ばけばけ:“糸こんにゃく”で描いた人間の心の機微 もし、弁当の蓋を開けたら? 「ぶち壊しになってしまう」

NHK連続テレビ小説「ばけばけ」の一場面(C)NHK
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NHK連続テレビ小説「ばけばけ」の一場面(C)NHK

 高石あかりさんがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ばけばけ」(月~土曜午前8時ほか)。第9週では、江藤知事(佐野史郎さん)の娘で、才色兼備のお嬢様・江藤リヨ(北香那さん)が登場した。トキ(高石さん)にとって“恋のライバル”的な存在となった彼女を通して描きたかったことを、制作統括を務める橋爪國臣さんに聞いた。

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 ◇現実にいた知事の娘 9割はオリジナルも「資料をヒントに」

 北さんが演じるリヨは、英語も堪能で、松江を訪れたヘブン(トミー・バストウさん)に強くひかれていく。第41回(11月24日放送)で初登場すると、「あなたは私のライバルなのかしら?」とトキに問いかけるシーンもあった。

 リヨを演じる北さんについて橋爪さんは、「説明不要だと思いますが、いろんなドラマですごく良い役をやられていて、NHKでも『どうする家康』などで印象的なお芝居をされていました。心のどこかに持っている業のようなものを出す芝居が素晴らしいと思っていて。今回のリヨ役もまさにぴったりな役だろうと思いました」とキャスティングの理由を明かした。

 リヨのキャラクターを作り上げていく上では「全く想像というわけではなく、全く史実というわけでもありません」と明かす。

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 「実際に当時の島根県知事に娘さんがいらっしゃって、その方が(ラフカディオ・ハーンに)ウグイスを贈ったという記録も残っています。さらに、少しハーンにほれていたんじゃないか……という記録も残っているんです。とはいえ、ここまでガッツリとアプローチをしていたわけでもないと思います。小泉セツさんもそんなにいい感情を抱いていなかったのかもしれないと、そう感じる資料が残っているのでそこをヒントにしながらも、話の内容としては9割以上はオリジナルで、物語を作りました」

 ◇トキの心に無自覚な変化 糸こんにゃく、お弁当を通して描きたかったこと

 そして、第45回(11月28日放送)では、ヘブンとリヨの“ランデブー”が描かれた。「糸こんにゃくがヘブン先生の好物」と錦織(吉沢亮さん)から聞いていたリヨは手作りの弁当を持参。一方のトキは、本当は糸こんにゃくが大嫌いなヘブンのために「ベントウアケルナ」とイラストを書くも、結局渡すことはできなかった。ランデブーでは、リヨがベンチで「お昼にしましょう」と誘うが、ヘブンは「まだおなかは……」といい、最後まで弁当の中身は開けられぬままだった。

 橋爪さんは「あのまま弁当を見せたら、リヨとヘブンはお別れすることになったと思います。でも、あそこで描きたかったのはトキの無自覚な心の変化で、その変化を糸こんにゃくを通して出せるといいなと思って書いたシーンです。それを面白おかしく書けるのが、(脚本の)ふじきみつ彦さん流だと思いますが、あの曖昧(あいまい)な、ひと言では表せない人間の気持ちを高石さんがお芝居で表現してくれたと思います」と高石さんの確かな演技力をたたえた。

 「要するに弁当の蓋(ふた)を開けてしまったら、そのあたりの繊細さがぶち壊しになってしまって、結局答えが出てしまうと思うんです。でも、まだあそこは答えが出ていない段階ですし、リヨですら答えが出ていません。なので、そういう人間の心の繊細さを描いた象徴みたいなものだと思います。まあ、そう言うとかっこいいですが、ふじきさんは多分純粋に面白く書いたんだと思います(笑)」

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