注目映画紹介:「ヒューゴの不思議な発明」 3D映画でノスタルジーとテクノロジーが見事に融和

「ヒューゴの不思議な発明」の一場面 (C)2011 Paramount Pictures.All rights reserved.
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「ヒューゴの不思議な発明」の一場面 (C)2011 Paramount Pictures.All rights reserved.

 マーティン・スコセッシ監督が、念願だった3D撮影に挑んだ最新作「ヒューゴの不思議な発明」が1日、公開された。先ごろ発表された第84回米アカデミー賞では主要部門こそ逃したが、撮影賞など最多5部門に輝いた。舞台は1930年代のパリ。駅の時計台に隠れ住む独りぼっちの少年ヒューゴ(エイサ・バターフィールドさん)は、時計のネジ巻きと、亡き父が残した機械人形の修理をしながら毎日を過ごしていた。ある日、人形の部品ほしさに駅舎の中のおもちゃ屋に忍び込み、店主に見つかってしまう。実は店主には、機械人形につながるある秘密があった……という展開。

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 冒頭から引き込まれる。スクリーンいっぱいに広がるパリの全景を見わたせる風景。直後、映像は駅の時計台目がけて動き出す。時計台の中に入り込むと、下へ降り、駅舎の中をずんずんと進んでいく。上下の動きから水平の動きへ。3D映画であることをうまく利用した、美しく、疾走感あふれる映像だ。

 一見すると、壊れた機械人形の修理に没頭する孤児ヒューゴと、おもちゃ屋の主人の養女で本好きの少女イザベル(クロエ・グレース・モレッツさん)の恋物語。はたまた、少年の冒険ファンタジーとも取れる。ところが物語が進むうちに、これがSFXの先駆者で「月世界旅行」(1902年)で知られるフランスのジョルジュ・メリエス監督と数々の名作映画たちに対する、深い愛と敬意に満ちた物語であることが分かってくる。つまり、スコセッシ監督は、3Dという最新技術を駆使して、極めてクラシカルな内容の作品を作り、ノスタルジーとテクノロジーの見事な融和を図ったのだ。原作は、ブライアン・セルズニックさんによる小説。店主役ベン・キングズレーさんの表情の深さに驚かされる一方で、機械人形の無表情な中の豊かな表情にほれぼれした。1日からTOHOシネマズ有楽座(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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