黒川文雄のサブカル黙示録:今後注目されるライブの価値

 3月25~29日に米サンフランシスコで開催された「ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス(GDC)」に参加しました。このイベントは、ゲーム開発者の情報交換の場という小さな交流会から始まり、今では2万人規模が参加するイベントに発展しました。また4月15~16日には、ゲーム開発ツール会社の日本法人「Unity Technologies Japan」主催のイベント「Unite Japan」が開催され、こちらもゲームプログラマーを中心に多くの来場者を集めました。来年はさらにスケールアップしたものになるでしょう。またNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本」(IGDA日本)が推進する「ゲームジャム」(ゲームを期間内に無作為にセットされたメンバーで共同で開発する)も注目イベントの一つでしょう。「東北ITコンセプト福島」というものが、福島県の南相馬市で8月3~4日のスケジュールで開催予定です。

ウナギノボリ

 最近はゲームに関するイベントが、ライブハウスなどでも積極的に開催されています。中でも新宿ロフトプラスワンで4月に開催された「ポリポリ☆クラブ~2時間でiPhoneゲームを作らNight☆~」は会場が満員になり、ブログは月間1万PVを超えたということです。私もほぼ毎月のペースで「黒川塾」という勉強会を開催していますが毎回多くの参加者があり、高いモチベーションで参加していただいています。そうしたイベントの盛況ぶりを見るたびに、ゲームが売れてない事実との乖離(かいり)に、おかしな感覚になります。

 実は同じようなことが音楽産業にもあります。CDは売れないけれど、ライブへの動員やグッズ販売は好調で、またはライブビューイングが盛んという実態です。CDの売り上げは、11年度の段階で13年連続減となっており、減少分はネットの有料配信でもカバーできていません。一部のレコード会社では数年前から「CDなどのパッケージ収益だけでは経営が難しい」と判断しており、ライブなどの収益やアーティストマネジメントなどに事業を広げています。

 私も勉強会を開催して思うのですが、ライブのようにその日、その場に居合わせたことによって体験できる偶発性のあるイベントや成果物が共通の感動を呼びさますことがあります。またある種の出会いの場であり、ライフログ的な意味も含めての体験を共有する場として価値観が高まっているのではないかと思います。

 音楽や映画と異なり、ゲームはわずか数時間で行うライブのような催しは難しいのかもしれませんが、技術が進歩すればそれも実現可能になるかもしれません。ゲームをプレーするのは難しくても、ゲーム開発ライブなるものが名だたる会場で見られるというイベントもまんざら夢物語でもないような気がします。かつて、有名アーティストがライブをした日本武道館、東京ドームなどで「ゲーム開発ライブ」が開かれる。結構、夢のある話だと思うのですが、いかがでしょうか。

 ◇プロフィル

 くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。黒川塾主宰。5月20日に「黒川塾 九 unityによるゲームの民主化は共産化か!?」を開催予定。

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