北極冒険家・荻田泰永さん:2度目の北極点・無補給単独徒歩到達を振り返る

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 北極冒険家の荻田泰永さんが23日、WOWOWのドキュメンタリー番組枠「ノンフィクションW」(毎週金曜午後10時)で7月に2週連続で放送される「遥かなる北極点~孤高の冒険家 日本初の偉業に挑む~」の完成披露試写会に登場。今年3~4月に、自身2度目となる「北極点・無補給単独徒歩到達」に挑むも、開始44日目にして撤退を余儀なくされた荻田さんは「想定していた以上にブリザードや乱氷帯が多く、用意した日数分の食料で(北極点まで)到達するには、かなりリスキーな状況になってしまった。正直いって時間切れです」と悔しさをにじませつつ、「今回は北極海の核心部というか”奥座敷”まで見ることができた。来年こそはやれるんじゃないかと思っている」と次回の快挙達成に自信を見せた。

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 「北極点・無補給単独徒歩到達」とは、外部からの物資補給を一切受けず、隊やスタッフも帯同しないで、たった一人でカナダ最北端のディスカバリー岬から北極点まで約800キロを踏破することで、成功すれば史上3人目、日本人では初の快挙となる。最近では北極海を覆う氷の状態の悪化などから、2003年以降は誰も成功していない過酷な冒険としても知られ、荻田さんも2年前の初挑戦時は17日目で断念している。

 番組では、荻田さんの2年ぶりとなる「北極点・無補給単独徒歩到達」挑戦に準備段階から密着。2月に日本から北極圏にほど近いカナダ・イカルイット、さらには前線基地ともいうべきレゾリュート村へと移動し、トレーニングを重ねながら北極の感覚を徐々に呼び覚ましていく様子や、冒険当初から「乱氷帯」と呼ばれる巨大な氷の壁や、猛烈なブリザードに行く手を阻まれ、少しずつ生じた計画のズレによって気力と体力を奪われていく冒険の過酷さが描かれている。冒険開始から撤退までの44日間の映像は、荻田さん自身が回したカメラによって撮影された。

 食料やキャンプ道具を積んだ約120キロの重さのソリを自力で引き、極寒の中、たった一人で北極点を目指した今回の冒険で、唯一楽しみだったのが「食べること」で、途中からは「空腹との戦いだった」とも語る荻田さん。「最初は50日という計画だったんですけど、ブリザードや乱氷帯で思った以上に時間を使ってしまったので、途中から最低55日は必要だなということになり、一日にとる食事の量を制限せざるをえなかった」と振り返り、「だからとにかくおなかがすいて、日に日に脂肪が減っていくのが分かったし、突然目の前にスーパーが現れて、店に入って食料を買い込む夢を何度も見ましたね」と苦笑いを浮かべた。

 これまでの14年間、一貫して北極圏での徒歩冒険行にこだわり続けてきた荻田さんだが、「自分が好きでやっていることで、特別な意味はない」と言い切る。それでも「好奇心や純粋な興味だけに突き動かされてもいいんじゃないのかなって考えが僕の中にはある」といい、「それが正しいのか、正しくないのかは別として、番組を通して僕の姿を見て、何かやってみようって思ってくれたらうれしいですね」と笑顔を見せた。

 「ノンフィクションW 遥かなる北極点~孤高の冒険家 日本初の偉業に挑む~」は、Part1が7月4日午後10時、Part2が11日午後10時にWOWOWプライムで放送される。

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