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ひとり暮らし長~い芸人
11月21日(木)放送分
女優の稲森いずみさんが主演するドラマ「連続ドラマW それを愛とまちがえるから」(宮本理江子監督、樹下直美監督)が、9日からWOWOWでスタートする。直木賞作家の井上荒野さんによる小説を映像化した今作は、セックスレスに陥った結婚15年目の夫婦が、結婚生活を見つめ直す姿を描く。主人公の専業主婦、伊藤伽耶を演じた稲森さんと、伽耶の夫・匡を演じた俳優の鈴木浩介さんに、互いの印象や撮影の裏話、さらに今年の抱負や10年後について聞いた。
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ドラマは、平穏な生活を送っていた結婚15年目の夫婦、伽耶と匡が、ある日、互いに恋人がいると気づくことから動き出す。伽耶の恋人に扮(ふん)するのは安藤政信さん、匡の恋人を仲里依紗さんが演じる。
「セックスレス」に「不倫」と、伽耶と匡が身を置く状況は深刻だが、ドラマはあくまでコメディー仕立て。これまで社会派ドラマを制作してきたWOWOWには新しい試みとなる。稲森さんは「シリアスなドラマとは違う緊張感がありましたし、間の取り方や集中する部分も違ってきますから、やっていて楽しかったです」とコメディードラマを演じる醍醐味(だいごみ)を語る。
「コメディーをやるという意識はあまり持っていなかったかもしれないです」と話すのは鈴木さんだ。「真剣に演じるからこそ、それが滑稽(こっけい)に見えたり、悲しく見えたり、笑えたりする」ことから、「とにかく、(演じる匡の)本当の気持ちをちゃんとしゃべって伝えていく。そういうことを積み重ねていく」ことに腐心したという。
チーフ監督の宮本さんは、最近では、「最後から二番目の恋」(2012年)や「最高の離婚」(13年)の演出で知られるが、実は、稲森さんが出演した1997年のドラマ「ビーチボーイズ」でも演出を務めていた。30年ぶりの再会を「いい作品で再会できてうれしかったです」と稲森さんは喜ぶ。
もっとも、今回の撮影は、ワンシーンが「尋常じゃないくらい」(鈴木さん)長く、時には、「(台本)16ページ分を、カットを割らず長回しで撮ることもあった」(稲森さん)。そのため、「全体がぎゅっと凝縮された空気」(鈴木さん)の中、キャストもスタッフも「ライブ感が満載」(稲森さん)で撮影に臨んでいたといい、稲森さんは、カメラが回り始める「ヨーイ、スタート!」の掛け声に、「久々に心臓がドキドキしました」と打ち明ける。
今回、稲森さんと鈴木さんの話を聞いて、なるほどと納得した場面があった。それは第3話の、電車の中で、左利きの匡が右利きの伽耶の右側に座ってお弁当を食べる場面。何でもこの撮影の日の朝、もともと左利きで、「人の左側にいることが常」の鈴木さんは宮本監督に、「長いこと夫婦をやっていたら僕は左に座るのではないか」と提案したという。
しかし結局、鈴木さんは稲森さんの右側に座り、それによってむしろ、「腕がぶつかりそうでぶつからない、夫婦のあうんの呼吸が垣間見える」(鈴木さん)場面となった。実際、稲森さんもその映像を見て、「この2人はやっぱりお似合いと思えて、うまくいってほしいなと思いました。好きなシーンです」と振り返った。
これまで、数々の作品に出演してきた稲森さんと鈴木さんだが、意外にも今回が初共演。当初、稲森さんに対して、「静かで穏やかなイメージ」を抱いていた鈴木さんは、演技の最中、稲森さんから「ぐわっとマグマが上がってくるような瞬間」を何度も目撃し、その都度、圧倒されたという。
一方、稲森さんは鈴木さんに対して「会う前はもっと面白い……」と言いかけたところで、鈴木さんが、「ちょっと待ってください! 会う前は面白い印象ってことは、会ったら面白くなかったということですか?」と反応。これに稲森さんが「違う、違う」と慌てて否定し、「本当にムードメーカーで、場を盛り上げてくれるということもあるのですけど、もっと奥が深いというか、二枚目の部分を見ることができたというか、一緒に演じていてすごく頼りになりました」と続けた。これには鈴木さんも「ありがとうございます」と照れながら安堵(あんど)していた。
今作について鈴木さんは、「不倫を入り口にドラマは始まりますが、最終的には、夫婦って結構いいものだな、全く違う生き方をしてきた者同士が、お互い共感したり、思い出を共有したりする幸せを感じることができるんだということに、改めて気づく内容だと思います」と説明する。その言葉にうなずきながら稲森さんも、視聴者が「どうして相手に対してこんなことをしてしまったのだろうと考えるきかっけや、自分がもう少し素直になれていたらよかったんだと思うきっかけになってもらえたら」と期待を寄せる。
そんな2人に、今年の抱負を聞いてみた。すると、「毎年テーマを決めている」という稲森さんは、「今年は、他人に自分の気持ちを的確に伝えることができるように語彙(ごい)を増やしたいです」と話す。
一方、11月が誕生月の鈴木さんは、ロシアの劇作家アントン・チェーホフが、最後の作品「桜の園」を遺し亡くなったのが44歳だったことに触れ、「僕も44歳になったんですが、まだ元気ですし、いろんなことを勉強しようと思ったんです。まずは、舞台の戯曲をたくさん読もうと思っています。演劇をやる者として、今まで読んでこられなかったものや、44歳から勉強して少しでも常識の範囲で、その戯曲は読んだことがありますと言えるぐらいの“大人”になりたいと思っています」と真摯(しんし)に語る。
10年後は、「緑の多いところで、森林浴をしながら暮らしていたいです」という稲森さん。女優を続けているかどうかは「分からないですね」としながら、「いろんなことを経験して、趣味も増やして、10年後を豊かに生きるための知識を蓄えていきたいです」と話す。鈴木さんはというと、「自分がやりたいとずっと思っている舞台を、自分の思っているキャスティングと、自分の思った演出家の人たちと一緒にやりたいです」という。ちなみに、その舞台が何かは「内緒です(笑い)」だそうだ。
ドラマは2月9日からWOWOWプライムで毎週土曜午後10時に放送。全5話で、第1話は無料放送。
(取材・文・撮影/りんたいこ)
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