超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、ゲーム開発と産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」元代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、ゲーム市場の昨年を振り返り、今年の展望について語ります。
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今やすっかりスマホゲームが国内ゲーム市場の主役だが、ここ数年はランキング上位に変化が乏しく、マンネリ化が進んでいた。しかし、昨年は変化の兆しが見られた。火付け役になったのが、アジア圏から上陸したタイトルだ。
筆頭といえるのが、中国のゲーム「アズールレーン」(国内では日本のYostarが運営)だ。擬人化された艦船で艦隊を編成し、敵艦隊を撃滅していく内容で、人気となった「艦隊これくしょん-艦これ-」と同タイプのスマホゲームといったところ。ただし、シューティング要素を加えるなど、独自の要素も備えている。日本人好みのグラフィックもあって、一気に人気タイトルとなった。
だが真に注目すべき点は、そのビジネスモデルだ。国産ゲームの多くが「ガチャ」に依存しているのに対して、「アズールレーン」は複数の課金システムを備え、運営コストが抑えられている。同様の仕組みは海外タイトルで一般的だ。本作の成功から日本のメーカーが学ぶ点は多々ある。
韓国のネットマーブルがリリースした「リネージュ2 レボリューション」のヒットも、日本のメーカーに刺激を与えた。往年のPC向けMMO(大規模同時接続型)RPGのスマホゲームで、まず韓国で大ヒットを記録し、満を持して日本に上陸。家庭用ゲームに迫る美麗なグラフィックに、ユーザーだけでなく、多くのゲーム開発者が刺激を受けた。
この2作が示した「ガチャサイクルに依存しすぎないビジネスモデル」と、「よりハイエンドなビジュアル表現」は、2017年の国内スマホゲーム市場を揺さぶった。特にビジュアル表現については、一朝一夕に追いつくことが難しく、改めて技術開発への投資や、人材採用に踏み切るメーカーも見られる。18年はこの動きがさらに加速することになりそうだ。
国内メーカーでも、新たな流れが出てきた。「ドラゴンボールZ ドッカンバトル」(バンダイナムコエンターテインメント)と、「Fate/Grand Order」(アニプレックス)のヒットだ。ともに海外でもヒットしている点が特徴で、これまで海外展開に苦戦してきた国内メーカーを勇気づけた。18年はさらに多くのタイトルが海外で成功することを期待したい。
一方でスマホゲーム以外に視野を広げると、17年はニンテンドースイッチのブレークが挙げられる。17年12月10日には世界で累計販売台数が1000万台を突破した。特筆すべきは北米・欧州と同じペースで、日本でも本体が売れていることだ。スマホゲームに慣れた日本人が再び家庭用ゲームを購入するのかにも注目したいところだ。
人は飽きる特性があり、どの遊びにも満足しない。ある日突然、つきものが落ちたようにブームが去り、新しいブームが巻き起こる。ゲームの歴史はこの繰り返しで進んできた。18年にどのようなゲームが登場してくるのか、今から楽しみだ。
おの・けんじ 1971年生まれ。山口県出身。「ゲーム批評」編集長を経て2000年からフリーのゲームジャーナリスト。08年に結婚して妻と猫3匹を支える主夫に“ジョブチェンジ”した。11~16年に国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表として活躍。退任後も事務局長として活動している。
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