じゃあ、あんたが作ってみろよ
最終話 不器用な愛で、変われ!
12月9日(火)放送分
俳優の波瑠さんと川栄李奈さんダブル主演のTBS金曜ドラマ「フェイクマミー」(金曜午後10時)の最終話が12月12日に放送される。前回第9話のラストでは、理事会と保護者組織「柳和会」の合同会議に出席した薫(波瑠さん)が、自分はいろは(池村碧彩ちゃん)の母親ではない、と宣言し自首。SNSでは「薫のまさかの行動に涙が止まらない」と話題になった。今作を手がけた中西真央プロデューサー、嶋田広野監督、宮崎萌加監督(崎はたつさき)に、最終回の見どころや撮影の裏話を聞いた。
あなたにオススメ
朝ドラ:来年度後期は「ブラッサム」 主演は石橋静河 モデルは…
ドラマは、シナリオコンクール第1回「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」で大賞を受賞した園村三さんの受賞作を連ドラ化。突発的に会社を辞め、転職に苦戦していた花村薫はベンチャー企業「RAINBOWLAB」の面接を受けたことをきっかけに、社長でシングルマザーの日高茉海恵(川栄さん)と出会う。茉海恵から、名門私立小学校を受ける娘、いろはのために替え玉として親子面接を受けてほしいと頼まれ……というストーリー。
中西P:お二人のお芝居が素晴らしく、皆が絶大な信頼を寄せていました。なによりお二人が演じる薫と茉海恵がイメージそのものであり、正解に思えたので、台本をお渡ししてもまったく心配がなく安心感がありました。それはお二人だけでなく、出演者の皆さん共通していました。
嶋田監督:オリジナル作品だったので、主演のお二人とも一緒にアイデアを出して撮影を進めていきました。特に私の担当回は感情があふれるシーンが多かったので丁寧に相談を重ねていたと思います。
宮崎監督:お二人とも“そのままでいてくれるだけで薫と茉海恵”のような俳優さん。まずはドライ(撮影現場でのカメラを使わないリハーサル)で演じてもらうのですが、それを見るだけでも面白い。そこにこちらが演出を足した時に返ってくる芝居が想像を超えてくるものばかりで、相乗効果が生まれていきました。
中西P:クールなイメージを持っていたのですが、今作ではコメディー寄りなテンポ感でのツッコミやラブコメ的なツッコミなど、とても愛らしい姿をたくさん見せてくださったのがうれしかったです。面白くなるといいなと願って作った台本を、淡々とではなく“乗って”やってくださったのが、薫が愛されるキャラクターになった理由だと思いますし、薫をお願いできて良かったなと感じています。
嶋田監督:「やり過ぎていたら止めてください」とおっしゃってましたが絶妙でしたね。個人的には“名探偵ササエル”(中村蒼さん演じる佐々木智也)へのツッコミの表情が大好きです。一方で、波瑠さんの“想(おも)いを打ち明ける姿”や、“涙を流す姿”はすごくリアルで、見るたびに心を奪われ、いつも泣かされていました。
宮崎監督:第3話の薫がいろはの作文に涙するシーンもすごくすてきでした。そのあと授業中のいろはにこっそり手を振る仕草も、薫に生まれた母性があふれていて。毎話、独身女性として生きてきた薫の芯の強さや内面の変化を丁寧に表現してくださいました。
嶋田監督:川栄さんは母娘のリアルな温度感や間合いを直感的にアウトプットしているようで、さすが“リアルマミー”だと感心しきりでした。持ち前の明るさと本能的な感性、そしてずば抜けた瞬発力には目を見張るものがありました。
宮﨑監督:こちらが何も言わなくても茉海恵として成立する方。細やかな表情やニュアンスの表現がうまいですよね。
中西P:もう本当にたくさんあるんですけど、第1話で後続車にブチギレるシーンや、第6話で“三羽烏”とのお茶会での「グレてねぇ……です」の言い方など、台本や監督の意図を理解してくださった上で最高の表現を現場で提示してくれた時は、やっぱりさすがだなと。元ヤン設定なので口の悪いお芝居もたくさんやってもらったんですが、それでも絶対嫌われない、むしろ愛されてしまう魅力があるのは本当にすごいと思います。
