緊急取調室 (2025)
第8話 紫の旗
12月11日(木)放送分
俳優の波瑠さんと川栄李奈さんダブル主演のTBS金曜ドラマ「フェイクマミー」(金曜午後10時)に出演中の田中みな実さん。夫・慎吾(笠松将さん)の顔色を窺う控えめな本橋さゆりを演じている。第6話(11月14日放送)では、これまで仲良くしていたママ友・薫(波瑠さん)のあいさつを無視する様子が描かれ、視聴者からは「キター! 田中みな実はこうじゃないと」という声が上がった。田中さんに、さゆりを演じるにあたって意識したことや、共演者とのエピソードを聞いた。
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ドラマは、シナリオコンクール第1回「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」で大賞を受賞した園村三さんの受賞作を連ドラ化。突発的に会社を辞め、転職に苦戦していた花村薫はベンチャー企業「RAINBOWLAB」の面接を受けたことをきっかけに、社長でシングルマザーの日高茉海恵(川栄さん)と出会う。茉海恵から、名門私立小学校を受ける娘・いろは(池村碧彩ちゃん)のため替え玉として親子面接を受けてほしいと頼まれ……というストーリー。
特にお子さんがいらっしゃる友人から、「ストーリーがとても面白いね」や「これから先、どうなるの?」と連絡をもらうことが多いです。お受験を控えている友人からは「服の感じとかリアル」という声も。
お受験の日が近づくにつれ、お子さんよりもむしろ、お父様、お母様のほうが緊張感のあるお顔つきになられていった印象です。先生がおっしゃることに真剣に耳を傾け、わずかな情報でも取りこぼすまいと、熱心な親御さんが多かったです。この作品においては、我が子のジーニアス留学制度の特待生として選出されるか否かで、さゆり含め、母親たちがナーバスになっていく様子が描かれるので、近しい状況を間近で見てきた経験が役を演じる上でヒントになりました。
衣装のフィッティングの際、「紺の服ってこんなにあるんだ」と驚くほど、ずらーっと、見事に濃紺の洋服が並んでいました。黒いストッキングは正式にはNGとか、ヒールの高さや、つま先がとがっていない靴のほうが好ましいなど、細かな決まりがたくさんあることを知りました。そうした暗黙のルールを知ることができて面白かったです。
それぞれの作品によって、母親と子どもの距離感がまるで違うのが興味深いなと思いながら丁寧に準備をしています。「フェイクマミー」の本橋家においては、子どもにプレッシャーを与え続ける父親の影響で形成された圭吾のキャラクターがはっきりとしていたので、母親であるさゆりの役割や圭吾との接し方が自然と決まっていきました。
さゆり自身のキャラクターとしては、家柄がよく、愛情をたっぷり受けて純粋に育ってきたお嬢さんだと感じたので、他人の悪意などに触れずに生きてきたんだろうなという、おっとりとした、監督の言葉を借りると“やや天然”な空気を大切にしていきました。
さゆりは意地悪な側面を持ち合わせていないと思っていて、だから、皆さんが期待されるような“豹変”みたいなことはおそらくないんです。ママ友同士の揉めごとが起きた時にも豹変することは考えにくいなと思っていて。普段あまり多くの人に心を開かないタイプのさゆりにとって、信頼していた人たちからの裏切りや、自分だけ知らなかった事実は怒りではなく喪失感として胸にのしかかります。傷ついたこと、裏切られたような気持ちになったこと、そして夫からの圧力、あらゆることに絶望して、自分でも思いもよらない行動に出てしまっているような気がします。
さゆりは根っからの、とても良い人で、意地悪になりきれない。自分の感情に押しつぶされそうになりながらも、立っていなければならない状況で薫さんに冷たく振る舞うという、その葛藤を丁寧に演じられればと思い、見せ方や見え方を監督とはよく話し合いました。
私からは「さゆりがいわゆる“豹変”したかのように見せたいのは分かるけど、彼女の心情や性格を鑑みれば、わかりやすく意地悪になっていくのは違うかもしれない」とお話しました。
多分、憧れているんだと思います。思ったことをはっきりと言えて、同調圧力に気圧されず「違うことは違う」と言える。彼女の正しさや凛とした姿はさゆりにとって希望でもあるのかなって。さゆりにとって薫は、ヒーローのような存在なのかもしれません。
波瑠さんは「こんなに美しい人がいるんだ」というのが第一印象で、それから月日がたっても、日々その美貌に息をのんでいます。本当にびっくりするほどきれいなんです。ご一緒するシーンが多いので、撮影現場で一番お話するのが波瑠さんです。聡明で博識で、知れば知るほど魅力的です。薫役は凛とした波瑠さんにぴったりだなと勝手ながら思っています。
