テレビ質問状:ノンフィクションW「高畑勲、『かぐや姫の物語』をつくる。 」製作に2年半密着取材

「かぐや姫の物語」を手がけた高畑勲監督
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「かぐや姫の物語」を手がけた高畑勲監督

 WOWOWは、毎週金曜午後10時に「ノンフィクションW」枠を設け、オリジナルのドキュメンタリー番組を放送中だ。この枠では、見る人を新しい世界へと誘うフルハイビジョンの“ノンフィクションエンターテインメント”番組をWOWOWプライムで毎週、テーマを変えて放送している。12月6日と13日に前後編で放送される「高畑勲、『かぐや姫の物語』をつくる。 ジブリ第7スタジオ、933日の伝説」を担当したWOWOW映画部の小野秀樹プロデューサーに番組の魅力を聞いた。

ウナギノボリ

 −−番組の概要と魅力は?

 高畑勲監督の14年ぶりの新作「かぐや姫の物語」が劇場公開中ですが、「ノンフィクションW 高畑勲、『かぐや姫の物語』をつくる。」は、その製作現場を約2年半にわたって長期密着取材をしたドキュメンタリーです。

 この映画は作画の前に声の演技を収録する「プレスコ」という手法が取られましたが、かぐや姫役の朝倉あきさん、これが映画出演での遺作となった故・地井武男さんのほか、宮本信子さんといった名優を高畑監督が緻密に演出していく様子、製作スケジュールが遅れに遅れて劇場公開延期に至るまでの内幕、新たな表現を実現しようと模索する高畑監督と製作スタッフの姿を、映画の完成まで記録しました。

 −−今回のテーマを取り上げたきっかけと理由は?

 高畑監督は、テレビアニメ「アルプスの少女ハイジ」「赤毛のアン」、スタジオジブリの映画「火垂るの墓」など、アニメーション史上に残る数々の名作を送り出してきた巨匠ですが、70歳を超えてなおアニメーション表現の新しい可能性を切り開こうとしていました。

 「ノンフィクションW」では、映画・音楽・ステージなどさまざまな分野で挑戦を続ける人物に迫ってきました。今回の番組では、高畑監督が映画「かぐや姫の物語」のことを「夢の実現なんです」と語る場面もありますが、新たな到達点を目指す高畑監督の姿を放送したいと考え、2週間にわたって前後編でお届けすることにになりました。

 −−制作中、一番に心がけたことは?

 この番組の取材開始は2011年5月から。番組スタッフがスタジオに通い詰め、約31カ月も長期密着を行い、ぼう大な量の映像を記録しました。その映像は、1テラバイトのHDD30個以上にもなります。

 放送は前後編で2週間にわたってお届けしますが、どの映像からも高畑監督と映画スタッフの執念と粘りが伝わり、正直いって、これだけの内容を約2時間に凝縮することは非常に大変です。編集段階では番組スタッフが数秒ずつシーンをカットしながら、製作現場の舞台裏をできるだけ多く詳しく伝えようとしています。

 −−番組を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったエピソードは?

 高畑勲監督へのかつてなく近い距離での取材が実現したことが、最もうれしいことです。高畑監督の長期密着ドキュメンタリーはこれが初めてで、番組スタッフが2年半近くスタジオに通い、高畑監督や製作現場の信頼を獲得した成果です。

 「いつだって最後の作品になり得る。『ホーホケキョ となりの山田くん』が終わったときに、もう作らなくたっていいんじゃないと思った」と高畑監督が述懐したり、宮崎駿監督の「パクさん(高畑監督の愛称)も俺もここで死んでも、早く死んだなと思われる年じゃないのね」という発言にうなずいたり、長期密着したからこその映像ばかりです。

 −−番組の見どころを教えてください。

 高畑監督は宮崎監督と違い、自ら作画をしませんが、身ぶり手ぶりを交えながらスタッフに語りかけ、指示を書き込み、ぼう大なコミュニケーションを通してイメージを伝えます。そうした中で、新たなアニメーション表現が生まれる過程が明らかになります。

 また、映画「かぐや姫の物語」の中の登場人物が瓜を切って食べるシーンの演出では、25年前に手がけた映画「火垂るの墓」のあるシーンを後悔していることを話すなど、高畑監督がどのような意図で演出しているかも分かります。

 −−視聴者へ一言お願いします。

 WOWOWプライムで12月7日、高畑監督の長編映画初監督作にして日本アニメーション史に残る金字塔的な傑作「太陽の王子 ホルスの大冒険」とやはり高畑監督の14年前の前作「ホーホケキョ となりの山田くん」を放送します。

 「ノンフィクションW」では、「ホーホケキョ となりの山田くん」での困難の多かった現場をスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーと西村義明プロデューサーが語りますが、「ノンフィクションW」をご覧になったあとに改めてこの映画を見ると「面白い!」というだけではない感想を持つでしょう。劇場公開中の「かぐや姫の物語」と合わせて、「太陽の王子 ホルスの大冒険」「ホーホケキョ となりの山田くん」も見てほしいと思っています!

 WOWOW 映画部 プロデューサー 小野秀樹

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