嶋田監督:波瑠さんも川栄さんも、“演技を感じさせない透明感”がすさまじいです。お芝居が素晴らしいのは当たり前のはずなんですが、その一挙手一投足があたかも空気や水のように自然に普通になじんでしまう。型破りな設定でも本作が受け入れられたのは、まさにお二人のおかげだと感じました。
嶋田監督:こちらの意図を凌駕する“自然な子どもらしさ”をナチュラルに演じる姿には驚きました。こちらも負けじと、いかに“本物の親子”に見せるか、リアルママ(パパ)の実体験や“あるある”を盛り込んでいきました。
宮﨑監督:天才的な頭脳を持つ難しい役どころでしたが、「いろはを演じられるのはあおちゃんしかいない」と現場で何度も感じましたね。
嶋田監督:第3話で茉海恵が寝落ちしているいろはを運ぶ場面、最初は赤子を抱くように“横抱っこ”を想定していましたが、あおちゃんが意外に大きくて……、川栄さんが“縦抱っこ“してみると逆に赤ちゃんっぽくなり、自然な親子の空気が醸し出されました。第4話でいろはが学校の友だちとジュースを作るシーンで、台本には何も書いてなかったのに、娘の成長を見た茉海恵が涙を流していて驚きました。あれはどういう経緯だったんですか?
宮崎監督:本来はいろはがジュースを作る姿と屋上にいる薫のカットバック(異なる場所で同時に起きている出来事を交互につなぐこと)の予定でしたが、川栄さんと相談して“いろはを見守る芝居”を足したんです。そうしたら楽しそうないろはを見つめて自然と涙を流してくださって。胸が熱くなりました。
嶋田監督:とにかくお芝居に貪欲ですね。毎カット、モニターに出る映像をスマートフォンで撮影して、後で見返していると聞きました。海外の作品も経験されているからこそ、役作りに対する執念というか、経験値と真剣さがそのまま姿勢に表れていました。
中西P:現場ではいつも明るく、しんどそうな素振りは全く見せないのですが、マネージャーさんたちに聞いてみると裏では本当にたくさん練習してくださっているようでした。全力で竜馬というキャラクターに向き合ってくれてうれしかったです。竜馬はこれまで向井さんが演じてきた役柄とは少し異なっていて、悩まれることもあったと思いますが、今はもう向井さんが演じる竜馬が竜馬だなという安心感があります。
嶋田監督:“表情の管理”も見事で、セリフのない時の眼差しがとにかく美しいんです。人物の心の揺れや成長を、ナチュラルににじませてくださっています。第8話の薫の母・聖子(筒井真理子さん)の手紙のシーンでは、1テイク目から涙を流していて。撮影の順番的に3回目に向井さんのお芝居を撮影したのですが、3回ともボロ泣きで。本番中は“演じている”というより、本当に“竜馬として生きている”んだなと感じました。向井さんもそんなことをおっしゃっていました。
中西P:特に第5話、第6話あたりは、“向井さんの一番いい瞬間”が詰まっていると思います。あと、声の出し方も、普段とは違って、頼もしい感じの声で挑んでくださっていますよね。
宮崎監督:向井さんが撮影現場にいるだけで、その場の空気がより明るくなるんですよ。向井さん自身が、底抜けにいい人なんです。だからキャストもスタッフも自然と引き込まれる。
中西P:本人は似てないとおっしゃっていますが、我々は結構ササエルと似ていると思っています。
宮崎監督:第4話の屋上シーンの名探偵的な動きもご本人のアドリブ。実は撮影はクランクインしたばかりの頃だったんですが、すごく面白いササエルを作り上げてくださいました。
嶋田監督:ササエルがまさかトレンド入りするなんて思っていなかったですね。
嶋田監督:第7話の笠松(将)さんの“写真ばらまき”はどう決まったんですか。
宮崎監督:ト書きに“ばらまく”と書いてあったので多めに渡したら、ドライで中村さんといろいろな芝居を試しながらあの量をばらまいてくれました。おおまかなイメージを話してお任せしたら、ご自身でどんどん膨らませてくれるタイプ。
