原泰久さんの人気マンガを俳優の山崎賢人さん主演で実写化した映画の続編「キングダム2 遥かなる大地へ」(佐藤信介監督、7月15日公開)で、羌象(きょうしょう)役を演じる女優の山本千尋さん。羌象は、1000年を超える歴史を持つ伝説の暗殺一族・蚩尤(しゆう)の一人というキャラクター。清野菜名さん演じる羌カイが姉のように慕う女性だ。中国武術の世界大会での優勝経験を持つ山本さんは、鍛錬の日々を重ねてきた自身と羌象につながるものを感じたという。山本さんに「キングダム」の魅力や羌象役で意識していたこと、清野さんとの撮影エピソードなどを聞いた。
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「キングダム」は、2006年からマンガ誌「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載中の人気マンガ。コミックスの累計発行部数は9000万部以上。中国の春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍を目指す信や、後に「秦の始皇帝」となる秦王・エイ政たちの活躍を描く。2019年公開の前作「キングダム」の続編となる今作では、天下の大将軍へ夢の第一歩を踏み出した信(山崎さん)の初陣となる“蛇甘平原”の戦いを描く。
以前「キングダム」の原作連載十周年記念の実写特別動画で羌カイ役をさせていただいたときに読み、その魅力にはまって新刊が出れば読む、という形で楽しみにしていました。王道な部分もありながら、成長物語や復讐(ふくしゅう)劇も詰め込まれていて……戦国の世で男性が刀を交える中で、女性も強くないと生きていく手段がない、という残酷でありながらどこか美しくもある世界観。最初に実写化されたときはものすごく面白かったです。原先生が描く「キングダム」は、キャラクター一人一人に重みやストーリーがあり、きっと相当な愛がないと描けないと思うんです。それを実写化したスタッフさん、作り上げたキャストのみなさまはもっと大きな愛でお返ししていると思うので、自分も強く入り込まないとな、と思いました。
原作の羌象は強さはもちろん、騒乱の世界で女性が戦う、ましてや妹のような存在の羌カイまで守っている。ものすごく大きな覚悟と運命を背負っていると思いました。やっぱり彼女の強さは内からくるものがあったと思う。私自身も3歳から中国武術をしていたので、そんな鍛錬の日々が羌象とつながり……。彼女の強さに、どこか自分の培ってきた中国武術と反映できる部分がないかなと思いました。きっとここが私の導かれるものだったのではないかな、と……羌象とどこか似ているものが自分にはあると、恐縮ながら思っていました。
羌象には、自分の命よりも大事な妹がいる。私にも姉がいて、家族の中で誰よりも幸せになってほしいと思っているんです。だからなんとなく姉妹の愛というものも分かりますし、羌象という「キングダム」の登場人物の一人に選んでいただいた運命というものに、恐縮なのですが、私自身もすごく納得できるものがあって……。選んでいただいたときは「羌象(の演技)がしたい」と思いました。羌カイが尊敬し、羌カイより強いと言われていた羌象の存在は、きっとこれからも清野さん演じる羌カイの生きていく道の中で、すごく大事な存在になる。そうなりたい、と思っていたので、演じるうえでは“内なる強さ”というものを意識していました。
2人とも人見知りで、お互いにめっちゃ頑張って話してみた、という感じでした(笑い)。でも、清野さんは短い撮影期間の中でずっと私と話しながら、象姉と羌カイの心理的物語の背景を探ってくれていたと思うんです。プライベートなことまで話してくださって、「私はこういう子なんだよ」と話してくれていた気がします。羌カイと羌象の距離を縮めるためにもあえて話してくれていたのかな、と。だから清野さんの無邪気な姿やひた向きに頑張る姿に私自身、すごく愛着が湧いていました。現場での清野さんの存在が、羌象という女性が守るべきものの大切さを教えてくれていたと思います。
もちろん知っていましたが、こんなに清野菜名さんという一人の女性のプライベートな部分や内の部分に触れられる機会はなかったので、この出会いに感謝したいなと思っています。
そもそも原作の原先生の愛もそうですけど、実写も並大抵の愛ではなかなか作りあげられないと思うんです。役者の熱量もそうですし、「実写はお任せします」という原先生の大きな心にも私はすごく感動します。その原先生の思いを背負ったキャスト陣や佐藤監督をはじめとするスタッフのみなさまの大きな力と愛は、本当にすごいことだと思います。私もサブスクは好きですが、「キングダム」はやっぱり映画館で見てほしい作品。自分が出演していなくてもそう思うぐらい、素晴らしい作品だなと思います。
山崎賢人さん演じる信のさらに成長した姿や、考えていたよりいかに現実は厳しいかとか、そしてその世界で生きていくためにはどういう運命を背負っていかないといけないのかとか……。信や羌カイのように、一番大切に思っている人を亡くした子たちの「自分が強く生きていかないといけないんだ」という志を大きく表現しているのが「キングダム2」だと思います。
※山崎賢人さんの「崎」は「たつさき」
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