モンスター
#10 信じた者たちへ
12月16日(月)放送分
俳優の鈴木亮平さん主演のNHK大河ドラマ「西郷(せご)どん」に、桂小五郎役で出演している玉山鉄二さん。玉山さんで大河ドラマと聞いて、同じ幕末を舞台にした「八重の桜」(2013年)を思い出す人も多いだろう。当時、会津の知将・山川大蔵を演じた玉山さんが「西郷どん」で与えられたのは、会津人にとっては憎き相手である長州藩士の桂というのは興味深いところ。オファーを受けて「正直“そちら側”なんだと思った」と率直に明かす一方、「今回、僕は“そういった意味”でも意気込んでいます」と力を込める玉山さんに、桂小五郎役への思いなどを聞いた。
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桂小五郎は長州を代表する志士で、維新三英傑の一人だ。藩校明倫館で学び吉田松陰に師事し、剣術にもたけ、江戸修業時代にペリー艦隊の来航を体験。以来、西洋の優れた技術や学問を貪欲に学ぶ。藩の中心人物となり新選組にも命を狙われるが、過激な挙兵へと気運高まる長州において慎重な態度をとり、薩長同盟の中心的役割を担い、明治新政府の中枢となる……。
「僕はどちらかというと頭の中を整理するのが苦手で、自分が積み上げてきた、やってきた役に対しての責任をすごく大事にするタイプ」と語る玉山さん。“やってきた役に対しての責任”には当然「八重の桜」での山川大蔵も含まれ、今回の桂小五郎役を引き受けるに至るには、逡巡(しゅんじゅん)することもあったという。
そんな玉山さんを決断させたのが、ドラマの制作統括の櫻井賢さんの存在だ。14年度後期のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「マッサン」で、玉山さんは櫻井さんとタッグを組んでいた。
玉山さんは「正直、櫻井さんではなかったら桂小五郎役はやっていなかったと思います」と言い切ると、「今でも街中で気づかれると『マッサン、マッサン』って言われるくらい、皆さんの記憶にもとても大きい存在で。僕もあの作品に巡り会えて感謝していますし、『マッサン』が終わって3、4年がたちますけど、その分の恩返しというか、僕自身の成長も見てほしかった」と思いを明かす。
そんな玉山さんの「“そういった意味”でも意気込んでいます」発言の裏に見え隠れするのが“もう一つの義”、すなわち会津や東北への思いだ。
過去の発言などから読み解くと、一つの役を引き受けるのに、慎重な姿勢を崩さないタイプに見える玉山さんは「たぶん会津の方は僕が桂小五郎として出てきたとき、『裏切り者』と思ったはず(笑い)。櫻井さんのせいで、今後3年くらいは会津に足を踏み入れることができないんじゃないかな」と冗談めかしつつ、本音をちらり。
それでも「僕たち役者が背負っている宿命なので、そこは向き合っていかないといけない部分。会津、東北の方を含めて『さすがだな』って思っていただけるようにしたいですし、僕が長州側を演じ、卑屈さはもちろん、新政府に向けていろいろなことを成し遂げるというところをしっかりとやればやるほど、『八重の桜』を見てくださっていた方の心や気持ちに、いい意味で傷をつけることができるのではないのかなって思っています」と秘めたる熱い思いを語った。
玉山さんが「西郷どん」の桂小五郎を演じるにあたり意識したのは、吉之助(鈴木さん)や一蔵(瑛太さん)ら薩摩の人間に対しての、ある種の卑屈さ。「長州の薩摩に対する恨みつらみを表現するのが僕しかいなかったので、そこは卑屈さが増してでも強めにやらないと、薩長同盟へといく流れで、分が悪くなるんじゃないかと思っていて、そこは気をつけながらやっていた」という。
26日放送の第32回「薩長同盟」では、「吉之助は受けるのがうまい、懐の深い人物なので、時に『自分が間違っているんじゃないか』と、桂が揺れる瞬間があるっていうのが、ポイント、ポイントで出ているんじゃないか」と話す。「当時の長州と薩摩の関係性ってすごくシンプルで、どっちが先に頭を下げるかという話。桂一人なら容易なことなんですけど、自分の下にはたくさんの藩士がいて、長州のためなら命をささげると意気込んでいるところを目の当たりにしていたり、そういったものを背負えば背負うほど、こちらから頭を下げることができない」と桂の心情を代弁する。
その上で「亮平君とは『キレイにはまりすぎるのはちょっと嫌だよね』という話はしましたし、二つの藩が結ばれるっていうのは皆さんご存じなわけで、そこに対するプロセス、どういうラインをたどっていくのかが、楽しめるポイント。上から水を落とすときにどこに落ちるか分からないような、右に行ったり、左に行ったり揺さぶりながら、あのシーンを作りたいねっていう話をしたので。心の動きを大事にしました」と振り返った。
「西郷どん」は、明治維新150年となる18年放送の大河ドラマ57作目。薩摩の貧しい下級武士の家に生まれた西郷隆盛(吉之助)の愚直な姿にカリスマ藩主・島津斉彬が目を留め、斉彬の密命を担い、西郷は江戸へ京都へと奔走する。勝海舟、坂本龍馬ら盟友と出会い、革命家へと覚醒。やがて明治維新を成し遂げていく……という内容。
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