乙葉しおりの朗読倶楽部:第54回 田山花袋「蒲団」 私小説の原点

「蒲団・重右衛門の最後」作・田山花袋(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「蒲団・重右衛門の最後」作・田山花袋(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが「朗読倶楽部」の活動報告と名作を紹介する「乙葉しおりの朗読倶楽部」。第54回は田山花袋の「蒲団」だ。

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 寒い日が続くと、どうしても家にこもってしまいがちですよね。

 そんなわけで、私もついついこたつで読書になっちゃいます。

 ちなみに今読んでいるのは、今週にご縁があるこの方々のお話です……。

 まず1月16日は、長谷川海太郎さんのお誕生日です。

 作品に応じて三つのペンネームで活躍されていたそうですが、中でも有名なのは隻眼隻腕の剣豪「丹下左膳」シリーズではないでしょうか。

 実は母方のおばあちゃんが時代劇ファンで、私もテレビドラマでは見たことがあるんですよ。

 翌日、1月17日は尾崎紅葉祭の日です。

 毎年熱海で行われているこの式典は、前回ご紹介した尾崎紅葉さんの小説「金色夜叉」の中で、主人公の貫一さんがヒロインのお宮さんを足げにした日にちなんだものです。

 ちなみに次回から、この「金色夜叉」のご紹介をしていく予定ですので、ぜひご覧になっていってくださいね(^−^)

 さらに次の日、1月18日はアラン・アレクサンダー・ミルンさんのお誕生日です。

 代表作の「クマのプーさん」に登場する「クリストファー・ロビン」さんは、ミルンさんの実のお子さんの名前そのままで、彼のために書かれた童話だと言いますから素敵ですよね(*^^*)

 最後に1月19日は、エドガー・アラン・ポーさんのお誕生日です。

 以前、当コーナーでもご紹介させていただいたゴシックホラー「アッシャー家の崩壊」や、推理小説の原点と言われる「モルグ街の殺人」などを発表しました。

 少年探偵団や探偵明智小五郎シリーズを発表した江戸川乱歩さんのペンネームが、エドガー・アラン・ポーさんの影響で付けられたお話は有名なのではないでしょうか。

 ではここで、朗読倶楽部のお話……3度目の大会出場の思い出、第2回です。

 ビブリオバトルの大会に出場することになった私たち朗読倶楽部ですが、今回もまた新しい問題が……。

 今までの朗読大会とは大きくルールが異なる上に、2度目の大会からあまり日がたっていなかったために、準備期間もほとんど残っていません。

 自分の面白い本を選ぶところまでは良いのですが、それを簡潔に自分の言葉でお勧めポイントをまとめ、さらに資料を見ることなく大勢の前で語るとなると、大勢の前で朗読することもまだまだな私には、またも気が遠くなりそうなお話だったんです。

 とはいえ、悩んでいる時間もありません。

 先生のアドバイスを受けつつ、一人一人の作戦を練ることになりました。

 まずは部長さん、「弁が立つので放っておいても問題なし」の先生の一言で終わりました。

 部長さんはちょっと不満そうでしたが……。

 次にみかえさんですが、マイペースでステージ度胸は問題ないものの、そのマイペース故に時間オーバーしそうな問題の解決が課題になりました。

 そして、最後に一番問題児な私が残ったのですが……ステージ度胸もアドリブも利かない私に、みんなが授けてくれた作戦とは?……というところで、今回はここまでです。

 次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 田山花袋「蒲団」

 こんにちは、今回は田山花袋さんの「蒲団」をご紹介します。

 1907年に発表されたこのお話は、作者の経験をもとに執筆される「私小説」の原点と言われ、同時にその経験を美化することなく描き出す「自然主義文学」を、日本で本格的に広めた最初の作品とも呼ばれています。

 ちなみに「蒲団」というちょっと変わった題名の意味は、お話を最後まで読むと納得してしまうかと思います……。

 作家の竹中時雄さんは、今の生活に大きな不満を感じていました。

 文学で名声を得ることができず、書籍会社の伝手で地理書の編集をして生活し、家に帰って目にする妻子の顔には新鮮味もなく、自分の書きたいものを一心不乱に書く気力もないままに、同じ日々を繰り返している……。

 そんな緩やかに懊悩(おうのう)する日々を過ごしていたある日、一通の手紙が届きます。

 手紙の主は、神戸女学院に通う横山芳子さん。

 文学を志す彼女は、作家「竹中古城」の名で知られている時雄さんへの弟子入りを希望していました。

 けれど弟子入り希望の手紙は珍しいことではなく、いちいち取り合っていられないと、これを無視した時雄さん。

 しかし、二度三度と熱意のこもった手紙が送られてくると、次第に彼女のことが気になるようになっていき……。

 このお話は主人公の竹中時雄さんが作者の田山花袋さん自身をモデルにしている他、主な登場人物にモデルがいるのは確かなのですが、当時の書簡などを調べてみると実は創作の部分も多いようです。

 その手がかりのひとつには横山芳子さんのモデル、岡田美知代さんが「蒲団」への意趣返しとして1910年に発表した「ある女の手紙」があります。

 また、現実でのお二人は「蒲団」のラストで別れた後もかかわりをもっていくことになるのですが、こちらは田山花袋さんの自伝的な長編3部作の1作「縁」で、登場人物の名前が変わってはいるものの、後日談として読むことができます。

 興味のある方は、ぜひ一度読んでみてくださいね。

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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