スティーブン・スピルバーグ監督の最新作「戦火の馬」が2日に公開された。小学生からお年寄りまでが感動できるエンタメ中のエンタメ作品だ。戦地に送られた馬の数奇な運命と、人との絆を描き出す。馬の芝居にノックアウトされた。
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第一次世界大戦前の英国の農村。アルバート少年(ジェレミー・アーバインさん)は馬の誕生を感動して見つめた。ある日、父親テッド(ピーター・ミュランさん)が1頭の子馬を連れて帰ってきた。酔った勢いで買ってしまった子馬は、農耕馬ではなかった。妻のローズ(エミリー・ワトソンさん)は怒るが、アルバートは子馬にジョーイと名付けて愛情を持って世話をする。しかし、地代を地主に払えない一家。生きていくためには、嫌がるジョーイに農具をつけて荒れた土地を耕してもらうしかなかった。やがて、農地には作物が育ち始める。暮らしに希望が見えたとき、戦争が始まり……というストーリー。
マイケル モーパーゴさんの同名小説が原作でトニー賞5部門に輝いた舞台に出合ったスピルバーグ監督が、感動のあまりに映画化。少年と馬はまるで恋人同士のようだった。冒頭のシーンから、少年が馬に一目ぼれだ。そして、2人(あえて2人といおう)は離れ離れに……。戦地ではジョーイに新恋人も登場!? ジョーイのことを片時も忘れないアルバート少年。少年だけでなく、ジョーイに問答無用で引きつけられていく周囲の人たち……。戦闘シーンのさすがの迫力や、希望や奇跡といったワクワク感、馬がひたすら走る圧倒的な映像美もさることながら、ある意味、壮大なラブストーリーだった。
そういえば、スピルバーグ監督が製作や監督を務めた作品が11年には非常に多かった。初の3D劇場版アニメ「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」を監督したのをはじめ、製作では「ヒア アフター」「トゥルー・グリット」「カウボーイ&エイリアン」「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」「SUPER8」「リアル・スティール」、そして「宇宙人ポール」では声の出演までしている。その多作の理由を本人は「(自身の)子供たちが大きくなって、それほど僕に依存しなくなった。計7人いる子供のうち、自立していないのは2人だけだ。それで時間ができたんだ。うちの妻も油絵を描くことに没頭できるようになったし、ぼくも仕事を多くこなせるようになった」と時間と心に余裕ができたことを明かした。さらに「単に暇になっただけでなくて、素晴らしい題材に巡りあえているという事情もある。トニー・カーシュナーが執筆した『リンカーン』の脚本は、これまで読んだ脚本の中でもベストの内の一つだ。リチャード・カーティスが執筆した『戦火の馬』も、僕のお気に入りだ。だから、今の僕はいい脚本に出合えれば、いくらでも働くことができる時期にきている」と前向きに発言している。
次回作に期待しつつも、この「戦火の馬」を今は存分に楽しみたい。映画は2日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)など全国で公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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