海のはじまり:「伝わらないことを怖がらない」せりふ選びのこだわり プロデューサーが大事にする「silent」紬の言葉とは

連続ドラマ「海のはじまり」の村瀬健プロデューサー
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連続ドラマ「海のはじまり」の村瀬健プロデューサー

 人気グループ「Snow Man」の目黒蓮さん主演のフジテレビ系“月9”枠の連続ドラマ「海のはじまり」(月曜午後9時)。心に響くせりふの数々や、細やかな心理描写、隅々まで練られた設定など、丁寧に紡がれた物語が話題を呼んでいる。「いろんな人がいるということをいつも意識して、生方美久さんの脚本を世に送り出しています」と語るプロデューサーの村瀬健さんに、せりふ選びのこだわりについて話を聞いた。

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 ◇脚本・生方美久は「類まれな才能の持ち主」

 ドラマは、脚本・生方さん、演出・風間太樹さん、プロデュース・村瀬さんと、目黒さんが出演した「silent」チームが再集結し、親子の愛をテーマに描く完全オリジナル作品。亡くなった昔の恋人、南雲水季(古川琴音さん)との間に、血のつながった6歳の娘・海(泉谷星奈ちゃん)がいることを突然知らされた月岡夏(目黒さん)と、今の恋人・百瀬弥生(有村架純さん)ら周囲の人々を描く。

 「silent」「いちばんすきな花」に続き、本作でもタッグを組んだ生方さんの脚本について、村瀬さんは「生方さんは類いまれな才能の持ち主。たくさんある言葉の中から、彼女が選んできているものが珠玉のせりふなので、僕や監督が『もっとこうしよう』と直すことはあんまりないんです」と話す。

 せりふのこだわりを聞くと「いろんな考え方を持った方がドラマを見てくださっているわけですから、伝えたいことが伝わらない、分からないということはそんなに怖がってはいません」と前置きし、「ただ、誤解される言い方はやめよう、というのはいつも話しています。狙っていること、伝えたいことが伝わらない分にはいいけれど、それを違うふうに捉えられてしまうのであれば、その言い方はやめようと生方さんといつも話しています」と明かす。

 「人の心をこれだけ丁寧に描いていると、ある瞬間に違うふうに捉えられてしまった場合、その後のその人物の感情が全て違って見えてしまう、ということもあります。そこはものすごく意識していて、どうしても気になったせりふがあった時は、『こう捉えられちゃうかも』『だとしたら、このせりふは考え直しましょう』というような話し合いを常にしています」

 ◇「いろんな人がいる」ことを念頭に置いた作品作り

 そんなふうにせりふを作り上げていく中で、村瀬さんが大事にしている“ある言葉”があるという。

 「『silent』で、主人公の青羽紬(川口春奈さん)が口にした『“少ない”っているってことだもんね』という言葉を、僕はドラマを作る上で大事にしています」

 このせりふは、「silent」第7話で登場。もともと耳が聞こえていた人は手話を使わず、声を出してコミュニケーションを取ることが多いと知った紬は、中途失聴者の佐倉想(目黒さん)に、どうして声を出さないのか尋ねてしまう。紬は「多いってだけで、それが普通なんだって思い込んじゃって。それで佐倉くん、何でなんだろうって気になって聞いちゃって。“少ない”っているってことだもんね。いるよね、いるのに」と反省した。

 村瀬さんは「『いちばんすきな花』でも描かれていましたが、みんな何かを決めつけたがる。先入観や知識で決めつけたがるけど、そうではない、そうじゃない人もいる。いろんなパターンがあって、いろんな人がいるということ、これは生方さんの描くテーマの一つでもあると思っています。『“少ない”っているってことだもんね』ということをいつも意識して、生方さんの脚本を受け止めて、世に送り出しています」と語った。

 実際に放送を通じて、視聴者からは「せりふが胸に刺さる」「せりふのひとつひとつが丁寧で優しくて、時に考えさせられる」といった声が上がっており、制作陣のこだわりがしっかりと届いている。異例の全12話という長さで描かれるドラマも残り1話。夏や弥生にどんな展開が待ち受けているのか、繊細な物語をじっくりと味わいながら、最後まで見届けたい。

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