嶋田監督:第8話で、写真を取るのに、指の腹の皮脂で粘着させるというのも本人のアイデアでした。「ハエたたきみたいに取るのはどうか」と提案したら、「慎吾の茉海恵に対する今の感情だとこういうパターンはどうか」とアイデアをもらいました。回想シーンで梁(はり)に頭を強打するのもご本人のアイデア。本当に痛そうでしたけど慎吾の人間味が出ていて素晴らしかったです。毎回笠松さんと議論するのが実は一番楽しかったかもしれません。
中西P:いつも飄々(ひょうひょう)と現場に現れて、想像以上の面白さをお芝居で提案してくださるので、いい意味で毎回悔しかったです! 慎吾が登場するシーンが全部面白くて。
嶋田監督:第9話の社長室で茉海恵と対峙する場面も、台本ではシンプルに冷酷無比な悪者として描かれていたのを、現場で深掘りして“茉海恵とよりを戻せると思って来たのに全く違う雰囲気だったので、全てを奪う方向へ切り替わる”という表現をすることで、奥深く見ていてクセになる本橋慎吾の人物像を浮かび上がらせていました。
宮崎監督:ニセママという設定は、扱い方が難しいところですよね。制作過程でさまざまな学校に取材する中で面白い話を聞きました。「本当にニセママがいたらどうしますか?」と聞いてみたら、とある学校の方は「特に問題はない」と答えたそうです。もちろん虚偽や偽装はダメですが、事実婚の方や再婚など必ずしも血のつながりがない家族も珍しくなく、学校として特別に確認する必要はないという考えから、そう答えられたそうなんです。こういう柔軟な考え方があるのかと、時代の変化を感じました。
中西P:柳和学園小学校はあえて保守的な設定にしていますが、お受験も時代に合わせて変わってきています。なので全10話で“ニセママが学校にバレるかどうか”を描くだけではなく、本橋家にバレるバレないという違う軸も増やすようにしたんです。
嶋田監督:第7話で触れられた高梨由実(筧美和子さん)のワンオペ育児に苦労する状況に共感する方も多いと思います。
宮崎監督:共働き家庭では、親である自分たち以外のサポートをどう確保するかで生活や仕事のしやすさに差が出ます。さまざまな家庭環境や事情があると思いますが、家族に限らず、支え合う存在がいたら心強いと思います。
嶋田監督:そうですね。近くに祖父母などがいてくれれば助かりますが、いなかったり、助けを求められない場合もありますから。
宮崎監督:ファミリーサポートなど支援制度も増えてはいますが、まだ使いにくい面もあります。
嶋田監督:もう少し、ベビーシッターの利用が気軽にできるようになればいいですよね。
中西P:最初はどんな人に預けるのか少し不安がありますもんね。
宮崎監督:金銭面でも精神面でも、初めのハードルが高いんですよね。結局1人や2人で抱え込んでしまう人も多いと思います。
中西P:子育ての負担を軽くするという面もありますし、茉海恵さんにとって薫は“バディー”のような存在なのかなと思います。私自身、脚本の園村三さんの受賞作を拝読して、最初に少し連想したのは映画「マイ・インターン」(2015年)でした。誰かが別の角度から意見をしてくれたり、そばにいてくれることで人生が少しずつ好転していくような、ああいった存在に近いのかなと感じたんです。
ニセママ契約の話からは少し逸れてしまうかもしれませんが、女性って結婚したり子どもができたりすると、独身の人、既婚の人、子どものいる人、いない人……と、なんとなく分断されてしまうところがあると思うんです。気軽にご飯に誘いづらくなったり、距離ができてしまったり。
でも今回、いろはという存在を“2人でどうにか支えよう”とすることで、立場の違う人たちが一緒に生活していく。その状況そのものが、ちょっとした希望になり得るのかなと思っていました。子育ての中で孤立してしまう方もきっと多いと思うんですが、そういう時に“お母さん自身を支えてくれる誰かがいる”というのは、すごく心強いことなんじゃないか……そんなことを考えていました。
