安藤サクラ:10年後は「今の自分では想像できないような女性になっていたい」 映画「追憶」出演

映画「追憶」に出演した安藤サクラさん
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映画「追憶」に出演した安藤サクラさん

 人気グループ「V6」の岡田准一さんが主演を務めた映画「追憶」が6日に公開された。「駅 STATION」(1981年)や「鉄道員(ぽっぽや)」(99年)といった作品で知られる降旗康男監督と撮影に木村大作さんという日本映画界きっての“黄金コンビ”による今作に、重要な役どころで出演しているのが安藤サクラさんだ。普段、新幹線の中では集中力が途切れがちという安藤さんだが、今作の脚本は一気に読み、新幹線が駅に到着し、「ホームに降り立った瞬間、『やりたい』と言った記憶がある」と話す。安藤さんに話を聞いた。

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 ◇降旗監督のご指名に…

 「追憶」は、かつての幼なじみが25年後に起きた殺人事件によって、刑事、容疑者、被害者として“再会”することになるヒューマンミステリー作だ。刑事の四方篤を岡田さんが演じるほか、容疑者・田所啓太役で小栗旬さん、被害者・川端悟役で柄本佑さんが出演している。安藤さんが演じるのは、25年前、「ゆきわりそう」という喫茶店を営み、親に捨てられた篤、啓太、悟を我が子のように愛した仁科涼子という女性だ。安藤さんを涼子役に推したのは、ほかならない降旗監督だった。それを聞いたときは、「降旗監督、私のこと知ってるんだ!と本当に思いました」と感動しつつも驚いたという。

 安藤さんは、大人の俳優より子役の俳優と絡む場面が多い。そのため真っ先に考えたのは、「(自分が)子供たちの目にどう映るか」ということだった。「子供たちの眼は絶対うそをつかないですし、うそが見えたら、降旗監督は確実にそれを見抜くだろうし、きっと大作さんが撮るカメラのフィルムに映るものもごまかしが利かない」という思いから、子役3人との関係を築くことを第一に考えた。富山での撮影に入る前には4人で喫茶店に入ってお茶を飲んだり、安藤さんの家の近くで、「なぜか近所の子供たちも一緒に(笑い)、追いかけっこやサッカーをして楽しい1日を過ごした」という。不幸な生い立ちの涼子を演じる上では、「その時間がよりどころになりました」と明かす。

 ◇ストールに託した思い

 もう一つ、涼子を演じる上で“支え”になったのは、劇中でまとうストールだった。安藤さんが演じる涼子は、25年前の過去と現在をつなぐ役割を果たしており、そのストールが安藤さんにとって、「役を演じるのに、ものすごくよりどころになっていたし、自然と、物語を動かすアイテムにもなっていた」と話す。

 実はそのストールは、安藤さんの幼なじみでテキスタイルアーティストのいとうりえこさんが、何色もの色を使って染め上げ、一から作ってくれたもので、「人が手で作るものって時代に関係なくうそがないというか、富山のあの景色にも自然となじむんです。だから、降旗監督の作品の中でも、大作さんの画(え)の中でも違和感なく物語の一つのアイテムとして出てくることができるし、映画でもすごく重要な役割を果たしてくれたと思います」と語る。安藤さん自身も「自然に、今の時代にもなじむもの」を、ものを選ぶ際の大切な指標にしており、「人の思いが伝わるものや手作りのもの」を好んで身に着けるという。

 ◇健康法は水道水

 涼子は、その日1日が無事に終わると感謝の言葉をつぶやく。そういった姿は「嫌なことがあってもそれを受け入れて、もっと広い気持ちでいること。美しいものを美しいと思えたり、嫌なことでも気持ちを広く持って、それを受け入れられるように変換したりしていくことが、生きていることが楽しく思えることにつながる」と考える安藤さん自身の生き方と重なる。日ごろ呼吸が浅くなりがちという安藤さんにとって、「どれだけそのとき(心が)オープンでいられているか、それともぐっと内にこもっているかというバロメーター」になるのが「呼吸」であり、「呼吸が深く素直にできているときは、体も心もすごく健やか」ととらえるそうだ。

 安藤さんの話で興味深かったのは、「水」に対する考え方だ。最近は、市販されているペットボトル入りの水も種類が豊富で、水道水を飲まない人は多い。そんな中で安藤さんは「どこの水道水でも飲めるようになったら、今、この時代を生きている一番健康な人になれるんじゃないかと思っている」といい、「今の(市販されている)水は、たぶんすごくクリーンなんですよね。だけど水道の水にはいろんな微生物が入っていると思うんです。それと一緒に生きていく方が長生きするような気がします(笑い)」と力を込める。

 ◇10年後の自分

 安藤さんは現在、31歳。今年でデビュー11年目となる。今作での降旗監督、木村さんとの仕事を経験し、「うまく伝えられないんですけど」といいつつ、「映画を作る楽しさとか、すべてをひっくるめた緊張感は今も残っているし、たぶんその緊張の糸や張りつめたものは生涯緩むことはないし、緩ませたくないです」と気持ちを引き締める。そして「欲を言っていいならば、もっと大人になって、いい女になったときに、(降旗監督、木村さんと)またご一緒したいなと思います。ですからあと20年待っていていただいて……」と言ったところで20年という歳月の重さに気づき、「私が40代でもいいです。10年後、人生経験をもうちょっと積んで、またご一緒したいです」と抱負を語る。

 10年後、どんな女性になっていたいかと尋ねると、「今の自分には想像できない人になっていたらいいですね」との答えが返ってきた。「ここ最近は、今を一生懸命生きていたら、自分でもその都度想像できない自分に、本当に短い時間の中で変わっていくことを実感できているんです。それを10年後も実感していたいですし、そのときを、その変化を楽しみながら、いい意味で、流されながら生きていてほしいと思います。私は例えば、こうやってインタビューを受けていても、『何年前にはこう言っていましたが』と言われて、『今はそれは思っていません』ということが結構多いんです。そういう意味で、今、想像できない自分になっていたらいいなと思います。自分が今、想像できる人って、高が知れているというか、もっとその先を行っていてほしいというか。そして、いろんなこと、たとえつらい出来事があったとしても、それをきちんと受け止めて変化していっていたらいいなと思います」と笑顔で結んだ。映画「追憶」は6日からTOHOシネマズ日劇ほかで公開。

 <プロフィル>

 1986年、東京都出身。「風の外側」(2007年)で女優デビューを果たす。主な出演映画に「かぞくのくに」(12年)、「春を背負って」「0.5ミリ」「百円の恋」(いずれも14年)、「白河夜船」(15年)などがある。出演した「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」「DESTINY鎌倉ものがたり」が17年に公開予定。

 (取材・文・撮影/りんたいこ)

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