ラノベ質問状:「僕と彼女のゲーム戦争」ゲームメーカーも監修 作者は間違って義援金を…

師走トオルさん作、八宝備仁さんイラストの「僕と彼女のゲーム戦争」(アスキー・メディアワークス)
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師走トオルさん作、八宝備仁さんイラストの「僕と彼女のゲーム戦争」(アスキー・メディアワークス)

 話題のライトノベルの魅力を担当編集者が語る「ラノベ質問状」。今回は、高校3年にして初めてゲームに触れた主人公が、意外な才能に目覚めてゲーマー人生を歩む「僕と彼女のゲーム戦争」(師走トオル著、八宝備仁画)です。アスキー・メディアワークス第2編集部の黒崎泰隆さんに作品の魅力を聞きました。

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 −−この作品の魅力は?

 読書にしか興味のなかったおとなしい高校生の少年・岸嶺健吾くんが、最近共学になったばかり(ほとんど女子生徒だらけ)の元・女子校に転校し、ひょんなことから現代遊戯部(要はゲーム部)に入部します。そこで意外な才能を発揮し、ゲームの面白さに目覚め、全国規模で開催されているゲーム大会に出場することに。美人で聡明な生徒会長・天道しのぶ、現代遊戯部の顧問・瀬名先生らとともに、さまざまなゲームに挑戦しつつ、日本一、世界一のゲーマーをめざして頑張っていく……という物語です。

 見どころの一つは、作家の師走トオルさんの熱意により実現した「実在のゲームをプレーするシーン」です。岸嶺くんたちが「実在の人気ゲーム」をプレーするシーンは、各ゲームメーカーさんにご監修いただいているため、とてもリアルで臨場感にあふれています。まるで本当にゲームをプレーしているような気になること間違いなしです。

 他にも、人気イラストレーターの八宝備仁さんが、個性豊かなキャラクターたちを、とても魅力的な絵で表現しているのも見どころですので、ぜひご覧いただきたいです。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 1年ほど前に、著者の師走トオルさんから企画が持ち込まれました。もともと師走さんは大のゲーム好きでして、以前から「実際のゲームを題材にした作品を書きたい」と考えていらっしゃったようです。そもそもの思いつきは、1巻のあとがきに書かれているように、ライトノベル作家仲間で構成されている「ラノベゲーム部」でゲームをしているときに「経験や駆け引き、情報収集能力など、あらゆる能力を試される“ゲーム”というものは、小説の題材として面白いに違いない」と気づいたことからだそうです。

 −−作家さんとイラストレーターさんはどんな方でしょうか。

 作家の師走トオルさんは、先日の東日本大震災の際、義援金として10万円を振り込もうとして、間違って100万円振り込んでしまったのを見てもおわかりのように、少々オッチョコチョイで楽しい方です。フットワークも軽くて「呼ばれれば、いつでも編集部に行きますよ!」と、編集部から決して近くはない自宅から、よく打ち合わせに足を運んでくださいます。その打ち合わせでも、よく冗談を言って、こちらを笑わせてくれますので、ときにはなかなか仕事が進まなかったり……。一方で、今回の作品は、こよなく愛するゲームを題材にしているだけに、内容への情熱はすさまじく、ゲームシーンはもちろんのこと、作中のこまかな箇所でも、まったく妥協を許しません。編集者の私も、頭が下がるばかりです。

 イラストを八宝備仁さんにお願いしたのは、著者・師走さんの強い希望があったからです。もともと八宝さんの絵に魅せられていた著者の「八宝さんしか考えられません!」という熱意が通じたのか、いつもお忙しいはずの八宝さんにご快諾いただいたときは、著者も私も歓喜しました。

 お会いした八宝さんは、家族を愛するナイスガイで、お子さんのことをうれしそうに話すすてきなパパでもありました。文庫の作業が始まると、物語の舞台となる学校や部室の細かな設定を微に入り細にわたり描いてくださったり、ちょっとした手間も惜しむことなく、全力でイラストに取り込んでくださいました。キャラクターデザインでも、著者や私からのムチャなリクエストをくんで、イヤな顔ひとつせず、何度もリテークしてくれました。そうした八宝さんの真摯(しんし)な熱意の結晶が、素晴らしいイラストとなって、この作品をより一層輝かせてくれているのだと思います。

 −−編集者として、この作品にかかわって興奮すること、逆に大変なことについて、それぞれ教えてください。

 興奮するのは、やはり上がってきた原稿やイラストを拝見することです。編集者として、作家やイラストレーターにはさまざまなリクエストをするわけですが、原稿にしろイラストにしろ、想像以上に高いクオリティーになって戻ってきますので、編集者冥利に尽きます。

 また実在のゲームを作中で描写するために、各ゲームメーカーさんにも、ご協力をいただいています。その窓口になってくれているのが、社内のゲーム雑誌関連の編集部の方々です。小説に理解を示して、親切に対応いただけるメーカーさんはもちろん、間に入って地道に交渉をしてくれている社内各編集部のみなさんのご苦労を考えると、中途半端なものは作れない……と身が引き締まる思いです。

 大変なことは、とくにありません。師走さんも八宝さんも、きっちりと仕事をこなすオトナな方々ですので、スケジュールが乱れることもないですし、困るような事態にもなりません。あえて大変なことを言うのであれば、私があまりゲームに詳しくないため、師走さんに「このゲームは、こんなに面白いんですよ!」と力説されたときに、あまりいい反応を返せないことでしょうか。申し訳ありません、師走さん……。

 −−今後の展開、読者へ一言お願いします。

 2巻では、主人公・岸嶺くんが所属する「現代遊戯部」に、新たな可愛い部員が加わります。そして彼ら現代遊戯部の面々はお互いに切磋琢磨(せっさたくま)しながら、日本一、いえ世界一のゲーマーをめざして、全国の猛者たちと戦っていくことになるのです。おそらく、さまざまなライバルが彼らの前に立ちふさがるでしょうが、岸嶺くんは個性あふれる仲間たちと力をあわせて、強敵たちと熱いバトルを繰り広げていくはず。ぜひとも現代遊戯部のメンバーたちを応援してあげてください。

 そして今後も、実在する人気ゲーム、珍しいゲームを、どんどん作中で紹介していく予定です。ジャンルも、FPS、アクション、シミュレーション、RPG、レース、パズルなど、多岐にわたって網羅します。ゲーム好きの著者ならではの独特な視点で、ゲームを魅力的に描いていきますので、プレーしたことのある方にも新鮮な気持ちで楽しんでいただけますし、未プレーの方にも「このゲーム、やってみたい!」と感じてもらえるはずです。今後も、ぜひぜひご期待ください。

 アスキー・メディアワークス 第2編集部 黒崎泰隆

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