超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、ゲーム開発と産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」元代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、中国のゲーム市場について語ります。
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検索エンジンサービスのグーグル、交流サイトのフェースブックやツイッターなど、大手ITサービスが軒並み使えない中国本土。その陰で急速に成長しているサービスが、PCゲーム向けデジタル流通・決済プラットフォーム「スチーム」だ。米バルブ社が運営し、世界での同時接続者数は1400万人を数える。その中でも近年、中国ユーザーの成長率が著しく、今や中国からの通信量は全世界の16.0%に相当(2017年12月19日)。16.4%のアメリカに肉薄するまでに成長してきた。
これまで中国では海賊版市場がはびこり、PCゲームでのビジネスは難しかった。しかし、サーバ側で違法コピーを排除できるデジタル流通では、ある程度は対応できる。中国でPCオンラインゲームやスマホゲームが急成長したのも、この市場特性があったからだ。
15年にPS4とXboxOneの販売が許可されたのも、この流れに拍車をかけた。中国ではゲームソフトの販売に事前審査が必要で、両ゲーム機では新作タイトル不足が続いている。一方、近年では家庭用ゲームの大半がPCゲームでも同時展開されている。中国国内からスチームを介して、グレーゾーンながらもゲームが入手できた。こうした理由から、PS4やXboxOneで家庭用ゲームに触れた中国のユーザーが、新作を求めてスチームに殺到したというわけだ。スチームでPCゲームを配信する日本の中堅メーカーも「17年になって中国ユーザーからの問い合わせが急増した」と語る。
もっとも、17年末には中国当局がスチームのコミュニティ関連サービスへの接続規制を始めた。現在もゲームの購入やプレーは可能だが、先行きは不透明だ。その一方で中国大手のテンセントが、独自のPCゲーム向けデジタル流通・決済プラットフォーム「Tencent WeGame」を運営を開始している。日本企業でもセガゲームスが協業し、08年にPS3向けに発売されたシミュレーションRPG「戦場のヴァルキュリア」の配信を決めている。
中国では外資系ITサービスを規制する一方で、検索エンジンでは百度、交流サイトではウィーチャットやウェイボーなど国内サービスを育てる政策が続いている。
一方で、中国企業が運営するアプリストアと並んで、アップルが運営するApp Storeのような外資系サービスもある。中国のユーザーにとって、中国展開を進めたい日本企業にとっても、スチームの存在感は今や無視できない存在だ。しかし、当局の胸先三寸なのも事実。今後の展開を注視したい。
おの・けんじ 1971年生まれ。山口県出身。「ゲーム批評」編集長をへて2000年からフリーのゲームジャーナリスト。08年に結婚して妻と猫3匹を支える主夫に“ジョブチェンジ”した。11~16年に国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表として活躍。退任後も事務局長として活動している。
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