嶋田監督:私立の小学校だけでなく、幼稚園、保育園の制度も、もう少し時代に合った形になれば子育てしやすくなるかもしれませんね。
中西P:私もこの作品を通して学んだことが多かったです。小学校を見学する中で、子どもにとって良い環境を整えることの大切さを感じました。そして、視聴者の皆さんの感想も拝見する中で、いかに子どもが尊い存在であるかを改めて実感したので、自分も子育てを頑張ろうと励みになりました。
嶋田監督:本作では家族や親子の関係性を主軸に置いていますが、「シスターフッド」や「ママ友」の行く末にも注目してほしいです。普段から、妻にママ友事情を聞くことがあるのですが、「ママ友」って普通の友だちとは違って、不思議な関係だなとつくづく思います。本作にもいろんなママ友が登場してきましたが、ドラマと同じような人間関係やトラブルが実際にも結構あったりして共感していただける部分も多いんじゃないかなと感じています。本橋さゆり(田中みな実さん)の状況って、現実で考えるとつら過ぎて耐えられないですよね。最終回でこのママ友関係がどのように動いていくのかは、見どころの一つです。
宮崎監督:どこに着地するのか分からないところも、最終回の魅力ですね。オンエア時にX(旧ツイッター)で視聴者の皆さんの反応を見ていても、「どうなるんだろう」と注目しているのを感じます。ハッピーエンドになるのか、それとも予想外の結末なのか、ドキドキしながら楽しめると思います。突拍子もない設定ながら、女性の生き方や働き方、子育ての悩みといった部分に共感してもらえる要素も多いと思います。このドラマを通して「自分だけじゃない」と感じたり少しでも前向きになったり、視聴者の皆さんへのエールになればうれしいです。
中西P:第9話のようなハラハラする展開はもちろん、最終回では「フェイクマミー」らしい社会への問いかけとコメディーの両立がしっかり見られます。キャラクターたちの魅力や俳優陣の個性が結末にどう影響するのかも楽しみにしてもらいたいです。波瑠さんや川栄さんのキャラクターの真っすぐさ、向井さんや中村さんのキャラクターの新しい一面、いろはちゃんの愛らしさ……そうしたキャラクターたちの魅力も、作品全体の大きな魅力です。サスペンス的な展開も楽しめますし、キャラクターの結末もぜひ見ていただきたいです。
嶋田監督:ぜひ最後まで見逃さないでください。見た人だけのご褒美があると思います。
妻夫木聡さん主演のTBS系日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」(日曜午後9時)の第9話が12月7日に放送された。騎手・佐木隆二郎(高杉真宙さん)の野崎翔平(市原匠悟さん)に対する行…
「ベトちゃんドクちゃん」のグエン・ドクさんが、12月12日放送の黒柳徹子さんの長寿トーク番組「徹子の部屋」(テレビ朝日系)に出演。兄のベトさんへの思いや日本への感謝などを語った。
高石あかりさん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ばけばけ」(総合、月~土曜午前8時ほか)の第55回が12月12日に放送され、失恋したリヨ(北香那さん)の言動に、視聴者の注目が…
最終回の放送を残すのみとなった横浜流星さん主演の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK総合、日曜午後8時ほか)で、喜多川歌麿を演じてきた染谷将太さん。「天才絵師」として…
最終回の放送を残すのみとなった横浜流星さん主演の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK総合、日曜午後8時ほか)で、喜多川歌麿を演じてきた染谷将太さん。「べらぼう」におい…