海に眠るダイヤモンド
最終話前編(9話) あの夜
12月22日(日)放送分
歌手で俳優の吉川晃司さんが地上波連続ドラマ初主演を飾る5週連続特別ドラマ「探偵・由利麟太郎」(カンテレ・フジテレビ系、火曜午後9時)が、6月16日午後9時から放送される。ドラマは京都を舞台に、冷静沈着な白髪の紳士・由利麟太郎(吉川さん)が、ミステリー作家志望の青年・三津木俊助(志尊淳さん)とともに、数々の奇怪な難事件に挑むホラーミステリー。吉川さんが、演じる由利についてや、自身の弱点、ドラマの見どころなどを語った。
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ドラマは、金田一耕助シリーズなどで知られる横溝正史の長編小説「蝶々殺人事件」を含む「由利麟太郎」シリーズが原作。田辺誠一さんが旧友の由利に事件の捜査を依頼する京都府警の等々力警部を演じるほか、由利に一方的に好意を抱く骨董(こっとう)品屋の波田聡美役でどんぐりさん、三津木を担当している編集者の山岸克平役で「TKO」の木本武宏さんらも出演する。
京都で暮らす由利は、殺人者の行動、心理を分析する犯罪心理学者として活躍する一方で、警察からの依頼を受け、事件の捜査も手伝っている探偵。捜査方法は「ひたすらに事件現場を観察し続けること」で、学生時代に米国で出会ったハンターから学んだトレース技術に基づき捜査を行う。弓道の心得もあり、静寂の中、弓を構え、的を見据えることで、精神を集中させ、それが難事件解決の一助になっている。見た目は白髪の紳士で、多くを語らない静かな男だが、その洞察力と論理的思考は天才的……という人物。
面白い挑戦だなと思いました。そもそも、普通のドラマをやるのなら、僕には声をかけないでしょう(笑い)。変わったこと、攻めたことをやりたいというプロデューサーや監督の思いを感じました。由利麟太郎については、ちょっとだけ知っていました。横溝正史さんが金田一耕助よりも前に生み出していた「名探偵」。原作通りの時代設定で映像化するのはいろいろと難しいんじゃないかと思ったので、「現代に置き換える」と聞いて、なるほどなと。うまい具合に時代を飛び越すことができれば、成立するだろうと思いました。
そこは正直に言って、あまり意識していないんですよ。「俺でいいの? 大丈夫なの?」とは思いましたけどね(笑い)。ありがたかったのは、以前(WOWOWで放送された)「黒書院の六兵衛」でもご一緒した、東映京都のスタッフの方々とまた組めたことですね。今回の企画を聞いて、「京都で撮ったら良いんじゃないですか?」と提案したら、制作サイドも同じ考えだったので、太秦(うずまさ)の東映撮影所を拠点にすることになりました。結果的に、やっぱり京都で撮れて良かった。ロケに行っても、趣のある建物が多いし、太秦のスタッフは映像に独特の陰影や奥行きを出せる。普通のテレビドラマとは一味違った、映画のようなスケールとこだわりで撮影ができたことに、手応えを感じています。
由利は、金田一耕助とも対照的で、推理においては徹底的に現場を観察して、記憶し、分析していく。今回の作品では、アメリカのハンターから学んだやり方(トレース技術)が、彼の基盤になっているという設定なんです。そこからイメージを広げて、荒野のカウボーイ的な人物像が見えてきました。由利麟太郎は、過去のある事件のことを引きずっていて、心の根底に深い孤独感がある。二度と取り戻せないものをずっと追い求め、人生をさすらっている……。演じる上では、そんな彼の内面を、せりふじゃなく横顔や後ろ姿で醸せればと思っていました。だから劇中でも、必要最小限しかしゃべっていません。たまには、こういう主人公がいてもいいんじゃないですか?(笑い)。
打ち合わせのとき、ちょっと前から弓をやり始めたという話をしたら、「それいいですね!」と言われて、由利麟太郎も弓道をたしなんでいる設定になりました(笑い)。事件の真相を見抜くべく、精神を集中させるくだりで、弓道のシーンが出てきます。由利が事件現場などでよく見せる手のポーズも、実は弓道と関係があります。弓道では、弓の握り方のことを「手の内」といいまして、それがすごく大事なことなので、「手の内を明かす」ということわざもそこからきているんですが、あのポーズはまさに、由利の「手の内」なんですね。「フレミングの法則」ともちょっと似ていますが、そっちが由来ではありません(笑い)。
高いところが苦手です(笑い)。今回、撮影所の屋上から下をのぞき込むというシーンがあったんですが、「吉川さん、もっと身を乗り出してください」と指示されて……。なんとなく、カメラマンも僕を見ながらニヤニヤしているんですよ。だから、あれは僕の弱点を誰かスタッフが知っていて、わざといじめたんじゃないかと疑っています(笑い)。下が水なら、10メートルとか15メートルの高さでも、平気で飛び込めるんですけどね。コンクリートだと怖くて、下を見るだけでもダメです。逆に飛行機くらいの高さなら、むしろ大丈夫なんですけど(笑い)。
ホラー体験はないですね。ミュージシャン仲間には霊感の強い人が意外にいて、僕がなんともなくても「ゴメン、俺、この場所はダメだわ」みたいなことがあったんですけど、自分は感じたことがなくて。だから、霊の存在自体をあまり信じていないようなところがありますね。そもそも、危害を加えないのであれば、別に近くにいてもらっても、いっこうに構わないんですけど(笑い)。
地上波のドラマとしては攻めた、挑戦的な企画だと思っています。まずは、その不思議な手触りを楽しんでほしいですね。そして由利麟太郎と助手の俊助、さらに田辺(誠一)くんが演じる等々力警部を加えた3人のやりとりにも、ぜひ注目してください。「ホラーミステリー」の中で、ちょっとしたアクセントになっていると思います。
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