妻夫木聡:日本映画に危機感?大震災を機に「作り手の意識を変える時期」と熱弁

映画「マイ・バック・ページ」のトークイベントに出席した妻夫木聡さん
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映画「マイ・バック・ページ」のトークイベントに出席した妻夫木聡さん

 俳優の妻夫木聡さん(30)が8日、東京都内で行われた映画「マイ・バック・ページ」=山下敦弘監督(34)=のトークイベントに出席し同世代(26~34歳)の男女25人とディスカッションを行った。妻夫木さんは日本映画について熱く語り、「自分の意見ばかりしゃべっちゃって(会場に集まった人の)意見を全然聞けなかった。反省しています」と話すほど、熱弁を振るった。

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 東日本大震災から約2カ月後の公開ということを受け、妻夫木さんは「もうそろそろ世の中に対して『本物って何なのだろう』って見つめ直さなきゃいけない時期にきているんじゃないかな」と切り出し、「震災があったから言うわけではないが、日本映画自体にもそういうところはあると思うしね。映画なのにテレビの映画(化作品)ばかりやっているようなものがあって、それが当たってそれが映画界の興行を回していて……っていうのもあるし、それが映画じゃないとは言わないけれど、自分自身も出てたりするし」と現状を分析。「でも、作っていく側の人間の意識のとらえ方をそろそろ変えていかないと、日本っていう島国だけの社会でぐるぐる回しているだけではほかの国に発信できる作品ってどんどん小さくなっていっちゃうんじゃないかという意識がある。もうちょっと広い視野で、自分自身がどう生きていきたいのか、どういうものを作っていきたいのか生産する側の立場として変わっていかなくてはいけないと思います」と世界を視野に自分を見つめ直す発言をした。

 また、同映画で若い記者・沢田を演じるにあたって「自己表現というか自分の意識的な改革にはなるのかなと思った」と感想を述べ、1960年代と比較した現在の若者について「今って内にこもって生産性の高いものに目標をとらえて突き進んでいってしまうというような、自分自身を抑制している気がする。もっと羽ばたいてもいい場所があるのに出ていけない自分、そういう自分を自分が作り出しているっていうような流れだと思う」と語り、政治の話や妻夫木さん自身の芸能界に入ってからの“挫折”の経験など、突っ込んだ内容の話が展開され、会場に集まった若者は熱心に聴き入っていた。

 映画は、「週刊朝日」や「朝日ジャーナル」の元記者・川本三郎さんがジャーナリスト時代に取材した事件をつづったノンフィクションが原作。60年代後半に、理想に燃えながら新聞社発行の週刊誌編集部で働く記者・沢田(妻夫木さん)が、先輩記者とともに梅山と名乗る男=松山ケンイチさん(26)=と接触。男は「銃を奪取し、武器をそろえて、我々は4月に行動を起こす」といい、沢田は疑念を感じながらも、不思議な親近感を覚え、2人は急速に接近していく……という物語が展開する。忽那汐里さん、石橋杏奈さん、中村蒼さん、三浦友和さんらも出演。主題歌は米歌手ボブ・ディランさんの名曲「My Back Pages」を奥田民生さんと「真心ブラザーズ」がカバーした。

 トークイベントには松山さん、山下監督も参加し、75分間にわたったディスカッションは予定時間を大幅にオーバーして終了した。参加者は自分の名前を書いたプレートをつけてお互いを名前で呼び合い、フォトセッション時も妻夫木さんや松山さんとおしゃべりするなど、仲間同士のようなほほえましい光景が見られた。映画は全国で公開中。(毎日新聞デジタル)

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