放課後カルテ
第10話(最終話) これからも健康でいてほしい
12月21日(土)放送分
俳優の長谷川博己さん主演のNHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」の放送が8月30日に再開される。大河ドラマ枠(総合、日曜午後8時)では、8月9日から3週連続で総集編を放送中で、心待ちにしていたファンは「いよいよか」と気持ちが高まっているところだろう。ここまでの21回の放送の中には、主人公・明智光秀役の長谷川さん、斎藤道三役の本木雅弘さん、織田信長役の染谷将太さん、帰蝶役の川口春奈さんらキャストによる名演、名場面が多数あったが、当初、注目を集めたのがオープニングタイトルバックだ。重厚な音楽をバックに、ゆったりと流れていく映像と、極太の明朝体による白字のクレジットが特徴で、「昔の大河ドラマ(時代劇)っぽい」などといった声が上がっていた。フル尺で3分弱の映像に込められた制作陣の思いとは……。
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先週の総集編初回でも、「久しぶりにOP聴いて気分が上がっている」「このOPを待ってました!」「このOP本当に好き…テンション上がる」「総集編とはいえ、OPから胸が熱くなった」といった感想がSNSで書き込まれるなど、作品を語る上で欠かせない重要なパーツとなっているオープニングタイトルバック。ドラマのメインビジュアルと同じく、広告制作チーム「TUGBOAT」の多田琢さんが中心となり制作された。多田さんによると、今回のタイトルバックのコンセプトは「大河ど真ん中」。それはドラマの制作スタッフとの話し合いの中で、共鳴し合い生まれたものだった。
さらに多田さんらがイメージし、追い求めたのが「懐かしくて新しい」という“読後感”が残るもの。具体的に多田さんは「黒澤明監督が今、大河ドラマを作ったら、オープニングの映像がどうなるのかを考えた」と説明していて、「きっとせせこましいことはしないだろうと思ったし、決して言語化できなくても、見た人がそう感じてくれたらいいなというのがまずあった」とも明かしていて、それは黒澤監督の映画ように「字を前に立たせる」というアイデアにもつながっている。
多田さんは、「大河ドラマのオープニングでワクワクするのは、登場人物と出演者の名前。極端な話、背景をしのぐような力を感じる時がある。そのほかにも脚本家や演出、剣術指南とか、他の番組ではありえない多くの人間が関わって作られるという熱量が、ズドン!と分かるのが一番かっこいいと思ったんです」と意図を語ってみせた。
映像はすべてハイスピードカメラで撮影された。出だしは光秀(長谷川さん)の顔のアップからで、目を見開き、一点を見つめる表情には光秀の「決意」が込められている。光秀の「決意」と聞いて、歴史ファンが想起するのは、やはり主君・信長を討った「本能寺」だが、続く馬が駆け抜けていくシーンにも、やはり「本能寺」を想起させるような「炎」が印象的に使われている。
炎はCGではなく本物。多田さんも「光秀と言ったら『本能寺』。第1回でも火事の描写がありましたが、光秀と炎って非常に結びつきが強いもので、最終回に近づいていくにつれ、あの炎がだんだんとシリアスになってくれば」と思いを明かす。
馬に騎乗する武将は光秀と言うが、「戦乱の世を走る光秀は果たしてどこに向かっているのか。基本的には“ラスト”ではあるのですが、それが『本能寺』なのか、乱れた世を平らかにしようと走っているのか、それは見ている人に委ねたいと思います」と多田さんは語っていた。
映像の中で、馬で走っているところ以外は光秀の心象風景という。聖なる獣「麒麟」の到来を求めて、森の中でたたずむ光秀の後ろ姿にさらにカメラが寄ると、うっすらと見えるとか、見えないとか、すでに話題になっている“隠れ麒麟”だが、「神秘的な聖獣である麒麟が、どういったものなのか。想像をかき立てるものがあってもいいな」とCGで描かれた麒麟の体の一部がシルエットで挿入されているのも、心憎い。なお、余談ではあるがCGで描かれた麒麟の全体像は存在し、多田さんも「いつかお見せすることができたら」と笑っていた。
そんな多田さんが明かすには、再び燃えさかる炎をバックにした終盤の光秀の叫び(音声は入ってない)は長谷川さんによる「アドリブ」。実は入れない選択肢もあったといい、「単体で見ると絶対に入れたほうがいい。ただ、このオープニングの映像で、登場人物が何かを表現しているところはほとんどないので、そこだけ何て言っているのか、言葉が聞こえてくる可能性があった」とのことだが、最終的には採用した。
果たして、長谷川博己“光秀”は何と叫んでいるのか……。さまざまな示唆に満ちたオープニングタイトルバックを何度も見直しながら、想像を膨らませることで、今後の「麒麟がくる」がより一層楽しみになることは間違いなさそうだ。
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