「アハハハハハ~」と底抜けに明るい笑いが聞こえてくると、「あ、今日は川栄さんがいらっしゃっているんだな」と分かるほど、川栄さんはいつでも笑っていて、現場を朗らかな空気で包み込んでくれます。私はご一緒するシーンが多くはないのですが、落ち着いたらもっとたくさんお話をしてみたいです。
(中村)蒼くん(佐々木智也役)は、ずっとそこにいるんじゃないかと思うくらい、その役を真っすぐに全うされる方。“大地”のような存在です。小学校教師として教室にすっかりなじんでいて、児童たちと一緒にいる姿にもまったく違和感がなく、授業参観のシーンでは、教壇に立っている姿が堂に入っていました。「ギークス~警察署の変人たち~」(2024年、フジテレビ系)でご一緒した時は刑事役だったのですが、その時もまるで本物の刑事のように役が染みついていたので、どんな役を演じていても説得力のある方だなと思っています。
野呂(佳代)さん(九条玲香役)とは、意外にも共演が(バラエティー番組含め)なく、今回初めてこんなにご一緒させていただきました。間合いやオフセリフなども完璧で、野呂さんにしかできない技だなと、モニターにかじりついて見入ってしまいます。
笠松くんには、芝居のことで相談に乗っていただいたり、慎吾とは対照的で、よく笑い、面倒見のいいお兄さんです。年齢は笠松くんのほうが下ですが、とても頼りにしています。笠松くんとのシーンはいつも楽しみなんです。どんなふうに演じられるのかが想像できなくて、意表を突かれてばかり。ワクワクします。
笠松くんは、お話していて本当に芝居が好きなんだなと言葉の端々から感じさせられます。私よりもずっとずっと経験も実績もおありなのに、意見を聞きたいと時間をとってくれます。「どう思いますか?」「田中さんはどう考えていますか?」って。
「本当に素人の意見ですから~」と逃げ腰になる私に、「何年やってるんですか(笑)!」って喝を入れてくれたり、「私“なんて”」という弱気な発言には「やめましょう、そういうの」「僕は田中さんのこと俳優として見ていますよ」と、自信を与えてくれます。俳優として対等に接してくださり、一緒に作品を作り上げていく実感がありました。笠松くんのリアルで細やかな芝居は近くでみていて本当に勉強になるんです。
あおちゃん(池村さん)は撮影現場の天使ちゃんで、みんなを幸せな気持ちにさせてくれます。魔女の格好をして「ハロウィンのお菓子、はい、どうぞ」ってお菓子をくれた時はとろけそうでした。
りゅうくん(高嶋さん)は努力家。しっかり台本を読み込んできて、セリフもばっちり。二人っきりのシーンの時は甘えん坊さんでかわいいです。
シール帳の話になった時に、あおちゃんが「今度、交換しよう」と誘ってくれて。私のシール帳を見て、目を輝かせながら「かわいい! あおちゃんと交換しよう」と言ってくれたんです。私が「好きなもの、全部あげるよ」と半ば押し付ける形でお渡ししたら、後日、自分のお気に入りのシールをたくさん貼って持ってきてくれて、「これどうぞ!」って渡してくれたんです~。「こんな、大事なのばっかりいただけないよ」と返しても、「ううん、みな実さんっぽいのを選んできたから」ってにっこり。あおちゃんにもらったシールは絶対に誰にもあげられませんっ(笑)!
あおちゃんは共演者だけでなく、スタッフさん1人1人と会話をしていて、名前やあだ名で呼びながらコミュニケーションを取っています。言わずもがな、撮影現場のみんながメロメロです。
私がスタッフさんの名前をまだ覚えきれていない時には、あおちゃんが教えてくれることも。ただ、あおちゃん、親しいスタッフさんはあだ名呼び(笑)。
「どうしたらあんなにいい子に育つんだろう」って波瑠さんと何度か話したことがあります。波瑠さん、可愛いんです! 「私はあおちゃんの成人式に行きたい」「きっと泣いちゃう」「結婚式にも出たいな」って。みんなを虜にしちゃう、あおちゃんでした。
意外と苦手です。仕事では伝えるべきことはきちんと伝え、分かってもらう努力をします。でも、仕事以外の人間関係においては、瞬発的に思ったことを言えなくなってしまいました。30代になったくらいからは特に。誰かに想いを伝えるって、実は骨の折れる作業で……。だから、本当に大切に想っている人にしか分かってもらおうとしなくなりました。
第7話ではあらゆることが動き出します。サマーキャンプでの、ある出来事をきっかけに、これまで薫を取り巻いていた人間模様に大きな変化が訪れます。薫とさゆりの間に不穏な空気が流れる中、ラストシーンでは決定的な事実が明らかになります。
第7話以降の後半にかけて皆さんが期待するような“豹変”みたいなことはないかもしれないけれども、それ以上に複雑な感情がそれぞれにうごめいていくので、その模様にご期待ください。
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