深田恭子:「あのときの自分は闇だった」 連続ドラマW「幻夜」で悪女役に体当たり

連続ドラマW「幻夜」で究極の悪女を演じた深田恭子さん
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連続ドラマW「幻夜」で究極の悪女を演じた深田恭子さん

 人気作家・東野圭吾さんの傑作サスペンス小説をドラマ化した「幻夜」(全8話)が21日からWOWOWの「連続ドラマW」枠で放送される。このドラマで“究極の悪女”新海美冬役で出演している深田恭子さん。美貌(びぼう)を武器にのし上がっていく役柄を演じ、「あのときの自分は闇だった」と撮影を振り返った。美冬を愛し、支えようとする水原雅也役に塚本高史さん、事件のにおいをかぎつける加藤刑事役に柴田恭兵さんと豪華キャストも話題で、大震災のシーンや豪華な船上パーティーなど大規模ロケの壮大なスケールの作品に仕上がっている。 悪女役で新境地を開いた深田さんに聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 深田さんは「悪女のサクセスストーリーはやったことがなかったので、演じているときは痛快でした」というが、撮影がすべて終了した後で「なんて悲しい役だったんだろうと実感しました。思い返すと、美冬の周りの人はみんな悲しい顔をしていました。塚本さんが演じる雅也も柴田さんが演じる加藤刑事も不思議な生き物を見るような目で私(美冬)を見ていたし、皆さんと響き合ってお芝居するというよりも、独り芝居をしているような感覚で、孤独を感じていました」と振り返った。

 美冬については「原作を読んだときは“カッコいい”と思って大好きだったんですけど、いざ自分が演じるとなると、女としての武器を使ってどんどんのし上がっていくという生き方は悲しすぎるなと思いましたね。女性に生まれた愛や喜びなどの(人間らしい)感情を一切持ち合わせていない。美冬はどこに行きたいのか目的が分からなくて、ほんの少し先の欲望のために人を悲しい目に遭わせたりするので、この人はなんて悲しい人なんだ、この人が安心する場所、達成感はどこにあるのかと考えてもなかなか答えは出ませんでした」と演じるにあたって悩んだ。

 考えれば考えるほど、「気持ちは重かったですね。あのときの自分は闇だったなって。思い出すだけで首の後ろが重たくなるというか、精神的にも肉体的にもつらかった」という。だが、無事に役を演じる切ることができ「今は、こういう試練をこの役で経験できてよかったと思います」と前向きにとらえられるようになった。

 ただ美冬と雅也に対しては決して「共感という言葉は使いたくない」ときっぱり。「部分、部分で見れば、雅也があそこまで美冬を愛し、美冬のためならなんでもしたいという強い気持ちはすてきだなあと思うんですけど、人を殺(あや)めているじゃないですか。原因が原因で、究極のところで出会った2人ですから、共感したというと、悪を正当化してしまうような気がして、今回はとくに使いたくないですね」と強調した。

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 塚本さんとは高校の同級生、美冬が結婚する秋村社長役の鈴木一真さんは所属事務所の先輩と気心の知れた仲。「2人ともよく知っているので、お芝居はやりやすかったような気がします。とくに今回は激しいラブシーンが多かったので、そういうシーンの撮影の前日は、いつも『明日、撮影に行きたくない』とすごく重たい気持ちになるんです。とくにそれが純愛ならいいんですけど、美冬の場合は自分の体を使ってのし上がっていくという悲しい女性なので、とくにつらかった。監督から『もっと踏み込んで』といわれると、鬼に見えたり(笑い)。でもそんな私の気持ちを察して、そっとしておいてくださったりして、2人の気遣いは現場ではとても助かりました」と感謝している。

 ベテランの柴田さんとは初共演。深田さんはこれまで、自分の名前の字を説明するときに「柴田恭兵さんの“恭”です」と引き合いに出していたといい、「小さいときから柴田さんのことを意識してたんです。それに、今回の台本のキャストのところを見たら、“田”と“恭”の位置まで一緒で、『柴キョン』と『深キョン』と勝手に身近に感じてたんです」と笑った。演技面では「すごく勉強になりました。刑事ってこういう人なんだなという誰もがイメージする刑事で、こちらも思い切りぶつかっていけました」と絶賛する。

 美冬の演技で難しかったのは人をだますシーンだ。「雅也やだんなさんとのシーンは、美冬を演じているんだけれども、またその上に(うそをつくという)ベールがかかっていて、二重にお芝居をしているような形になって普段のお芝居とは別の難しさがありました」とこれまでにない感覚を味わった。ただ、悪女の美冬になぜこれほどまで、周囲の人が引きつけられるのかについては「そのとき、そのとき、美冬が本気だからこそ、周囲がそれに協力したり、だまされてしまうんですよ。つねに本気でうそをついている。あとは、のし上がりたい半面、死を恐れないところがあるからじゃないでしょうか。肝が据わっている、その強さに引かれるのではないかと思います」と分析する。

 見どころは「原作のファンの方は原作と照らし合わせていただいて、ドラマ化によって原作よりももっと美冬の危うさが出ていると思いますし、ばれる寸前の彼女の綱渡りの生き方とか、目の強さとかで、文字を読むよりスリルを味わえると思います。原作を読んでない方も東野さんの素晴らしい原作をドラマ化して面白くないはずはないので、とにかく第1話を見てください。必ず次の回が見たくなると思います」とアピールした。

 2日に28歳の誕生日を迎えた深田さんは、「皆さんから『30代が一番楽しい』といわれてきて、これまではうそだろうなと思ってたんですけど(笑い)、なんだか楽しそうだなと最近、思ってきました。25歳を過ぎたときは、これからもっと体とか疲れやすくなるんだろうなと悲観的になっていたんですけど、最近は健康に気を付けると自分の体も楽なんだと、いろんなことを学ぶことが楽しいんです。30代はこれまで学んだことを生かせたり、必要な知識が自然と頭に入ってくるような楽しみがあるんだろうなって。28歳はすてきな30代になるための準備期間だと思っているので、毎日大忙しだと思います」と笑顔で語った。

<プロフィル>

 1982年11月2日、東京都出身。96年の「第21回タレント・スカウト・キャラバン」でグランプリを受賞し、97年4月に連続ドラマ「FIVE」(日本テレビ系)でデビュー後、ドラマ、映画に数多く出演。ドラマは、フジテレビ系「神様、もう少しだけ」(98年)、TBS 「ストロベリー・オンザ・ショートケーキ」(01年)、テレビ朝日「富豪刑事」(05年)などに出演。02年の日韓共同制作ドラマ「フレンズ」で韓流スター、ウォンビンさんと共演した。映画は04年に「下妻物語」に出演し、数々の映画賞を受賞。09年には実写版「ヤッターマン」でドロンジョを熱演した。10月からNHKのドラマ「セカンドバージン」に出演中。WOWOWの連続ドラマW「幻夜」は21日スタート。毎週日曜午後10時に放送。全8話(第1話は無料放送)。

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