女優の宮崎あおいさんと俳優の堺雅人さんが約3年ぶりに夫婦役を演じることで話題の映画「ツレがうつになりまして。」が8日公開された。夫(ツレ)のうつ病と向き合って暮らした実話をイラストを交えてつづった、06年の発売以来ベストセラーを記録している同名のエッセーマンガ(幻冬舎)の原作者である細川貂々(てんてん)さんに話を聞いた。(毎日新聞デジタル)
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映画は「半落ち」(03年)や「夕凪の街 桜の国」(07年)などで知られる佐々部清監督が“ハルさん”(宮崎さん)と“ツレ”(堺さん)の夫婦模様を笑いを交えてひょうひょうと描いている。うつ病というデリケートな題材であるため、脚本の依頼から映画化実現までに4年の歳月がかかったという。
脚本を見た段階で、「とてもいい出来で、すべてお任せすることにしました」という細川さんは、完成した映画について、「自分の理想、願っていたことをかなえてくれた」と絶賛。「あおいちゃんのお団子頭とか、日本家屋に住むこと、近所に骨董(こっとう)屋があること」もさることながら「ツレがうつだったときに(私は)こういうふうに接したかったんだなあとか、こうしてあげたかったんだというのを映画でかなえてくれたので、すごくうれしかった」と語る。
細川さんは「私はツレの自殺未遂の現場に立ち会っていなかったんですが、映画ではハルさんが自殺未遂の現場に遭遇し、自殺を止められたのは大きかった。それが一番心残りだったんです」と振り返り、「映画で私がやり残したことをやってもらえたのでもう後悔はない、気持ちに区切りがついた」と話す。
宮崎さんと堺さんについては、「宮崎さんとはイグアナの話や、絵の描き方、私は鉛筆の持ち方が変なのでそれを教えたりしました。堺さんとは雑談が多かったんですが、うつ病についてすごく勉強されていて。病気の様子をよくとらえているなと。しぐさだったりうつの人がまとっている空気をちゃんと醸し出していてすごいなと思いました」と感心する。
また、「堺さんのツレの演技がコミカルで面白くて、笑うところが結構あったんですが」といい、「私もツレを見て笑っちゃうことはたくさんあって。それを素直に笑えるシーンにできるかどうかはあおいちゃんの受け止め方にかかっているので、それがちゃんと素直に笑えるシーンになっていたのでよかったです。あの感じはお二人だからできたんじゃないかな」と絶賛した。
作中に「うつの原因ではなくて意味を考える」という描写が登場するが、細川さんは「うつになったことの意味は、自分自身を見つめ直すきっかけになったこと。私だけではなくツレもそうなんですけれど、やっぱり自分自身と向き合っていなかった。私はマイナス思考で後ろ向きで、ちゃんと自分に向き合ってこなかった。でもツレがうつになったことでこのままじゃいけないんじゃないかって気がつけるきっかけになった。ツレの方は自分は強くて怖いものなんてないという生き方をしていたのが、自分の弱さを見せつけられて、弱くてもいいんだ、こういう生き方もあるんだと考えを変えるきっかけになりました」といい、「本人がちゃんと弱いということを認識していればそれが逆に強みになると思うので、弱いからといって後ろ向きに考えることはないかな」と語る。
映画では、一人の女性が「自分が本当に書きたいもの」を見つけるまでの姿が描かれる。細川さんは「無理に何かをやらなきゃ、って思うんじゃなくてできるときがきたらやると思うんですよ。そういう気持ちでいたらつらくはならないし、時期が来たらやる、くらいでもいいんじゃないかな」と話した。
<プロフィル>
ほそかわ・てんてん。69年生まれ、埼玉県出身。96年「ぶ~けDX」で漫画家としてデビュー。06年、夫婦での闘病記をイラストを交えてつづった実話エッセー「ツレがうつになりまして。」がベストセラーに。続編の「その後のツレがうつになりまして。」や「イグアナの嫁」もヒット。イラストエッセーブームの火付け役となる。さらに「本当はずっとヤセたくて。」で自身のダイエット体験を、「ぷにぷに」で子育て体験を描き、大人気を博している。最新作「7年目のツレがうつになりまして。」が発売中。
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