コメディー映画「嘘八百」(武正晴監督)が、5日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほかで公開される。千利休ゆかりの茶器が発見されるというめでたい(?)物語が、中井貴一さんと佐々木蔵之介さんのダブル主演で繰り広げられていく。笑いあり、ホロリとさせられるエピソードありの人情コメディーだ。
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武監督と脚本の足立紳さんは映画「百円の恋」(2014年)が高く評価された。NHK連続テレビ小説「てっぱん」(10年)などの脚本家、今井雅子さんもシナリオ作りに加わった。
お宝を求めて大阪・堺の町にやって来た古物商の小池則夫(中井さん)は、由緒ありそうな蔵付き日本屋敷の家主、野田佐輔(佐々木さん)に蔵の中を見せてもらう。山ほどの骨董(こっとう)品の中から、千利休のものと思われる国宝級の茶器が見つかる。骨董のことは分からないという佐輔に則夫は破格の安値で蔵のものすべてを引き取ると申し出、佐輔も快諾するが……というストーリー。
近藤正臣さんが大御所鑑定士に扮(ふん)するほか、芦屋小雁さん、前野朋哉さん、木下ほうかさん、坂田利夫さんらが出演する。
だましたつもりがだまされて、これでは面目丸つぶれと、中井さん演じる古物商が、腕は立つのに落ちぶれ、くすぶっていた佐々木さん演じる陶芸家と結託。2人がそれぞれの矜持(きょうじ)を懸け、自分たちに一杯食わせた人間に挑んでいく。前半の、則夫と佐輔の軽妙なやりとりで物語に勢いをもたせる。いざ作戦決行!となった折には、茶器作りの手管をじっくりと見せて利休ファンの心をくすぐる薀蓄(うんちく)を登場人物に語らせ、古美術ファンを楽しませてくれる。
個人的には終盤の展開はサービス過多と感じた。ともかく、中井さん、佐々木さんの演技はやはり素晴らしく、佐々木さん演じるぐうたらオヤジが一念発起し、茶器作りに没頭するときのひょう変ぶりと殺気立った目には心底感服。そんな佐輔をサポートする中井さん演じる則夫の鷹揚(おうよう)な態度がこれまた頼もしく、この2人だからこその安定感ある笑いを大いに楽しんだ。佐輔の妻に扮した友近さん、いつも何かを食べている則夫の娘役、森川葵さん、学芸員役の塚地武雅さんもいい味を出し、作品に軽やかな笑いをもたらしている。(りんたいこ/フリーライター)
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