松本まりか:女優業は「面白いけど苦しい」 “怪演女優”は「常に葛藤」?

女優の松本まりかさん
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女優の松本まりかさん

 「演じることは、唯一の生きているって感じられる瞬間」と話すのは、女優の松本まりかさん(35)だ。12月18日の放送で、いよいよ最終回を迎えるあずみきしさんの人気マンガを実写化したドラマ「死役所」(テレビ東京系、水曜深夜0時12分)では、クールなニシ川役を担当。口元のほくろを“ミリ単位”で調整したり、黒髪ボブのカツラを10時間以上かけて切って調整するなど、ストイックに役と向き合った。数々のエキセントリックな役どころから“怪演女優”とも呼ばれる松本さんは、「集中するときはものすごく集中する。でもすごく自信がなかったり……常に葛藤している感じ」と自身を語る。松本さんの素顔に迫った。

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 ◇ニシ川は「いかに自分を捨てるか」

 ドラマは、あの世の「シ役所」を舞台に、シ役所「総合案内」で働く職員・シ村(松岡昌宏さん)が、次から次へと現れる死者に「お客様は仏様です」と慇懃(いんぎん)無礼な態度で対応する姿を描くエンターテインメント作。

 12月18日放送の最終回では、原作マンガ第8巻に収録された、イシ間(でんでんさん)との別れと旅立ちを描いた「お気を付けて」を放送。さらに、生前のシ村・市村正道と妻・幸子(安達祐実さん)のエピソードも描き、これまで隠されてきたシ村の過去に迫る。

 美人だが笑顔はなく、口が悪い「自殺課」の職員・ニシ川を演じる松本さんは、原作のニシ川を忠実に再現することを「絶対に譲れないポイント」と考え、役作りに挑んだ。普段は、演じる役の内面から入ることが多いといい、「外見から入るのは初めてだったし、こういう(役の)作り方をしたのはいまだかつてない」と話す。

 2018年放送のドラマ「ホリデイラブ」(テレビ朝日系)では、さまざまな手段で他人の夫を奪い取ろうとする不倫妻・井筒里奈を演じて、「あざと可愛い」と注目を集めた。「たとえば、『ホリデイラブ』の里奈ちゃんは、ぱっと見て、イメージが先にあって、あとは自分で自由に膨らませていったという感じなんですけど、今回は、いかに自分を捨てるか、自分から切り離す、ということをやっていた」と振り返る。

 ニシ川をはじめ、ドラマについて、SNSでは「原作に忠実」などの声が上がっていることから、「すごくほっとしました」と安堵(あんど)しつつ、「自分の中には、もっとやりたい気持ちはあります」とあくまでも貪欲だ。最終回で、ニシ川がどのように物語に関わっていくのかも気になるところだ。

 ◇15年ぶりの写真集は「全部素のまま」

 松本さんは、1984年9月12日生まれ。東京都出身。乙女座のB型。2000年放送のドラマ「六番目の小夜子」(NHK)で女優デビュー後、数々の作品に出演してきた。「死役所」の後も、12月23日に放送される「シャーロック」(フジテレビ系)特別編への出演が決まっている。

 15年ぶりとなる今回の写真集「月刊 松本まりか 汀」(小学館)では、数多くの女優の写真集を手がけるカメラマンのアンディ・チャオさんとタッグを組み、ベトナムで撮影。街の喧騒(けんそう)と、色鮮やかな島々の情景の中、松本さんが全てをさらけ出し挑んだ意欲作となっている。

 実は、韓国、インド、ベトナム、タイ……と松本さんが旅をしている途中に撮影された写真だといい、「写真を撮られるのは、正直自信なかったけど、アンディにも“ニコパチ”の写真を求められなかった。表情を作ったりしなくていいから、全部素のまま。笑いたい時に笑って、切ないときに泣いて、何もしたくない時には無表情。でも、この写真集では、無表情の中にこそ色んな表情が滲み出てる気がします」と振り返り、「だけどそういう状態ってすごく無防備だから怖いですよね。(女優業は)何かをまとってやってきているから」と女優業との違いも明かす。

 ◇さみしがり屋な一面も?

 来年デビュー20周年となる女優人生を「今までずーっと、灰色の雲の中にいた」と表現する松本さん。決して仕事がなかったわけではないというが、早々とスター街道を駆け上ったわけでもない。

 「みんなが仕事をしている分、私も何かを頑張んなきゃと思って、踊りのレッスンとか、常に人の何倍も負荷を与えるくらいの運動はしてきた。自分で何かを課さないと、人としてダメになると思って、それは20年間続けてきた」と振り返る。今はボクシングに励んでいるという。

 そんなストイックな姿勢が印象的な松本さんに、自身の性格を分析してもらうと、「すごく怖がりなのと、ものすごくチャレンジャーな部分があって、相反するものがいつも同居している感じ」と話す。「集中するときはものすごく集中するし、でもすごく自信がなかったり……常に葛藤している感じですかね」

 また、昔から「学ぶことが大好き」で、いろいろなことに「興味津々」といい、「この仕事をしているので、とにかく吸収できる自由な感性を持ち続けていられるかが大切」と続ける。さらに、「すごくさみしがり屋。かといって、一人でも生きていけちゃう(笑い)。自分っていうものがその時々で必要な環境に合わせて変化しているのかもしれないですね」と明かす。

 数々のエキセントリックな役どころから“怪演女優”と話題になることも多いが、役を引きずることはあるのだろうか。「しゃべり方やキャラクター性が知らない間に役に寄っていた、みたいなことはありました」と明かしながら、「そういう環境にいられるのというのは、ただただ幸せだなって」

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 35歳の今を、「すごく動き出している」と表現した松本さん。ドラマ出演が決まると、コメントを求められたり、取材の依頼が「こんなに?ってくらい多く」なったり、初めての経験ばかり。「私、言葉選びがすごく苦手なので、生み出すのにすごく時間がかかるんです。それが次から次へとやってきて、かつ仕事もたくさん。役もやらなくちゃいけない。役もとても大きくなっているから、責任重大になってくるし……たまにパンクして、もうだめ!って叫ぶこともあったり(笑い)」と取材中に本音?を漏らした場面もあった。

 そんな松本さんに、女優業は面白い?と聞いてみた。すると、「面白い」と即答しつつ、「けど苦しい」。「このまま一生私、これを続けていくのかって。ちょっと無理だって、去年ひとりで思いましたね。すごくやりたいけど、こんなに内面を削って、こんなこと一生できないって思っちゃった。一生できるようにやっていくためにはどうしたらいいのかっていうのも、自分っていうものと、役という仕事のバランスをとるのもこれから」と前を向く。

 「今はこういう感じだけど、一年後、違うことを言っているかもしれない。正直わからない。35歳だけど、まあいいんじゃないのって感じですかね」と笑った松本さん。「面白いけど苦しい、だけどやっぱり面白い」女優業にこれからも全力でぶつかっていく。

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