人気グループ「SMAP」の草なぎ剛さんが主演し09年に放送された連続ドラマ「任侠ヘルパー」は平均視聴率は15%台を記録、11年1月にはスペシャル版が放送された。このたび映画化され、全国で公開中だ。主演の草なぎさんに任侠者だがヘルパーという彦一役に懸ける思いや撮影中のエピソードなどを聞いた。(毎日新聞デジタル)
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映画は、指定暴力団「隼會」を抜け、堅気として生きる覚悟を決めた、草なぎさん演じる翼彦一だったが、元極道という立場は予想以上に生きづらく、再びヤミ金融や老人相手の裏の仕事に手を染めるようになっていく。風間俊介さんが彦一の舎弟・山際成次を演じドラマから出演している四方木りこ役の黒木メイサさんのほか、安田成美さん、夏帆さん、香川照之さんらが出演している。
−−ドラマ「いいひと。」(97年)に代表されるように草なぎさんといえばいい人のイメージですが。
それは一つの財産かなとは思っています。「いいひと。」がドラマ初主演だったので、僕もうまくいくかなと思いながらやりましたが、でもたくさんの方に見ていただいて、そこからどこに行っても「剛君はいい人なのね」みたいな。僕自身はそんなにいい人ではないのでラッキーかな、と(笑い)。
−−そういう意味では今回の役はある種の挑戦だった?
真逆なので、最初に聞いたときに多少不安でしたね。どういうふうにやろうかなというのはありましたけど、楽しみという方が勝ちました。ストレートなヒーローじゃなくて、ダークヒーロー、そういうのをやりたいなと思っていたりもしたので、自分も燃えるというか、情熱を注げる役だなと思いましたね。この役によって僕の中にある男らしさを引き出してもらったかなと思っています。
−−今回の役作りはどのように?
09年のドラマシリーズのときに(西谷弘)監督とすごく話をして、そこで(彦一役を)作り上げるのが非常に大変でした。でも今回はそのときすでに(役作りが)できていたので、今回はよりグレードアップさせたかった部分、もっともっと男くさいところとか、大きなスクリーンに映ったときの存在感とかを出すように、そんな話し合いを監督としました。彦一本人も分かってなくて行動していたりだとか、任侠の世界とヘルパーの世界に翻弄されていたりする部分もあるので、あまり決めない方が面白くなってくる。彦一は少しバカっぽかったり、男くさかったりとか、それが面白いんですね。ケンカが強いところは好きですね。男として。
−−アクションシーンも多かったと思いますが。
おなかとか何度もなぐられたり、本当にけられてますから。けりが本当におなかとか入ってますから、体も鍛えざるを得ないというか。人間は防衛本能があるので撮影しながらだんだん体つきとか変わって、腹筋も硬くなってくるし、一日中アクションシーンを撮影すると、腹筋とか割れました。
追いかけられるシーンも、役者さんじゃなくて本物の警備の方が僕のことつかまえようと追いかけてきますからね。僕は本物の人を振り払って頭突きをして逃げる。だから本当に迫力のある画が撮れました。(西谷)監督はハンパじゃない。許してくれないんです。映画ですからね、何回も撮る。それは想定内で覚悟はしているんですけど、いつも想定をはるかに超えてハードなんです。これ以上は無理だというところから「スタート」がかけられるので。
−−そんな撮影だからこそ充実感があった。
新しい自分がもう1人生まれたような感じがして。集中していないとけがもするし、せりふは少ないんですけど、内面に抱えているものがないとすごく薄っぺらいものに見えちゃったりするのでかなりエネルギーを消耗しました。アクションシーンがないときも大変で、精神的にちょっとつらい部分もあるので。
−−ドラマに出演していた黒木メイサさんが映画にも出ています。息がすでに合っているなという雰囲気でしたが。
メイサちゃんには芝居をする上で本当に親近感を覚えますね。つかこうへいさんのところでお芝居をされているので、僕も風間(俊介)君もつかさんの舞台をやっていて、3人でつかさんの弟子たちが(集まって今回の作品が)できているみたいなイメージでした。
今回のりこという役はメイサちゃんにすごく合っていて、メイサちゃんにしか演じられない役で、僕が彦一を演じる上でも刺激的になるし、ライバルなのか、恋心とかもお互い少しあるのかなみたいな雰囲気もすごくいい感じで。今回は(ドラマとは)少し時間が離れてたんですけど、現場に入ったらスイッチが入って、すぐに共鳴し合う部分があるので、僕もすごくやりやすいですね。
−−任侠映画といえば往年の高倉健さんの出演作が有名ですが、「あなたへ」で高倉さんと共演したときに「お前、任侠似合わねえよ」といわれたとか。
健さんは冗談まじりで、この作品を見てないときにおっしゃられていたので。ただ実際(草なぎさんが歌った)「唐獅子牡丹」は健さんに聴いていただいて、「イケてない」というのは事実なんですけど(笑い)。健さんの映画を僕はすごく見ていて、そのことを健さんに話したら、健さんは喜ばれていました。今回「健さんを意識してまたやったんですよ」といったら、半分ジョークまじりに「似合わねえよ」といってくださったので、逆にそれは愛情の裏返しだと思っています。本当に「あなたへ」のときにいろんなヒントをいただいて、健さんと一緒にお仕事をしたことは、確実に僕の中に根付いて、息づいています。健さんが何といおうと、「任侠ヘルパー」には健さんの影響は大きかったですね。
−−草なぎさんが考える彦一と任侠映画の魅力とは?
彦一はおなかをけられて痛くても痛い顔しなかったりとか、本当にやせ我慢しました。すごく我慢しているところからこぼれてる色気みたいなものがあるんじゃないかなと今回やっていて思いました。
任侠映画は、建前とかを気にせず突っ走れるところがあるのでスカッとするし、そういうところが面白いんじゃないでしょうかね。そういう年上の兄貴にはあこがれますしね。カッコいいなあとか、強くなりたいよなとか、やっぱり男ってそうじゃないとなと。ぜひ映画を若い子にも見ていただいてそう思っていただけて、いい意味で元気を持って帰ってくれるといいなあと。
−−映画のパート2の話が来たらウエルカムですか?
もちろん大変ですけど、それはやりたいですね。
<プロフィル>
1974年7月9日生まれ、埼玉県出身。SMAPのメンバーとして88年にデビュー。これまで出演した主な映画に「メッセンジャー」(99年)、「黄泉がえり」(03年)、「ホテルビーナス」(04年)、「日本沈没」(06年)、「山のあなた~徳市の恋~」(08年)、「BALLAD 名もなき恋のうた」(09年)、「僕と妻の1778の物語」(11年)。主なドラマの出演作に 「いいひと。」(97年)、「成田離婚」(97年)、「僕シリーズ3部作」(03、04、06年)、「冬のサクラ」(11年)、スペシャルドラマ「海峡を渡るバイオリン」(04年)、「99年の愛~JAPANESE AMERICANS~」(99年)など。09年に主演したドラマ「任侠ヘルパー」(11年にスペシャルドラマを放送)の映画版は全国で公開中。
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