乙葉しおりの朗読倶楽部:第40回 エドガー・アラン・ポー「アッシャー家の崩壊」9度映画化された名作

「黒猫・アッシャー家の崩壊−ポー短編集<1>ゴシック編」作・エドガー・アラン ポー(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「黒猫・アッシャー家の崩壊−ポー短編集<1>ゴシック編」作・エドガー・アラン ポー(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが「朗読倶楽部」の活動報告と名作を紹介する「乙葉しおりの朗読倶楽部」。第40回はエドガー・アラン・ポー「アッシャー家の崩壊」だ。

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 10月になって、ようやく秋らしくなってきましたね。

 私の学校も衣替えで冬服になったんですけど、先月の残暑が続いていた時、部長さんは「10月も夏服のままで登校する!」なんて言ってました。

 ちなみに外でのお仕事が多い警察官の場合、夏服・冬服の他に春及び秋用の服があって、これを「合服(あいふく)」と言うんだそうです。

 さて、10月3日は下村湖人(しもむら・こじん)さんのお誕生日です。

 1884年に生まれた下村湖人さんは、以前ご紹介させていただいた「論語物語」をはじめ、多くの教養作品を発表されました。

 中でも1936年から連載を開始した「次郎物語」は、下村湖人さんの出身地・佐賀を舞台とし、生まれてまもなく里子に出されたことや主人公が次男であることなど、作者本人の経験が色濃く反映され、時代を超えて幾度も映像化されるほどの代表作となっています。

 第5部まで発表された「次郎物語」ですが、残念ながら下村湖人さんが1955年に亡くなられたため、未完の作品となってしまいました。

 第5部のあとがきには、次のような文章で続編の構想が残されています。

 「ただ私の希望だけをいうならば、戦争末期の次郎を第6部、終戦後数年たってからの次郎を第7部として描いてみたいと思っている。

 むろんすべては運命が決定することであり、私自身の意志は、次郎がかれの日記に書いているように、運命にしめつけられた、せまい自由の範囲においてのみ動くことを許されるであろう。」

 ではここで朗読倶楽部のお話、前回に引き続き「文化祭」のお話です。

 いろいろな場所から来たお手伝いの話を、すべて引き受けることにした私たち朗読倶楽部。

 みかえさんが先方のお手伝いを必要とする時間とみんなの空き時間からスケジュール表を作り、パズルのように埋めていった結果、私たちは分刻みのスケジュールで動くことになりました。

 それぞれの分担は……。

 部長さんが、生徒会と放送部の放送まわりを。

 みかえさんが、コーラス部の補充要員を。

 私が、演劇部のナレーション役を。

 そして、癸生川先生のお手伝いは、3人の持ち回りということで決まりました。

 学芸会ではいつも「木」や「その他大勢」で、三つ以上せりふがある役を演じたことがない私にとって、ナレーションは大役です。

 もちろん当日だけでなく練習にも参加しないといけませんから、朗読倶楽部は半ばお休み状態に。

 こうして、文化祭開催までの3週間足らずの間、私たちはそれぞれお手伝い先へと出かけて、練習をしたり手順を覚えたりと、慌しい日々を過ごしました。

 そして……いよいよ、文化祭当日の日がやってきたのです。

 ……と、いうところで、今回はここまでです。

 次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 エドガー・アラン・ポー「アッシャー家の崩壊」

 こんにちは、今回はアメリカの作家エドガー・アラン・ポーさんの「アッシャー家の崩壊」をご紹介します。

 世界初の推理小説「モルグ街の殺人」の著者として知られ、江戸川乱歩さんのペンネームの由来にもなったポーさんですが、他にもゴシック作品やホラー作品を数多く発表しました。

 その中の一作が、1839年に発表された「アッシャー家の崩壊」です。

 1928年から2008年までの間に9度映画化され、後年の作家にも多大な影響を与えたこのお話は、名実ともに著者代表作と言えるのではないでしょうか。

 少年時代の親友ロデリック・アッシャーさんから突然「ひどくせがむような」招待を受けた物語の語り手「私」は、憂愁の色に包まれたアッシャー家に客人として滞在することになりました。

 しかし、長い年月を経て再会したアッシャーさんに昔の面影はごくわずかで、死人のような顔色と異様な目の輝きから恐れを感じずにはいられないほどに変わり果てていたのです。

 彼はアッシャー家に代々遺伝する、「五感が異常なまでに鋭くなり、受ける感覚全てが苦痛になる」という特殊な神経性の病にかかっており、治癒の見込みは全くないと言いました。

 病の原因は、最愛にして唯一の血縁者である妹のマデリンさんが、「すべての感覚を失い衰弱する死の病」にかかっていることと関係があるというのですが……。

 このお話では冒頭にピエール=ジャン・ド・ベランジェさんの叙情詩の引用が、そして作中ではアッシャーさんが作った「The Haunted Palace,」と呼ばれる詩が用いられています。

 題名は翻訳者によって若干解釈が異なるようですが、直訳すると「幽霊の出る宮殿」でしょうか。

 実はこの詩、詩人でもあるポーさんが、「アッシャー家の崩壊」の半年前に発表した同名の詩をそのまま引用したものなんです。

 詩を発表した時、既にお話へ組み込むことを視野に入れていたのか、ちょっと気になりますよね?

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして配信が始まりました。1話約20分で250円。 

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