黒川文雄のサブカル黙示録:ソーシャルゲーム、LINE…12年回顧と13年の展望

 あけましておめでとうございます。個人的なことになりますが、12年末日をもってNHNジャパンを退職しました。在職中は、外部パブリッシャーとの共同開発で、PCオンラインとスマートフォンのゲーム企画、開発管理、PSVitaのダウンロード型コンテンツの開発管理、LINE向けのコンテンツについても企画開発を行うことができました。2年間という短い期間でしたが、ガラケーからスマフォン、PCからスマートフォン、有料から無料(フリー)への大きなソフトのシフト、コンテンツ市場の激変の時代でした。

ウナギノボリ

 12年ですが、11年の後半から続きソーシャルゲームの最高潮からのスタートでした。ところが反動のように、消費者庁により「コンプリートガチャ問題」が指摘され、報道があるや、パブリッシャー側もそろって自主規制に走りました。その結果として、11月にはソーシャルゲームの業界団体「ソーシャルゲーム協会(JASGA)」が設立されました。一連の流れは、ソーシャルゲームが、政治の枠組みに取り込まれた瞬間ともいえると思っています。

 ソーシャルゲームは、国内では飽和した感があり、海外に活路を見いだしましたが、今のところ成功しているのはDeNAが展開するゲーム「神撃のバハムート」ぐらいで、なかなか厳しい環境です。グリーが巨額で買収した北米のサービス「OpenFeint」が年末でクローズされることも発表されました。国内では、ネクソンが、ソーシャルゲーム開発・運営のグループスを約360億円で買収しています。しかし、それらのパブリッシャーも、アップルやグーグルの手のひらの上で踊らされている……のが現状で、自己矛盾を感じていることでしょう。そのあたりをどう解消していくのかも課題です。

 年末は、無料のメッセンジャーサービス「LINE」の強さが目立ちました。ガラケーのデコメの正常進化であり、キャラクターのスタンプが男女問わず受けたこと、文字を入力しなくても「雰囲気」や「気分」で会話した気持ちになれるという表現が時代にマッチしたのではないでしょうか。その後、comm(コム)やカカオトークなども登場しましたが、先発のLINEを超えるのは難しいでしょう。

 13年のキーワードはフリーと申し上げておきたいと思います。もちろんプレミアム会員への誘導や登録をしいるようなものは論外で、どれだけユーザーにとって付加価値のある無料サービスを提供できるかどうかがポイントではないでしょうか。さらに加えていえば、ゲームコンテンツやサービスの主流は、よりインディペンデントな(独立した)ものが注目されるのではないでしょうか。コンテンツのトレンド発生源である海外でそれは顕著です。つまり誰にでも平等なエントリーの復権を予測しています。実現すれば、もっと楽しい年になることは間違いないのではないでしょう。

◇プロフィル

くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。黒川塾主宰。

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