01年9月11日に発生した米同時多発テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディン容疑者が、米軍特殊部隊の急襲を受けて殺害された。だが、本人なのかも100%はっきりしないもので、同時多発テロと同様に謎が多い。ただ、ビンラディン容疑者に、白人の侵入に抵抗した先住民族アパッチ族の戦士「ジェロニモ」の暗号名を付けたように、米政府のメンタリティーは南北戦争当事と何も変わっていないと思う。
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時を同じくしてインターネット上でも、テロともいえる事件が起きた。ソニーが運営するPS3のネットワークサービス「プレイステーションネットワーク(PSN)」で、第三者からのハッキングを受けて、約7700万件の個人情報が流出した。4月21日(米国時間)にサービスを停止して調査したところ不正アクセスが判明したとあるが、公表されたのは4月26日(同)。ハッキングを100%防ぐのは難しく、一人でも侵入を許して犯行を許せば多くの人の脅威になるのはテロと似ている。だがソニーの対応の遅さ、認識の低さは、企業として責められて当然のことだろう。
私もかつて企業のトップとして、オンラインゲームのサービス提供を行っていたが、朝からサーバー障害に見舞われたにもかかわらず、現場から報告が上がってきたのは午後5時過ぎだった。当然ながら問い合わせメールには、クレームが次々と寄せられた。このとき自社製作映画の公開初日と重なったのだが、公開の喜びは一瞬で吹き飛んだ。現場としては「何とか修復できる」と考えて報告を先延ばしにしたのだろう。規模は違えど、トラブルは初動対応を間違えるとより大きなトラブルに発展する。
ソニーのハワード・ストリンガー会長兼社長が、公式に謝罪をしたのは5日(米国時間)。サービスなどの事故には敏感なアメリカ議会や公聴会の逆りんに触れたこともミスだった。当初は、無料で遊べるゲームを顧客に提供することで決着させ、早期にサービス再開を計画していたのだろうが、サービスの再開延期を早々に告知するなど、もくろみは今のところうまくいっていない。
PSNの不正アクセスについて、多くのニュースによればそれなりの背景があるようだ。ソニーが国際的なハッカー集団から、執拗(しつよう)なサイバー攻撃を受けていたこと。攻撃を受けながらも結果として脆弱(ぜいじゃく)性に対処していなかったこと。だが、第三者の不正アクセスがあったのは確実でも、ハッカー集団がしたという明確な証拠はない。ビンラディン容疑者の殺害とは異なるが、概要こそ判明すれど詳細は闇の中というのはそっくりだ。
今回の件で私が危機感を抱くのは、ソニーが今後の対応を誤れば、トヨタのリコール騒動と同じく、「メード・イン・ジャパン」のサービスの信用も失われかねないことだ。ソニーは世界的なブランドで、世界中にファンを抱える。だが可愛さ余って憎さ百倍。そして秘密があれば、その秘密を知りたくなるのが人間の心理。コインの表と裏のような表裏一体の話だが、すべての「メード・イン・ジャパン」のためにも今後の綿密な対応とフォロー、対策が必要なことは言うまでもない。
著者プロフィル
くろかわ・ふみお=1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』」(http://blog.livedoor.jp/kurokawa_fumio/)も更新中。
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