解説:“第一声”から視聴者を引き寄せる 「べらぼう」水樹奈々ら声優起用に見る「適材適所」のキャスティング

大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で智恵内子を演じる水樹奈々さん (C)NHK
1 / 1
大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で智恵内子を演じる水樹奈々さん (C)NHK

 俳優の横浜流星さん主演のNHK大河ドラマべらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(総合、日曜午後8時ほか)。5月25日放送の第20回「寝惚(ねぼ)けて候」では、歌手で声優の水樹奈々さんが登場し、視聴者の注目を集めた。演じるのは、天明期の女性狂歌師・智恵内子(ちえのないし)。江戸のポップカルチャーと現代とをつなぐ、「適材適所」のキャスティングと言えるのではないだろうか。

あなたにオススメ

 ◇「声優・歌手としての活動と繋がる部分多々あり」と水樹奈々

 「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」は64作目の大河ドラマで、日本のメディア産業やポップカルチャーの礎を築いたとされる蔦屋重三郎(略して“蔦重”)の生涯を描く。脚本は一昨年、NHKで放送され、大きな話題となった「ドラマ10『大奥』」などで知られる森下佳子さんが手掛けている。

 声優としてのキャリアは20年を超える水樹さんだが、大河ドラマに出演するのは今回が初。演じるのは、湯屋の主人・元木網(ジェームス小野田さん)の妻・すめ。狂名“智恵内子”としての側面を持つ。夫とともに天明狂歌をけん引する。蔦重(横浜さん)とは、大田南畝(桐谷健太さん)や夫・元木網などが参加する狂歌の会で知り合い、親交を深めていく……という役どころだ。

 4月の出演発表の際には「『まさか私が大河ドラマに!?』と、お声掛けいただいた時は本当にビックリしました」と明かしていた水樹さん。

- 広告 -

 一方で「智恵内子は数少ない女性狂歌師で、キレがあり、ユーモアのセンスあふれる歌を詠むことで身分を超えてさまざまな人々とつながり、娯楽の少ない時代に笑顔になれる楽しみを夫や仲間と共に生み出していました。言葉を伝える、歌でつながり笑顔を届けることは、声優・歌手としての私の活動と繋がる部分が多々あり、とてもご縁のある役」とも語っていた。

 ◇さらなる活躍に期待を抱かせるには十分だった“第一声”

 そんな水樹さんの大河デビューとなった注目の「べらぼう」第20回。同回では、近頃人気が出ている“狂歌”を知った蔦重が、南畝からの誘いを受け、「狂歌の会」へとやってくる姿が描かれた。

 水樹さんは、その「狂歌の会」のシーンで登場。「本日の判者は四方赤良(南畝の別名)先生です。先生いかがでしょう?」とのせりふもあり、SNSでは「奈々様きた」「奈々様だ!!」「水樹奈々様、見た目も声も素敵」などと反応。「またやけに声の良い女狂言師が」「水樹奈々先生、お声良過ぎ」といった声が次々と上がった。

 結局、第20回での出番は上記のワンシーンのみとなったが、“第一声”から視聴者を引き寄せるあたりは、「さすが」の一言。今後のさらなる活躍に期待を抱かせるには十分だった。

 ◇寄り合いシーンで毎回ファンを楽しませてくれる地本問屋メンバー

 ちなみに同回には、寄り合いシーンで毎回ファンを楽しませてくれる地本問屋メンバーとして、中井和哉さん、関智一さん、高木渉さん、松田洋治さんも引き続き出演するなど、ちょっとした“声優祭り”に。岩戸屋役の中井さんは、蔦重と交流する様子が描かれ、これまで以上に出番は多めとなっていた。

 近年、決して珍しくはない声優の大河ドラマ出演。2016年の「真田丸」での活躍から、先駆者の一人として語られがちな高木さんは「べらぼう」が3作目、関さんは2022年の「鎌倉殿の13人」に続き、2作目となる。

 昨年の「光る君へ」では、「ロバート」の秋山竜次さんや「はんにゃ.」の金田哲さん、矢部太郎さんといった芸人がレギュラーキャストとして活躍し、話題となったが、「べらぼう」は、第14回に奉行役で登場した井上和彦さんのようなスポット参戦も含めて、声優起用の当たり年となる、そんな予感がする。

テレビ 最新記事