朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第124回 ボリス・ヴィアン「うたかたの日々」

「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさん
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「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに100万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第124回はボリス・ヴィアン「うたかたの日々」だ。

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 7月に入り、教室の窓から入ってくる風にはどこか夏の香りが漂っているような気がします。少しだけ日差しの強くなった空にもすっかり夏の形をした雲が浮かんでいますね。窓向こうの青い空を眺めていると、心も晴れやかに……いけないいけない、授業に集中しないと(>_<)。

 そんな空を自在に飛ぶと言えば、飛行機……というわけで、7月6日は「ゼロ戦の日」です。1939年、零式艦上戦闘機、通称「ゼロ戦」試作機の試験飛行が、この日から始まったことに由来しています。ゼロ戦は数々の文芸作品の題材にもなっていて、中でもすご腕の戦闘機乗りだった祖父の足取りを追う姉弟を描いた百田尚樹さんの小説「永遠の0(ゼロ)」は大きな反響を呼び、今年12月には映画の公開も予定されています。

 ほかにも映画と言えば、スタジオジブリの最新作「風立ちぬ」の主人公・堀越二郎さんはゼロ戦の設計者として知られていますよね。このお話、軽井沢で病弱の少女との出会いがあるくだりは、以前ご紹介した堀辰雄さんの「風立ちぬ」との共通点があり、ヒロインの名前「菜穂子」さんも、堀辰雄さんによる同名の長編小説から取られているようです。映画を見る前にこれらの作品を読んでおくと、より内容が楽しめるかもしれませんよ?

 ではここで、朗読倶楽部のお話。いよいよ今回からは、朗読倶楽部の明暗を分けた朗読大会……5度目の大会出場のお話をしていきたいと思います。

 部昇格に必要な実績が全く足りていなかったというプレッシャーに端を発し、4回目に出場した大会では惨敗するなど、大きな迷いを抱え込んでしまった朗読倶楽部。

 小口のどかさんが通う学校の「文芸部朗読サークル」との交流戦によって、無事迷いを振り切った私たちでしたが、気が付けば季節は秋深まった11月。大きな実績を作れる「最後のチャンス」となる5回目の大会は、もう間近に迫っていたのです……。

 今まで私たちが出場した中でも最も大きな規模となるこの大会は、11月の「予選」と、年末に行われる「本選」に分かれており、当然ですが予選を勝ち抜けないことには、本選に出場などできません。後がない状況には変わりありませんでしたが、交流戦で得たものを糧として、私たちはひたすらに練習の日々を重ねました。

 そして迎えた運命の日……なんと朗読倶楽部は予選を通過し、本選への出場権を獲得することができたのです! まだ本選があるのに、優勝したかのように喜んでしまう私たち。でも無理もありません……ひと月近くの間、ずっと暗い雰囲気に押しつぶされそうだったところへ、ようやく青空が開けたのですから。

 しかし……、難去ってまた一難、予選の最後に発表された本選のテーマが、また私たちを悩ませることとなったのです……と、いうところで、今回はここまで。

 次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 ボリス・ヴィアン「うたかたの日々」

 こんにちは、今回ご紹介する一冊は睡蓮の花がもたらす、悲しくて美しい恋物語……フランスの作家ボリス・ヴィアンさんの「うたかたの日々」です。「日々の泡」という邦題でも有名で、1947年に出版されました。

 1920年生まれのボリス・ヴィアンさんは、作家・詩人として活動する一方、トランペッターとしても知られており、さらに歌手としても活動するなど各方面で多岐にわたる才能を発揮された方です。

 毎日を遊んで暮らす、若き資産家のコランさん。彼は友人のイジスさんが開いたパーティーの席上で、美しい女性・クロエさんと運命の出会いを果たしました。またたく間に熱い恋に落ちた2人は、やがて豪華絢爛(けんらん)な結婚式を挙げますが、新婚旅行の途上でクロエさんが病に倒れてしまいます。

 彼女がかかったのは……なんと「肺に睡蓮が寄生する」という、世にも不思議な病気。花いっぱいの部屋に身を置くことで睡蓮の力は抑えられるものの、病状の進行を食い止めるには至らず、次第に弱っていくクロエさん。たとえわずかでもクロエさんの助けになるならと大量の花を買い与えるうち、光あふれる素晴らしい屋敷だったコラン家は、彼女の病状の進行を示すかのようにくすんですり潰れていきます。

 とうとうお金に困ったコランさんは、花の代金を稼ぐために仕事を探すのですが、毎日遊んでいた報いなのか、なかなか見つけることができません。そして……彼がやっとの思いで見つけたのは、誰もがやりたがらないであろう、とんでもないお仕事だったのです……。

 クロエさんの病気を見てわかる通り、このお話にはヴィアンさん独自のセンスによるファンタジー要素が散りばめられています。「ピアノの鍵盤を弾くと、音とリズムにあわせてカクテルが作られるカクテル・ピアノ」、「畑の土から生えてくる銃」、「水道管を通って歯磨き粉をなめにくるウナギ」などなど……「現代における最も悲痛な恋愛小説」の、ちょっぴり不思議な世界をのぞいてみませんか?

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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