アメトーーク!
ひとり暮らし長~い芸人
11月21日(木)放送分
日本の国産ウイスキー誕生を支えた竹鶴政孝とそのスコットランド人妻・リタをモデルに国産初のウイスキーづくりを目指す夫婦の生涯を描いたNHK連続テレビ小説「マッサン」。主人公の夫婦、亀山政春とエリー夫婦を、俳優の玉山鉄二さんと米女優のシャーロット・ケイト・フォックスさんが演じている。同ドラマに洋酒メーカーの創業者・鳥井信治郎さんがモデルの鴨居欣次郎役で出演中の堤真一さん。「やってみなはれ」とチャレンジ精神旺盛なキャラクターを魅力的に演じる堤さんの好演が話題を呼んでいる。「自分自身がまさか朝ドラに出るというのは考えてもいなかった」という朝ドラ初出演の堤さんに聞いた。
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堤さんは「朝ドラは絶対に縁がないと思っていた」と豪快に笑う。ただ、「朝ドラの流れが『あまちゃん』あたりから変わった気がします。発想が自由になったというか……。『マッサン』に関しては、ヒロインのエリーちゃんがいるんですけど、本当の意味で玉山君が演じるマッサンも主役。おっさんが主役という、これまでの朝ドラのイメージと全然違うので、撮影の現場では朝ドラをやっているという感覚ではなかったですね」と語る。
堤さん演じる鴨居は洋酒問屋「鴨居商店」の社長で“大将”と呼ばれ、「やってみなはれ」と思いついたら、とにかく行動しろと社員に命じるエネルギッシュな人物。堤さんは鴨居社長のことを「もっと独裁者的な人なのかと最初は想像していたんですが、社員の意見を聞く人。自分は口出さないで意見交換をずっと見ている。ずっと聞いた上で、自分の中でまとめて決断する。モデルになった鳥井さんもそうだったみたいですが、僕が抱いていたイメージと違いました。人の力を借りる、意見とか、人の頭脳を借りるのがすごく上手な人だなという気がしますね」と表現する。
主人公のマッサンこと亀山政春を演じる玉山さんについて「玉山君は太陽みたいなやつなんですよ。芝居にうそがないし、へんな虚勢も張らないし。せりふで『辛気くさい』と彼に向かって言うんですけど、全然思えないんですよ(笑い)。彼の根っこが太陽のような人なので。何も拒絶しない鴨居と違うのは、マッサンは一点集中でこだわって物を作る。どちらかというと視野が狭い人間で、その部分を辛気くさいと言うことにしようと思って」と評する。
朝ドラにはめずらしい男性の主人公だが、現場の玉山さんは「本当に大変だと思うんですよ。自分のことだけでなくシャーロットさんのことも支えつつ、現場のことも。大した人だと思う。朝ドラで従来のパターンだと、(主人公は)支えられてやっていくもんだと思うんですけど、彼は(フォックスさんを)支えながら頑張ってるんで、相当キツイと思う。僕だったらセットを壊していると思うくらい(笑い)。それを全部請け負って、めげることなく……」とその苦労をたたえる。
エリー役のフォックスさんに対しては「日本語が本当に分からないので大変すぎる。台本も英訳、日本語、ローマ字で下書きしたものなど3、4冊(種類)持ってるんじゃないですかね」と日本人のヒロインにはない苦労をしている様子を見ている。だが、「彼女はしっかりと向こうの演技のメソッドを習得している人。せりふと言うときに、核となる感情をちゃんと理解をして演技している。僕らもそれだけちゃんと(そのシーンの感情に)向き合わないと彼女は反応がなくなってしまう。演技をするというよりもその場にいることでちゃんと(エリーで)いることのできる稀有(けう)な存在。彼女はハート、そこ(その感情)にいくまでにどうすればいいか。せりふの言い方がどうとか、表情がすてきとか二の次なんですよ。彼女との芝居は教えられることが多くて、楽しかったですね」と得るものは大きいようだ。
鴨居は社長としては決断の早い豪快な人物だが、確執のある息子とは本音でぶつかれないなど意外な一面を見せた。その親子関係について、堤さんは「親子は向き合わないと、子供への愛情は伝わらないと思います。僕自身も高校時代に反発ばかりしていたおやじと初めて向き合ったことがあって、今回の親子のシーンで自分の父との関係をすごく思い出しました」と自身の経験を踏まえて語った。
「マッサン」には鴨居社長の「やってみなはれ」をはじめ、「人生は冒険旅行」など印象に残るせりふが多い。堤さんはそれらのせりふについて「『人生はアドベンチャー』だとエリーのお父さんも言っているせりふですね。そういう鴨居さんとかマッサンは、下地が全くない、道がないところに進んでいく、ものすごい冒険をしている。例えば登山家の人が、山をちょっと登ってみいへんかという感覚、大航海時代も地球丸い、はじは滝になっていると思っている時代にそれを証明しようと海に出る人。どこかネジが切れてないとできないなと思う。僕自身は石橋をたたいても渡らないタイプなので、憧れはありますね」と語る。
スコットランドでウイスキーの作り方を学んだマッサンを日本初のウイスキーを作るために鴨居商店に招き入れた鴨居社長だが、マッサンは紆余(うよ)曲折の末、鴨居商店から独立すると言い出す。そのときの鴨居社長の気持ちは? 「いずれその日は来ると分かっていたし、(マッサンを)かごに入れて飼っておくことはできない人だということは分かっていたから、当然来るべき時が来たと思っていたでしょう。本当はウイスキーを作るのは、10年、20年かかることだから、続けていけばいずれ10年、20年かけて本物はできるという思いはあるけど、マッサンは10年先のことを考えられない。今だという、今、何をやりたいか、何をやるべきかという人だから、そこを止めるのは無理だろうな。(鴨居としては)覚悟はしていたけれど、よりにもよって今一番会社が苦しいときかよ、と」と解説する。
最後にドラマ「マッサン」の魅力について、「マッサンって夢を追っているけれど挫折だらけ。一人でなく周りに支えられて生きている。その感覚を悲劇的に描き過ぎずに、ちゃんと壁にぶつかって、また越えて、また壁があって、その越え方でいろんな発見があったりする。脚本の時点で相当面白かったし、シャーロットさんのうそをつかないお芝居や玉山君の頑張りなどが光りますよね。マッサンってどうなるんだろう、どこか行き当たりばったりのところがあり、そのあやうさも応援したくなる。僕はそういうところだと思っています」と語った。
NHK連続テレビ小説「マッサン」は、NHK総合で毎週月~土曜午前8時ほかで放送。全150回。
<プロフィル>
つつみ・しんいち 1964年7月7日生まれ。兵庫県出身。裏方として関わった歌舞伎俳優の坂東玉三郎さんの舞台「天守物語」に魅了され、87年、NHKドラマスペシャル「橋の上においでよ」の主演から本格的な俳優活動を開始。以後、舞台、映画、ドラマ、CMなど幅広く活躍中。最近の主な出演作に映画「地獄でなぜ悪い」(13年)、「土竜の唄 潜入捜査官 REIJI」(14年)、NHKスペシャルドラマ「とんび」(12年)、舞台「ロンサム・ウェスト」などがある。主演映画「「神様はバリにいる」が1月17日に公開されるほか、2~3月には舞台「三人姉妹」に出演する。「マッサン」でNHK連続テレビ小説に初出演。
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