテンツの販売を始めると発表しており、コンテンツの在り方が変わってきます。ダウンロードに慣れるユーザーが増えれば、流通に影響を与えることは間違いなく、大きな転換期となりそうです。

 映画、DVD、ブルーレイなどの映像カテゴリーに関しても同様です。映画館数が減少の傾向となり、ハリウッド映画でも100億円規模の興行収入を記録するタイトルが大幅に減少しました。オンデマンド配信を手掛けるタイトルも着実に増えており、手間のかからない方向にシフトしています。音楽は、携帯電話や米アップルの iTunesの影響もあってか、ダウンロード販売が主流になりつつあります。

 11年に気を吐いたソーシャル系コンテンツはどうでしょうか? 個人的には12年の前半がピークと考えています。同じような課金システムを使ったカード系ゲームの手法がビジネスとして成果を上げていることは否定しませんが、ユーザーがどこまで付いてくるかでしょう。そもそもデジタルデータのアイテムをネットオークションなどで数十万円で落札するという状況が続くとはちょっと考えにくいと思います。

 では、何が残る?……の答えですが、個人的には原始的な人間の五感に訴えるような遊びではないかと思います。年末に体験したeスポーツグラウンド(http://esportsground.com/)はなかなか興味深いもので、マイクロソフトの家庭用ゲーム機「Xbox360」の体感ゲームに変える周辺機器「キネクト」は、日本でこそ今一つですが、世界的に大ヒットしています。「デジタルとフィジカル」の融合という予想が当たるか? みなさんのお考えはいかがでしょうか。

 12年もよろしくお願いいたします。

 ◇著者プロフィル

 くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』」(http://blog.livedoor.jp/kurokawa_fumio/)も更新中。

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