映画「Diner ダイナー」(蜷川実花監督、7月5日公開)で共演した俳優の藤原竜也さんと窪田正孝さん。映画は、天才シェフで元殺し屋のボンベロが店主を務める殺し屋専用のダイナー(食堂)を舞台にしたサスペンスエンターテインメントで、藤原さんがボンベロ役で主演を務め、窪田さんがダイナーに来る殺し屋スキンを演じる。藤原さんと窪田さんに映画の撮影エピソードや俳優としての原動力などを聞いた。
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映画は、平山夢明さんのサスペンス小説「ダイナー」(ポプラ文庫)が原作。孤独な人生を送ってきたオオバカナコ(玉城ティナさん)はある日、怪しいバイトに手を出したことがきっかけで、ボンベロが取り仕切るダイナーにウエートレスとして身売りされる。カナコが来たことにより、殺し屋同士の暗黙のルールが崩れていき……というストーリー。
天才シェフのボンベロに傷だらけのスキン、子供のような外見ながら実は狂暴極まりないキッド(本郷奏多さん)……と個性的すぎる殺し屋たちが続々登場する、独特の世界観に彩られた今作。原作を読んだ藤原さんも「『これ、どこの国の話なんだ』と(笑い)。なんちゅう世界なんだ、と思いました」と当時の驚きを口にする。
藤原さん演じるボンベロは、ダイナーでの勝手な振る舞いは誰であろうと決して許さない、殺し屋たちからも一目置かれる存在。冷静沈着だがどこか狂気を秘めているような、ミステリアスな難役だ。藤原さんは、そんなボンベロにどうアプローチしたのか。「ボンベロという人物はつかみづらく、監督の(蜷川)実花さんと『難しいですね』と話していました。原作に描かれている通りに表現しても、単調になってつまらないかもしれない。だから僕らが思っている以上のテンションで演じてみたらどうだろう、と考えました」と語る。
そこで、蜷川監督はノーマルなパターンや過剰なパターンなど、数パターンを試して最もハマるボンベロを見つけるというアイデアを提案。藤原さんは「そこで幅を広げてもらったのがよかったのかなと思います」と振り返る。元殺し屋という設定については、「実花さんから、そこを意識しろという演出はなかったんです。だから、『元殺し屋だからこれだけのメンバーが僕のダイナーに集まってくるのかな』という解釈でいました」と明かす。
劇中には数々の殺し屋が登場するが、中でも窪田さん演じるスキンは、ボンベロやカナコと多く接触する重要な存在として描かれている。傷だらけの顔が特徴的なスキンを演じるため、特殊メークで同役に臨んだ窪田さんは「彼は繊細な部分もあるキャラクター。いきなり出会ったカナコにも優しく接するので、そんなに優しくしていいのかな、とも思うけど、殺し屋という職業なので、人の懐に入るのがうまいのかな、と思いながら演じていました。竜也さんやティナちゃんがスタジオにいるキッチンの世界観を見たとき、役の方向性が決まった気がしました」と説明する。
一見穏やかだが、内に狂気を帯びたスキン。窪田さんは「殺し屋って、やっぱり狂気のあるもの。ただ、静かな人もいれば荒ぶる人もいるだろうし、そこの表現は本当に難しいんですけど……。でも『(蜷川監督から)あなた、どれだけできるんですか』と問われている感覚があったので、そっち(狂気)に振ることに徹した感じでした。だけど、スキンは何かにどこかおびえているような人物。表現は一つじゃないなと思ったので、演じながら、工夫していたつもりです」と明かす。
蜷川監督の独特の表現方法と色彩豊かな美しい映像が印象的な「Diner ダイナー」。藤原さんは「画(え)を見たら、やっぱりきれいで、力強さがある。それが実花さんのすごさですよね。そういう部分が面白いし、カッコいいし、なるほどこう来たか、と思う。普通ではありえない部分で桜を散らしたり、雨を降らしたりして、面白い演出ですよね。すごく発想が美しい」と魅力を語り、窪田さんも「客観的に見ていて、たとえば色など、映像にすごくこだわりがある。現実とは違うズレや違和感を出すことを狙っているんだなと思いました」と同意する。
蜷川監督の作品では、初の男性主人公だ。藤原さんは蜷川監督と現場を共にし、何を感じたのか。ハードなアクションもこなさなければならない藤原さんは「アクション練習の時間を結構確保してもらっていて、今日からアクション週間か、と現場に入ると、なぜかずっと(演出で)雨が降っていたり『花をまきたい』とか(言われて)……」と苦笑し、「実花さんが『一筋縄ではいかないんだよ』と思っているかどうかは分からないけど、そういう俳優への発破のかけ方が意外で、こういう世界なんだ……と思いました」と話す。
アクションといえば、今作では窪田さんがマシンガンを乱射する姿など派手な描写も見どころのだ。そんな窪田さんにアクションを演じる思いを聞いてみると、「アクションはあくまでも芝居の一部」と前置きしつつ、「なんのために戦っているのか、そういう部分は意識している気がします」と明かす。
食堂を舞台にした今作。“食”への欲は根源的な、生きるための原動力だ。そこで、2人に仕事をする上でのそれぞれの“原動力”を聞いてみた。藤原さんは熟考したのち、「共演者との出会い」を挙げ、さらに「実花さんとも初めて組ませていただいたんですが、新しい人と新しいものを作る、ということが原動力かもしれないですね」と明かす。
そんな藤原さんの答えに、窪田さんも「僕も出会いかもしれません」と同意する。藤原さんと窪田さんといえば、過去にも共演経験があり、「デスノート」では映画版で藤原さん、テレビドラマ版で窪田さんがともに夜神月を演じるなどの共通点もある。トリッキーな役、ヒステリックな役の先には常に藤原さんがいる、という窪田さんにとって、藤原さんと今作で再び共演することも、喜びのある“出会い”だったのかもしれない。
最後に、窪田さんは「この仕事はすごく特殊だし、世に出れば出るほど何か失うもの、欠けていくもの、見えなくなるものがあったりする。ただ、役者として死にたいとかそういう大げさなことではないけれど、続けられる限りは続けたいなと思っています。一作品ごとに人と出会っていくことが、原動力かもしれないですね」と語った。
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