乙葉しおりの朗読倶楽部:第3回 宮沢賢治「よだかの星」 市蔵さん大丈夫?

「よだかの星」作・宮沢賢治、画・赤羽末吉(岩崎書店)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「よだかの星」作・宮沢賢治、画・赤羽末吉(岩崎書店)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。7月から配信され、これまでに20万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが「朗読倶楽部」の活動報告と名作を紹介する「乙葉しおりの朗読倶楽部」。第3回は、宮沢賢治「よだかの星」だ。

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 みなさんこんにちは、乙葉しおりです。

 みなさんは自分の声の大きさで困ったこと、ありますか?

 私はしょっちゅうです……(>_<)

 これでもだいぶ大きくなった方なんですけど、昔はよく「蚊の鳴くような声だ」って言われてました。

 でも、この間、コンビニで中華まんを買った時のことですけど……あっ、下校中じゃありませんよ。

 登下校時の買い食いは校則で禁止されてますからね……って、ごめんなさい、さっそく脱線しちゃいました(>_<)

 そのコンビニで、店員さんにこしあんのあんまんをお願いしたんですが、食べてみると中身はつぶつぶのあんまんだったんです。

 たぶん私の声が小さくって、「こしあん」の部分が伝わっていなかったんだろうなって思うんですけど、ちょっと悲しい気持ちになってしまいました。

 ただし、力任せに大きな声を出すだけでは、こういう問題は解決しません。

 声の聞き取りやすさ……小説では「よく通る声」と表現されているような「声量」を身に着ける必要があるんです。

 これは腹式呼吸をはじめとする発声練習を積み重ねていくんですが、みなさんも声の通りが悪いと思ったら、私と一緒に発声練習をしてみませんか?

 ……もっとも、私の場合は「あがり症が発声の妨げになっている」という話もあるんですけど、あはは……。

 さて、気を取り直して、そんなあがり症の私が、どうして今、朗読倶楽部にいるのか、前回の続きです。

 文芸部を存続させるためには、まずは活動場所を決めなければいけませんでしたが、これはすぐに候補が思いつきました。

 文芸といえば本ですから、図書館を利用させてもらえばいいんです。

 実は、私の通う高校の校舎には、図書室がありません。

 小学校から大学までの校舎が同じ敷地にあるので、学生が利用できる大きな「学校図書館」が別に建っているんです。

 そこで、図書館の司書をしている先生にお会いして、施設を部室として利用できるか質問したのですが、答えはダメということでした。(>_<)

 共有施設なので、放課後の時間限定で施設の一部とはいえ、占有するような使い方はできないんだそうです。

 最初からつまずいてしまって、お友達と私の二人は途方に暮れてしまいました。

 というのも、部員や顧問の先生は1人に断られても他の人を探せますが、場所の候補はとても少なく、クラブハウスも校舎も使えそうにない状況では、他の場所が思いつかない程だったんです。

 でも、私たちがあんまり困った顔をしていたからでしょうか、司書の先生が助け舟を出してくださったんです。

 「司書室の隣の控室が荷物部屋になっているから、そこでよければ使ってもいいよ」って。

 先生に無理をお願いしたみたいで、少し心苦しいところもありましたが、とにかく部室を確保できて、文芸部存続に一歩前進できました!

 ……と、いうところで、今回はここまでです。

 また次のお話ができる日を、楽しみにしています(^−^)

■しおりの本の小道 宮沢賢治「よだかの星」

 こんにちは、このコーナーも第3回、今回ご紹介する一冊は、宮沢賢治さんの「よだかの星」です。

 このお話の主人公は「よだか」という鳥なのですが、どんな鳥なのか、みなさんは目にしたことがありますか?

 正式には「夜鷹(よたか)」と言って、名前が示す通り、夜行性の渡り鳥です。

 でも、鷹の名前が入ってはいますが、鷹のような鋭いくちばしを持たず、鷹には分類されていません。

 空を飛びながらエサを捕食するために、口がとっても大きく、ツバメの親戚ではないかと言われています。

 お話の中に登場するさまざまな鳥たちは、そんなよだかの姿を口々に「みにくい」と罵りました。

 やがて本物の鷹がやってきて、鷹の字がつくよだかという名前を変えないと、つかみ殺してしまうと脅されてしまいます。

 よだかという名前は、神さまの決めたもので、よだかが決めたものではありませんから、変えたいと思っても変えることはできません。

 それならいっそ死んでしまおう、自分のように周りに嫌われる鳥でも、死ぬときは星のように光るに違いないと信じて……。

 存在を否定され、自ら命を絶って生まれ変わろうとするよだかの姿は、宮沢賢治さんの人生観を反映したものではないかという説があります。

 もし興味を持たれたら、宮沢賢治さんの記録とこのお話を、比べてみるのも良いのではないでしょうか。

 ……最後に余談ですけれど、このお話の中で、鷹が「名前を市蔵に変えろ」と迫り、よだかが「市蔵だなんて」と嫌がる描写があるのですが……。

 このお話が発表された後、世の市蔵さんがからかわれたりいじめられたりしなかったか、ちょっと心配になってしまうのです(>_<)

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