宇宙戦艦ヤマト2205:未来がバラ色ではない時代 控えめな人間賛歌を 「3199」はどうなる? 福井晴敏インタビュー

「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」の「後章 -STASHA-」の一場面(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト2205製作委員会
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「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」の「後章 -STASHA-」の一場面(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト2205製作委員会

 人気アニメ「宇宙戦艦ヤマト」シリーズの最新作「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」の「後章 -STASHA-」が2月4日に上映される。「2205」は、コロナ禍の状況とリンクしているという声もあるが、シリーズ構成、脚本を担当した福井晴敏さんによると「コロナが始まる前に本は完成していたのですが、不気味なほど今の世の中とリンクしている」という。「2205」では「未来がバラ色ではない」時代に、あえて「控えめな人間賛歌」「一つずつ前進すること」を描いた。福井さんに制作の裏側を聞いた。

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 ◇人間ってそんなに悪くない

 「宇宙戦艦ヤマト」は1974年にテレビアニメ第1作が放送。「宇宙戦艦ヤマト2」「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」なども制作されてきた。第1作をリメークした「宇宙戦艦ヤマト2199」が2012~14年、「2199」の続編「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」が2017~19年に劇場上映、テレビ放送された。「2205」は、「2202」に続き、福井さんがシリーズ構成、脚本を担当。「前章 -TAKE OFF-」が2021年10月に上映された。

 「2205」は大作となった。「宇宙戦艦ヤマト」の世界の歴史の秘密がひもとかれ、人類とは?国家とは?民族とは?と考えさせられるところもある。壮大なテーマにも見えるが、福井さんは「シンプルなんです」と語る。

 「悲しいことがいっぱいある時代だけど、人間ってそんなに悪くない……と最後に浮かび上がるようにできれば、とシンプルなんです。素晴らしいとは言い切れない時代ですが、ちょっとしたことの中にでも希望や救いを少しずつ見いだして、何とか前進する気持ちを忘れずにいよう。我々には、その価値があると。すごく控えめな人間賛歌なんです」

 ただ、絶望しているだけでは前進できない。「2205」は希望の物語でもある。

 「いろいろな世代に見てもらいつつも、『宇宙戦艦ヤマト』をコアで支えてくれているファンの方は人生でいろいろ経験をしている世代ですし、いろいろなことが覆される経験もしているはずです。昔の『宇宙戦艦ヤマト』は、時代的にも未来に対する揺るぎない信頼がありましたが、今は未来がバラ色では済まない。でも、『宇宙戦艦ヤマト』であるからには、人間への賛同の意を示したい。若者が未来に恐怖を覚える時代ですし、生きていく道筋に懐中電灯くらいの光を照らし、次の足場を定めていくことしかできない。でも、光の温かさを描きたかった」

 コロナ禍で先行きが見えないこの時代とリンクしたところもある。

 「あらゆる喪失の中でどうやって立ち向かうのか? デスラーは支えを失います。でも、思いだけで行動する。愚かだけど、人間のいいところでもあります。それを応援できるのは、いいことだと思います。インターネットは、得する情報、利口になる方法であふれているけど、それだけでは人生が痩せていきます。自分たちがどこに足場を置いて、何を芯にするのか?を見つめ直せる話になればという思いがありました」

 ◇「宇宙戦艦ヤマト」のコアを煮詰める

 後章では、イスカンダルとガミラスの関係の真実が明らかになるなど衝撃の展開が待ち受けている。「2205」は「宇宙戦艦ヤマト」らしさがありつつ、新しさもある。そのバランスが絶妙で、「宇宙戦艦ヤマト」の魅力を再発見できるような作品に仕上がっている。

 「人間は時代によって変わる。これまでのシリーズの古代は何だかんだと守られていたけど、『2205』の古代は、誰も守ってくれない。雪だけがわずかな支えになる。終身雇用が揺るぎない過去の価値観と、今の価値観の違いでもあります。今回は、そこを突き詰めました。イスカンダルとガミラスの真相を聞いて、ええ!?となりつつ、そうだよな……と思うはず。元々の作品から全く外れるのではなく、守っているものもあります。『宇宙戦艦ヤマト』には、コアとなるものがあり、価値の再発見をしようとしました。懐古主義としてやると、閉じてしまうけど、コアを煮詰めて、何が残るか?を考えた。人間は戦争をやめられないけど、人間はそんなに悪くないもんだと。そこがよさでもある。それが言いにくい時代にどんどんなっているけど、言っていく」

 言いにくいことをあえて言うのは難しいことだ。「2202」に続き、今の時代に言いにくい「愛」というテーマにも挑んだ。

 「愛では切り抜けられない危機になっている。でも、薮(助治)もデスラーも古代進も“あの顔”で最後を迎えます。人間に唯一できるのは、一つずつ前進すること。立ち止まってしまい、どうにもならないと思っている人もいるかもしれませんが、止めていた足を動かしていただけると本望です」

 「2205」の続編となる「ヤマトよ永遠に REBEL3199」の制作も発表された。

 「当初は『新たなる旅立ち』以降は原作シリーズから離れてもいい、という話もあったのですが、むしろ、沿っていくことが大事だと考えていました。『永遠に』もその基本方針から外れません。でも、順番が変わる、シャッフルは起きるかもしれません。全く違うものにはならないとは思います。ただ、度肝を抜かれると思いますよ」

 「2205」でも度肝を抜かれたが、一体どうなるのか!? 今後の展開からも目が離せない。

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