話題のライトノベルの魅力を担当編集者が語る「ラノベ質問状」。今回は、「嘘つき天使は死にました！」（葉巡明治著、しらび画）です。集英社スーパーダッシュ文庫の高橋博さんに作品の魅力を聞きました。

あなたにオススメ

「豊臣兄弟！」では池松壮亮が！　大河ドラマ“秀吉俳優”史を振り返る

　−−この作品の魅力は？

　天使のかわいらしさ、水音のけなげさ、ハユちゃんのお嬢っぷりでしょうか？　いや、ホントに、主人公の夏彦がなんでこんなにいい目に遭ってるのか、納得がいきません。小説家志望の夏彦が、小説にも生きることにも自信をなくしてる時に、空から天使が降ってくるんですよ？　その天使がムチャクチャ可愛くて、「あなたを助けたい」って、どういうことですか？　でも、その天使が「あなたを助けた後に、私は殺されてしまいます」って？？？

　この奇妙ですけど、少し怖いシチュエーションから物語は始まります。天使や夏彦を取り巻く仲間たちがいいんですよね。夏彦を思う水音は理想の彼女……。ハユちゃんはセクシー担当でもあり、その実体が謎のお嬢であり、ツンデレキャラ？　男チームは、ちょっとおばかだけど友達思いの月坂（夏彦と一緒に学校の女子風呂をのぞいた仲）やクールな静人先輩（でもホモセクシャル）もアツいです。

　この作品の魅力は、主人公たちの何気ない日常生活に巻き起こる、事件や危機をみんなで乗り越えて、誰もが誰かを“助けたい”と思って行動するところでしょうか。友達と取りとめもなくふざけ合う楽しさに笑い、自分よりも仲間を思う熱い気持ちにジーンと泣けるんです。

　−−作品が生まれたきっかけは？

　第10回スーパーダッシュ小説新人賞の特別賞受賞作です。編集部選考で初めて応募原稿を読んだときから、せりふ回しのみずみずしさに「来たッ！！」と思いましたね。

　まず、文体やせりふが生き生きしていて、おそらくこの年代でしか書けないであろう感性に魅力を感じました。友達を思う気持ちや、生きることへの向き合い方を、素直に書いていたと思います。10代ならではの感覚に満ちた小説だと思ったので、ぜひ10代の読者に読んでほしいと思いました。

　−−作家さんとイラストレーターさんはどんな方でしょうか。

　著者の葉巡明治さんは福井市在住。生まれも育ちも福井で地元をこよなく愛する20歳の現役大学生です。福井が世界に誇る産業である眼鏡をこよなく愛しています。たまに上京した時には、高いビルの群れにけおされてアタフタしています。

　イラストのしらびさんは、いつも寝る間もなく仕事をしているし、運動不足が気になりますが、素晴らしい絵を描いていただいています。あんなに繊細で柔らかいキャラクターを描くのに、打ち合わせで食事をする時はガッツリ肉食系です。

　−−編集者として、この作品にかかわって興奮すること、逆に大変なことについてそれぞれ教えてください。

　女子中学生からのファンレターがよく来ます。「天使ちゃんがカワイイ」とか、「友情に泣けた」とかストレートに感想を書いてくれるのを読むとうれしいです。特に、「友達に勧めてもらった」とか「友達にも読ませたい」と書いてくれているのは、作品が浸透していく様子を知ることができて本当に感動します。

　−−今後の展開、読者へ一言お願いします。

　スーパーダッシュ文庫編集部が出しているコミック誌「スーパーダッシュ＆ゴー！」では晴瀬ひろきさんによるコミカライズも絶賛連載中です。今後もシリーズを重ねて行きますので、天使、夏彦、そして仲間たちのこれからにご期待ください！！

　集英社　スーパーダッシュ文庫　高橋博