モンスター
#11 求める者たちへ
12月23日(月)放送分
「青色になったり、黒色になったり、作品ごとに色を塗られていくというか。そう考えると、俳優は白色でいることが必要なのかなあというのは、ずっと考えてはいますね」。こう語るのは、金曜ドラマ「恋する母たち」(TBS系、金曜午後10時)で、吉田羊さん演じるキャリアウーマンの林優子の部下・赤坂剛を演じている俳優の磯村勇斗さん(28)だ。磯村さんといえば、あるときは金髪ヤンキー、あるときは見習いコック、“サウナー”に、わがままな性格の美少年……などなど、作品によって印象がまるで違う。そんな磯村さんに演じるときに心がけていることや、俳優業への思いを聞いた。
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磯村さんは、1992年9月11日生まれ。静岡県出身。中学生の頃、自主制作の映画を作ったことがきっかけで、俳優業を意識するようになった。2015年、人気特撮ドラマ「仮面ライダーゴースト」で、仮面ライダーネクロムに変身する青年・アランを演じ、注目を集めた。
NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ひよっこ」(2017年放送)では、見習いコックのヒデこと前田秀俊役、ドラマ「今日から俺は!!」(2018年放送、日本テレビ系)では、主人公のツッパリコンビの前に立ちはだかる、開久高校の“最強最悪”コンビの一人、相良猛役を演じて話題になった。
その後も、俳優の西島秀俊さんと内野聖陽さんのダブル主演の連続ドラマ「きのう何食べた?」(2019年放送、テレビ東京系)で、“ジルベール”こと井上航役、サウナをテーマにしたドラマ「サ道」(2019年放送、同局系)で、ピュアサウナー“イケメン蒸し男”役、ドラマ「TWO WEEKS(トゥーウィークス)」(カンテレ・フジテレビ系)で“謎の殺し屋”役など、数々のテレビドラマ、映画、舞台作品に出演している。
作品ごとに見せる顔が全く違う磯村さんについて、SNSでは「役の振り幅がすごい!」「同じ人なのかと疑うレベル」などのコメントが上がっている。そんな磯村さんが、演じる上で大切にしていることや、譲れないポイントはあるのだろうか。
「うーん? どんなところですかね?」としばらく思いを巡らせていた磯村さん。「ずっと、作品、役に向き合ってやってきているだけなので、特にそういったこだわりとかないかもしれないですね」と明かしつつ、「俳優が“白色”でいることが必要なのかなぁというのはずっと考えてはいますね」と告白。
「青色になったり、黒色になったり、作品ごとに色を塗られていくというか。だから、いかに自分自身が何色でもなく生活できるか、みたいなところは大切にしているかもしれないですね」
そんな磯村さんは、私生活で役の影響が出てしまうことも「ある」といい、「その(役の)色がなかなかパレットから消えないということはあります。むしろ、ちょっと色を塗っておかないといけないな……みたいなこともありますね」と続ける。
役を演じている瞬間について聞くと、「本当は、本人と役との間になにも溝がなく、一つになって進めるのがおそらくいいんでしょうけど」と話した磯村さん。「毎回毎回、自分をコントロールできるのが理想なのかもしれないですけど、実際はそうではなくて……どこか俯瞰(ふかん)して見ていて」と明かす。
「技術上、俯瞰して見ていないといけないときもあったりはするので、そういうときはちょっと違う自分がいますね。いつもずっと戦っています。(俯瞰して見る自分が)いないでくれって」
「恋する母たち」は、女性週刊誌「女性セブン」(小学館)で2017年から今年7月まで連載された柴門ふみさんの同名マンガが原作。同じ高校に通う息子を持つ、木村佳乃さん、吉田さん、仲里依紗さん演じる3人の母たちの恋愛と友情を描いたラブストーリー。脚本は大石静さん。
磯村さんは、吉田さん演じる優子と深い関係となる赤坂を演じている。会社で突然優子に壁ドンをしたり、出張先で同じ部屋に泊まることになった際には、まさかの全裸で待ち受けていたりして、視聴者をときめかせてきた。11月20日放送の第5話では、優子と別れることとなり、磯村さんが見せた表情の演技に、SNSでは「赤坂くんの切なさが表情だけで伝わる」など絶賛の声が上がった。
ドラマを手がける磯山晶チーフプロデューサーは、磯村さんについて「勘もいいし、お芝居の運動神経が良くて。すごく練習とかしていらっしゃるんでしょうけど、こっちから見るとすごく自然で、『どんなふうにもできますよ』というふうに見えます」と印象を話す。
また、「(磯村さんが)とにかく一番すごいなと思ったのが、『きのう何食べた?』で。顔がいいのに、“笑わせる”ってなかなかいない。しかもかっこいいからウケているのではなく、普通に面白い。笑える“間”がいいというか。それがすごいなと思いますね」と話していた。
今作をはじめ、話題作への出演が続く磯村さんに、俳優業への手応えを聞いてみると、「お芝居を含め、作品に正解がないので、どんなに評価を受けたとしても、それがすべてではないといいますか……」と率直に話す。
「そこ(評価)に甘えてしまうと、もうそこから先はない、下がっていくだけだと思うので、ゴールがないからこそ、追求していかなきゃいけない仕事だと思うんですよね、俳優って。だから満足はできないかな、と思うんですよね」
そんな磯村さんに、演じることは楽しいですか?と尋ねてみた。「う~ん? 楽しい。苦しい。何ですかね? 何とも言えない感情ですよね」と明かす。
「もちろん、コメディーとかは楽しいですけど、作品によっては、やっぱり苦しい。絶望する役が来ると、まったく楽しくないですから。終わった後に達成感だったり、『やってよかったな』って思うときに楽しさが来るというふうに考えると、やっている最中は、楽しくないかもしれないですね。自分の感覚としては」
もうすぐ30代を迎えるが、目標などは特に持たないという。「すてきな先輩っていますし、『そういうふうに自分もなりたいな』と思ったりもしますけど、結局は俳優って個性で、自分自身との闘いではあるので、自分らしく歩んでいきたいなと思いますね。気遣いとか、礼儀みたいなところはどんどん吸収していきたいと思いますけどね」と話す。
撮影現場では、お互いに気持ちよく仕事をするためにも、あいさつや礼儀、人としての最低限のマナー、感謝することを忘れないように心がけているという磯村さん。磯山チーフプロデューサーは、「一緒に仕事すると気持ちの良い人だと思います」と話していたが、今回の取材中も、物腰柔らかく、質問に対して丁寧に答えてくれる姿が印象的だった。
「きっと、なんだかんだ俳優をやっていると思いますね。どこかで道はそれる可能性はあるかもしれないですけど、俳優というのはベースラインとして持っているんじゃないかなとは思いますね」と話していた磯村さん。これからの活躍も楽しみにしたい。
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