東野圭吾:渡辺謙と初対談 「白銀ジャック」ドラマ化は「冷やかしだと思った」

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 人気作家・東野圭吾さんのミリオンセラー小説が原作で、俳優の渡辺謙さん主演のスペシャルドラマ「白銀ジャック」(テレビ朝日系)が、8月2日に放送される。放送を記念してこのほど、東野さんと渡辺さんの初対談が実現。十代のころからスキーに親しみ、四十代になってスノーボードを始めたという東野さんは、「滑っているときの楽しいことを思い出しながら書いたので、楽しく書けた」と執筆時を振り返る。一方で、「映像化不可能」と言われた原作ということから、渡辺さんは「原作を読ませていただいたときに、こりゃえらいことになるぞと思った」と率直な思いを明かす。司会は、同局の本間智恵アナウンサーが担当した。

ウナギノボリ

−−お二人がお会いになるのは初めてですか?

渡辺さん 一度、(撮影現場の)安比高原スキー場に来てくださいましたよね。

東野さん はい。あまりにも大変そうだったので、申し訳ないなと思いました。

−−お互いの印象を教えてください。

渡辺さん よくもまあ、こんなに面白い話が次から次へと書けるなあと!

東野さん すごい人だなと。日本人として頼もしいですよね。

−−映像化のお話を聞いたとき、どのような思いでしたか。

東野さん 書いてるときは、映像化になると思わなかったです。自分がスキーとか雪山を舞台にした映像を作るとしたら、こんなふうにというふうに空想したというか、そんなふうに書きました。

渡辺さん 無理だと思ってたでしょう?

東野さん (話が来たときは)冷やかしだと思った。主演が渡辺さんと聞いて驚きました。信じられなかったです。

渡辺さん こんな話をやろうというプロデューサーはいなかった。でも、スキーが大好きな原作者が書いた原作を、スキーが大好きな演出家が、スキーが大好きな俳優と撮った作品なので、スキー(が描かれる場面)は相当面白くなりますよね!

−−執筆時はどういう思いでしたか?

東野さん この作品は文学的に評価されなくてもいいと書いていますから(笑い)。自分が映画を撮るとしたらと考えると、アクションも入れて、サスペンスも入れて、恋愛要素も入れて、最後はベタなハッピーエンド、とそうやって書きました。なんだこのベタな終わりは、と言う人もいるでしょうけどいいです。最近は、スカッとする話が書きたいんです。

−−撮影は大変だったと伺っていますが?

渡辺さん 初日、8時間かけて8カットしかとれなかったんです。時速1カット(笑い)。これじゃあ、絶対終わらない。暗澹(あんたん)たる思いで初日を迎えました……。役作りに関しては、普通、その役のバックグラウンドとかを勝手に自分で掘り下げたりして役を作っていくんです。今回の場合は、雪が好き、スキーが好き、スキー場が好きというそれだけをシンプルに信じて作っていこうと決めた。結構話が入り組んでいるので。通常の役の作り方より、非常にシンプルに入り込んでいった感がある。

東野さん 僕はどの小説もそうですが、あまりその人物のバックグラウンドを考えないんです。よく、書かないけど決めている人がいますが、僕はそれをしない。行動とどんな人物かという外から見えるところを精いっぱい想像する。必要なときは、なぜこの人がそうなのかを考えるだけです。

渡辺さん よかったー!(笑い)

−−作品の見どころを教えてください。

東野さん 映像も、役者さんの演技も見せ場だと思いますが、(スキーなどを)やらない人は目にする機会がないので、こんな場所があって、こんなふうに楽しめるんだと、見てないとわからない。ぜひ、雪が主役になってもらえたらいいなと思う。大雪だと災害も呼ぶけど、うまく付き合っていく方法があって、やったら結構楽しい人生にもなるんだよ、というのが少しでも伝わったらと思います。

渡辺さん 僕も雪国の豪雪地帯で育ったんですが、できれば体感したような錯覚に陥ってほしい。頂上から麓(ふもと)まで、お客さんを連れ回してすべり下ろす、というスピード感でドラマが成立する作品にできたら。今年の冬はスキーしたいなと思ってもらえれば。

 ◇「白銀ジャック」とは

 ドラマは、スキー場の客すべてを人質とする前代未聞の脅迫事件を描いたサスペンス。岩手・安比高原スキー場の全面協力の下、厳しい自然と卑劣な犯罪とに立ち向かう、渡辺さん演じるゲレンデ統括マネジャー・倉田玲司の活躍を描く。渡辺さんのほか、岡田将生さん、広末涼子さんらも出演する。8月2日午後9時から放送。

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