夏帆さんや染谷将太さんらが出演している映画「予兆 散歩する侵略者 劇場版」(黒沢清監督)が11日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開される。演出家の前川知大さんが手がけた人気舞台を映画化した「散歩する侵略者」のスピンオフで、WOWOWで放送された全5話の連続ドラマを劇場用に再編集。夏帆さん演じる、不可解な出来事に巻き込まれていく女性を主人公に、侵略者がやって来たときに別の街では何が起きていたかを描くアナザーストーリーだ。音響はドルビーデジタル5.1chサラウンドにアップグレードされたほか、映像の細部にも変更が加えられている。
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山際悦子(夏帆さん)は、「家に幽霊がいる」と言う同僚の浅川みゆき(岸井ゆきのさん)の自宅に向かうが、そこにはみゆきの父親がいるだけだった。心配した悦子は夫辰雄(染谷将太さん)が働く病院の心療内科へみゆきを連れて行くと、家族という概念が欠落していると診断される。病院で悦子は、辰雄から新任の外科医・真壁司郎(東出昌大さん)を紹介されるが、何とも言えない違和感を覚え……というストーリー。
最初から一本の映画として撮ったのではと思うほど、場面転換に違和感がなく、クオリティーもかなり高い。映画のスタッフが再結集して製作したのだから、それも納得だ。
「蛇の道」(98年)以来、19年ぶりに黒沢監督とタッグを組んだ高橋洋さんの脚本も、映画版とはテイストの違った不穏さと恐怖に満ちた展開で楽しませてくれる。見た目ではなく演出による恐怖シーンは秀逸だ。
キャストも熱演で、思わず登場人物の誰もが侵略者かと疑ってしまう。中でも映画版に出ていてた別人の役でスピンオフにも登場する東出さんの怪演ぶりが光っていた。(遠藤政樹/フリーライター)
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