高石あかりさん主演のNHK連続テレビ小説（朝ドラ）「ばけばけ」（総合、月～土曜午前8時ほか）の第47回（12月2日放送）で、視聴者を最も引き付けた場面はどこだったのだろうか？　テレビの前の視聴者が画面にクギヅケになっていた割合を示す「注目度」（REVISIO社調べ、関東地区、速報値）の1分ごとの推移を調べたところ、最高値は午前8時9分の72.3％だった

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　「ばけばけ」は113作目の朝ドラ。ヒロインの松野トキと、その夫となるレフカダ・ヘブンのモデルは、松江の没落士族の娘、小泉セツと、「怪談」などの著作で知られるラフカディオ・ハーン（小泉八雲）だ。ドラマの中では大胆に再構成し、登場人物名や団体名などは一部改称してフィクションとして描くという。

　◇朝から晩まで、石を積み続ける三之丞

　第47回は、松江のあまりの寒さに、ヘブン（トミー・バストウさん）が体調を崩してしまう。ヘブンへのアピールを相変わらず続けているリヨ（北香那）のほか、三之丞（板垣李光人さん）や遊女のなみ（さとうほなみさん）も久しぶりにトキ（高石さん）の前に登場した。

　テレビの前の視聴者のうち、画面に視線がクギヅケになっていた人の割合を示す「注目度」はこの日、中盤に“山”を2回作ったが、どちらも少し意外な場面だった。

　最初の“山”は午前8時5分の70.7％を皮切りに、午前8時6分（70.6％）、午前8時7分（69.4％）までほぼ横ばいで、注目度の高い状況が長く続いたが、一続きの同じシーンというわけではない。

　午前8時5分台は、給金の中から「今月分です」とトキが三之丞に金を渡す場面。生気が感じられない三之丞の様子に不安を感じたのか、トキは尾行すると、三之丞は寺の境内の一角で、石を積んで時間を潰している。僧侶から「ここのところ、朝から晩まで」と教えられ、驚くトキの表情が印象に残る。

　午前8時6分台は、ヘブンが日本や松江の印象について、アメリカに手紙を書いている場面で、手紙の内容をヘブンが読み上げる。傍らでトキが奏でる三味線の音色について「三味線の音色はすばらしい」と絶賛する一方で、松江の寒さについては「とにかく寒い」「凍え死ぬかもしれない」などとあまりに大げさな表現が続き、笑ってしまう。

　午前8時6分台の終盤から7分台は、松江中学校で授業をするヘブンの様子。「サムライの娘を女中にしてよかった」「日本の文化に囲まれて幸せだ」などと、英語で発声し、生徒に書き取らせている。

　午前8時7分台半ばからは、トキが松江の街でリヨに出くわし、いきなり「もうやめてくださらない」と言い渡される場面。トキが「何を？」とけげんそうに聞くのだが、その辺からは午前8時8分台で、注目度は66.0％まで下がる。リヨはトキが三味線や花を生けると自分のアピールが台無しになると怒るのだった。

　◇「ええ顔しちょるもん」

　もう一つの“山”は午前8時9分で、この日の最高値72.3％を記録した。松江に寒波が襲来したある日、トキが歩いていると、遊女のなみに声を掛けられる。女中の仕事は「どげん？」と尋ねられたトキは「言葉もよう分らんし、大変なこともようけあって、ギリギリなんとかやっちょります」。これに対する粋ななみ姉さんの言葉がいい。

　「それって、（私に）気ー使っちょる？」

　この後は午前8時10分台で注目度は65.3％まで一気に低下するが、2人の会話は次第に熱を帯びてくる。「恨みも妬みもしとらんけん、楽しければ楽しいって言ったら」というなみに、トキは「楽しいとは違うかもしれませんが、面白いです」「少しずつですが、距離が縮まっちょる感じがして」と楽し気に語る。その様子を見つめるなみも「やっぱし。ええ顔しちょるもん」とうれしそう。トキとヘブンの距離が少しずつだが、確実に縮まっていることを示した場面だった。

　午前8時11分以降は、体調を崩したヘブンが急きょ、松江中学校から自宅に帰ってくる。布団の中で「もう駄目だ……。もっといろんな国へ行きたかったのに。ここが臨終の地になるとは……」と弱音を吐くヘブンがかわいくも見える。ヘブンの容態が気になる視聴者の思いを代弁するように、注目度は午前8時14分の68.8％まで緩やかに上昇し、エンディングを迎えた。

　活用したデータは、関東の2000世帯、関西の600世帯で番組やCMの視聴状況を調査しているREVISIO社が公表している独自指標の「注目度」。人体認識センサーを搭載した専用機器でテレビ画面に視線を向けているかを常に計測し、テレビの前にいる人のうち、番組を注視していた人の割合を算出している。（文・佐々本浩材／MANTAN）