注目映画紹介:「バビロンの陽光」 ベルリン映画祭で平和賞を受賞 イラクの少年と祖母の旅

「バビロンの陽光」の一場面(C)2010 Human Film,Iraq Al−Rafidain,UK Film Council,CRM−114
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「バビロンの陽光」の一場面(C)2010 Human Film,Iraq Al−Rafidain,UK Film Council,CRM−114

 イラクの監督の熱意によって、欧州各国が製作支援してできた映画「バビロンの陽光」(モハメド・アルダラジー監督)が、公開されている。父親を探す少年アーメッドとおばあさんの旅路を描く作品で、砂ぼこりにまみれたアーメッドの顔をふくおばあちゃんの優しさにうるっとくる。ベルリン映画祭でアムネスティ賞と平和賞を受賞した。

ウナギノボリ

 サダム・フセイン失脚後から3週間後、何もない広大な大地を少年アーメッドとおばあちゃんが歩いている。2人は戦地で行方不明になって12年がたつアーメッドの父イブラヒムを探して旅をしており、通りかかったトラック運転手になけなしの金を払い、バグダッドまで乗せてもらうことになる。父からもらった縦笛を吹くアーメッド。運転手は文句を言いながらも、歌ったりして調子がよく、2人をバスターミナルで降ろしてくれる。2人はバスに乗って、イブラヒムがいるらしいと聞いたナリシヤ刑務所を目指したのだが……。

 本作は、虐殺された遺体を埋めた集団墓地が発見されたという実在のニュースを盛り込むなど、今もなお続くイラクの“痛み”を描きながら、母親が子を思う、子が父親を思う、少年の成長、人間の尊厳といった普遍的な人間の物語を作り上げている。物語は、少年とおばあちゃん、途中で知り合った男性を含め、ほぼ3人で展開していくのだが、姿は全く登場しないもう1人の人物が重要だ。アーメッドにとっては父親であり、おばあちゃんにとっての息子であるイブラヒム。彼は、多くの名もなき人物の代表である。そして、この映画は彼を思いやる2人の気持ちを軸にできている。七つの都市で撮影されたという美しい大地の風景も見どころだ。シネスイッチ銀座(東京都中央区)ほか全国で順次公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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