俳優の堺雅人さんが初めて実写の日本語吹き替え声優を務めた映画「プーと大人になった僕」(マーク・フォスター監督)が14日、公開された。同作は、世界的人気キャラクター「くまのプーさん」を初めて実写化した映画で、堺さんはプーさんの大親友で、主人公のクリストファー・ロビンの声を担当した。子供のころは図鑑を好んで読んでいたという堺さんにアフレコやロビンを演じたユアン・マクレガーさんについて、自身の子供時代について聞いた。
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映画では、プーと「100歳になっても、きみのことは絶対に忘れない」と約束し、ロンドンへ旅立った少年のロビンが、大人になり、仕事と家族の問題に悩んでいるところへ、プーが現れる。「一緒に森の仲間たちを探してほしい」と頼まれたロビンが、子供のころにプーたちと過ごした懐かしい“100エーカーの森”を訪れる……というストーリー。
「どなたかの芝居に声を当てるのは、やってみたい作業だった。機会があればと思っていました」という堺さん。今回の出合いに「こんなに素晴らしい作品をいただけたのはラッキーでした」と喜びつつも、アフレコでは「声を重ねるってこんなに難しいことなんだと思いました。(この難しさは)やってみないと分からなかった。話しているつもりでも、抑揚がなく聞こえてしまうようで、『抑揚をつけて、もっと言葉をはっきりしゃべってください』と、よく監督から指摘されました」と苦労した様子。「(アフレコで)何かを表現したということは一回もなかった。口や感情を合わせるだけで精いっぱい。声優さんってすごいなと思いました」と振り返る。
すでに吹き替え版を見たといい、その時の心境を「気が気じゃなかった。作品を邪魔していないか、悪目立ちしていないかと不安で。作品や自分のお芝居を客観的に見ることはできなかったですね。実写のときも客観的には見られないんですけど、今回はいつも以上に客観視できなかったです。ビクビクしながら見ていました」と振り返る。「なるべく堺の影が出ないように、ユアンさんに入り込んでいただけるように、切に願うばかりです」と心境を語る。
大人になったロビンは、少年の心を無くし、大親友だったプーと再会することによって生き生きとした心を取り戻していく。堺さんは、マクレガーさんの魅力を「真面目なお芝居をしていても時折見せるいたずらっぽい視線や顔、やんちゃな男の子という少年ぽい部分がすごくすてき」といい、「(劇中で)深刻な顔や、元気のないユアンさんを見ると、たいして知りもしないのに、なんかユアンさんらしくないなと思っちゃったりして……。にっこり笑ったり、遊んだり、いたずらっぽい顔をしたりすると、ああ、それでこそユアンさんだよと勝手に思っちゃう。そういうふうに思わせるところが、ユアンさんの素晴らしさ」と分析する。
そのマクレガーさんとは、今月5日に東京都内であったジャパンプレミアで対面。「お土産を渡そうと思って、いろいろ考えてイギリスには消せるボールペンはないかなと思って渡したんですけどあまり反応がなかった……。『便利だね!』って言われて、それで終わりました」と苦笑い。「捨てて帰ったんじゃないかな……」とジョークを飛ばしつつ、振り返った。
子供時代の「クリストファー・ロビンには親近感が湧いた」という。「僕も本が好きな子供だったし、おもちゃを部屋中に並べて会話をさせたりするような遊びをしていたので、人ごとだとは思えませんでした。(自分が読むのは)図鑑が多くて、昆虫とか、魚とか」と言いながらも、自身で昆虫の番組を持っている俳優の香川照之さんを挙げ「香川照之さんほどじゃないです。あの人の足元にも及ばないですね。(自分は)図鑑を読んで知った気になるタイプ」と明かしていた。
今回、吹き替えを担当するにあたって、プーさんのアニメを見て、児童小説も読んだという堺さん。「優しくてハチミツが好きでほんわかしたクマさんというイメージだったんですが、こんなに深くて面白い世界だったのかと、再発見した感じ」といい、劇中では、プーさんの「何もしないことが、最高の何かにつながる」という言葉が印象に残ったという。
「日日是好日(にちにちこれこうじつ)とか、看脚下(かんきゃっか)とかのような、お寺の和尚さんが言っていてもおかしくないし、演技の先生が言っていてもおかしくないような言葉。通じるところがあると思います。なじみがある概念ですよね」と語る。
そして「プーさんが、ただ可愛いというだけじゃなく、そこにある深さ、苦さ、皮肉も含めて、いろんなことが詰まった映画。たとえば、仕事帰りにフラッとご覧になって、しみじみ味わうというのもすてきな鑑賞法じゃないかという気がします」と同作の楽しみ方を提案した。
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