荒川弘さんの人気マンガ「鋼の錬金術師(ハガレン)」の実写映画シリーズの最新作が、二部作「鋼の錬金術師 完結編 復讐(ふくしゅう)者スカー/最後の錬成」(曽利文彦監督、5月20日、6月24日公開)として公開される。「鋼の錬金術師」は、エドワード・エルリック(エド)とアルフォンス・エルリック(アル)の兄弟が、失った体を取り戻すため「賢者の石」を探す旅を描く。今作は連載20周年を記念した新プロジェクトの一環で、2017年に公開された実写映画の続編にして完結編。前作からエド役を続投する「Hey! Say! JUMP」の山田涼介さんに、作品やエドというキャラクターに懸ける思いを聞いた。
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二部作の前編「復讐者スカー」は、かつて軍によって滅ぼされたイシュヴァールの民の復讐のために、すべての国家錬金術師の抹殺を誓う“傷の男(スカー)”(新田真剣佑さん)が、エドと相対する……というストーリー。後編「最後の錬成」は、ホムンクルス(人造人間)たちの生みの親“お父様”との戦い、その後のエドとアル(水石亜飛夢さん)、仲間たちの物語が展開し、原作の最終話までが描かれる。
続編をやりたいという話は、前作の時点で監督ともしていて。コロナなどもあってなかなかできませんでしたが、ようやく撮影ができるとなった時、すでに心の準備はできていました。前作の時から続編を撮るとしたら、クライマックスのバトルシーンは自分がやるだろうと原作を見て思っていたので、クランクインまでの約半年間、毎週4~5日ジムに行って筋トレしていました。
どの作品でも原作ものにはいろんな声があると思うし、スタッフやキャストがそれを受け止めた上での二部作です。だからこそ前作で思った「もっとこうした方が良くなるのでは」という改善点などは、撮影前や現場で監督ともお話しさせていただきました。
1作目は「鋼の錬金術師」を知らない方にも見ていただくため、原作もアニメもそうだと思いますが、人物紹介的な部分から始める必要がありました。ハガレンの良さであるアクションやド派手なものを削ってでも、なぜこういう物語なのかを説明しなければならず、描き切れない部分が多かった。続編である今回は、冒頭からアクションをガンガン入れて、「ハガレンは疾走感のある人間物語であることを伝えてもいいのでは」というのが監督やプロデューサー、僕も含めたチーム全員の総意でした。
細かい部分に関しても、演じるからこそより良くしたいという思いから気づいたことは提案させていただきました。演者でもあり(ハガレン)ファンでもあって原作にリスペクトがあるので、できる限り寄せていきたい。そういうところはみんなで話し合いましたね。
いちずというか、弟の体を取り戻すためには自分が悪魔になってでもやり遂げるといった“芯”を持っている部分ですかね。10代から過酷な十字架を背負って、自分の体をボロボロにしてまで弟の体を取り戻そうとするのは難しいこと。そのブレないところですね。
あとはエドが強くなりすぎないところも良さの一つ。ヒーローは成長していく過程でめちゃめちゃ強くなる瞬間があると思いますが、エドは人間だからそれがない。そこがやっぱり荒川先生のすごいところだなって。ブレずにエドワード・エルリックの成長や人としての物語を描いているのがハガレンの魅力ですかね。エドのカッコいいところ。泥臭さというか応援したくなるところも魅力です。
ブレずに一つのことに向かって走り続ける姿勢はカッコいいし、演じていても「すごいな」と思う瞬間がたくさんありました。男として尊敬するというか、年齢を問わず背負っているものの大きさで、その人の人柄や芯の部分が見えてくるのは強く感じましたね。
小さいことかな(笑い)。本当に背が小さくて良かったなって、この作品をやって思いました。内面で言うと、僕もブレないタイプではある。エドほど重いものは背負ってはいないですけど、自分もブレずにやってきているつもりです。共通点はないと思いますが、ブレない姿勢は共通点になるのかもしれません。
そうなんですかね。今さらほかの人を想像するのは、自分はもう無理ですけどね(笑い)。どの作品も巡り合わせですからね。
う~ん……難しいけど、エドです。それ以外ないですね。エドはエドだし、僕は僕。それ以上でも以下でもないですね。
一番話したのは内野さんだと思います。撮影が始まる前から気にかけてくださり、初共演で親子の関係性をどう築くかについてアプローチをかけていただきました。「親子だからもっと来ていい」「遠慮しなくていい」など関係値をしっかり作りたいという熱い思いが伝わってきて、現場でもよく話し合いました。
何もなしで対面したら萎縮してしまうと思うし、少なからずそれが芝居に出てしまう。ホーエンハイムの若いころも僕は演じているので、内野さんを演じないといけなかった。なのでしゃべり方の癖とかはずっと見ていました。
海外でも撮影できた前作と違い、グリーンバック撮影が主だったので、前作に参加されていない方には監督が描いた絵コンテをもとに、「ここは多分こういうふうになります」といった説明をしたり、内野さんとはイメージとしてハリウッドのCG作品の動画を一緒に見たりもしました。
--前作で経験があることや主役としての責任感という部分が大きかったのでしょうか。
そうですね。もちろん監督がいらっしゃいますが、自分も座長として立たせていただいているので、皆さん先輩ですがそこは関係なく、説明できる人がしていかないと前に進めない。という思いで遠慮せずにやらせてもらいました。
正直めちゃくちゃ大変でした。監督から「山ちゃん、これできる?」みたいな難易度の高いアクションも要求されましたが、それに応えたくなる監督です。ハガレンだからできたというか、曽利監督だからできた部分はあると思います。
自分の活動を通してグループを知っていただけたらという思いは常にあって。この作品が見てもらえる、イコールHey! Say! JUMPの存在を知ってもらえることなので、還元できているのはうれしいですね。出たいから出られるものでもありませんから、こういう作品に出させていただけると毎回「自分がやってきたことは間違いじゃなかった」と確認できますね。
1人1人のキャラクターのバックグラウンドがちゃんとあるところも魅力かな。なぜこの人はこうなってしまったのかまで描き切っていて、だからこそそれぞれのキャラクターのファンがたくさんいる。「私はこのキャラが好き」など感情移入するキャラクターがたくさんいることが、幅広い層から愛される要因の一つだと思いますね。
選ぶのが難しい! もしやれるならやってみたい、というキャラなら、絶対無理だけどブラッドレイ。キャラクターとしてカッコいいし、舘(ひろし)さんがやっているからカッコよく見えているのもあって、カッコよすぎてズルいですね。存在感があるので、自然と背筋が伸びました。舘さんだから説得力があるけど、僕が演じてもみんな背筋は伸びないのでは(笑い)。舘さんで良かったです。
“よりハガレン”に、“洗練されたハガレン”になっていて、二部作はハガレンの本質の部分、ファンの方が見たいところを描けていると思います。僕も台本を読みながら「ここをやるんだ。うれしいな」「この人も出るのか」と感じた要素も多く、ファンの方にも安心して見ていただけるのでは。芝居の部分もみんな作品への理解が深まったことでさらに進化していますし、より感情を入れやすい作品になったと思います。(取材・文:遠藤政樹)
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